【true end】~~
「? 姫さん……と、双子の片割れじゃねぇか。どうしたんだ、こんな夜更けに……」
と。
物騒な顔をきょとんとさせ、顔を覗かせたのは、料理長。
私は彼女の顔を見て、いつの間にか強張っていた肩から力を抜いた。
「料理長……。家に、帰ったのではなかったの……?」
「あぁ。なんか、嫌な予感がしてな。『気のせいなら』と一応確認に来たんだ」
すぐさま表情を引き締めて、そう言った料理長はどこか不安げ。
私はそれに気づかなかった。
だって、自分の事でていっぱいだったのですもの……。
「…………そう、なの……」
やっとのことで紡いだ言葉。
でもそれに料理長は眉を寄せた。
「……その様子だと、何かあったな?」
す、鋭い……。
鋭いわ、料理長……。
「……………………そ、そんな、こと――――」
「侵入者」
「何だと? どこのどいつだ!」
「知るか」
「チッ。使えねぇな……」
料理長の悪くなりかけていた機嫌は少ないゼシオ言葉で急降下。
そして、彼女はそっと腰の物に手を伸ばし……って、ダメ!!
慌てて正面に立っていたゼシオの袖をグイッと引いて、首を振った。
「り、料理長! ち、違うの。ゼシオは悪くないのっ!!」
だからゼシオにソレを向けないでっ!!
「と、突然男が、あらわれ……こ、ころ、され―――」
『殺されそうになった』
そう言う前に一瞬でゼシオを握っていた手を外され。
ふわりと抱きしめられた。
「すまねぇ、姫さん。……怖かったんだな」
あまりにも、料理長がらしくなくて。
……どうしたら良いのか分からなくて、戸惑った。
「い、イヤだわ。大げさよ! り、料理長ったら、私が……そんな――」
「無理しなくて、良い。後はアタシたちに任せな」
「っ…………」
本当に、らしくない……。
私もだけれど。
料理長がそんなに落ちついた、優しい声なんて…………。
「安心しろ。すぐ、終わらせてくる」
料理長はそう言って私から離れ。
大きな手のひらで、優しく頭を撫でてて微笑んだ。
「任せたぞ」
「あぁ」
料理長はゼシオは短く会話した後、何かの術式を発動させ、スッと消えた。
あの男の恐ろしさは私が一番よく知っている。
だから、皆が心配だった……。
不安で、不安で……何より怖かった…………。
だって。
相手は頭のおかしな殺人者。
何より残酷に殺せるかを考えるようなモノが、敵……。
あの男の頭のおかしさは――――
「…………」
――ぽんぽん
――ぽんぽん
優しく、私の頭の上でやわらかく弾む手のひら。
そしてこの手は……。
「ゼシオ……?」
「…………」
無言で無表情。
でも、完全な無表情ではなくて……。
…………心配をかけてしまっているのは、事実。
「ごめんなさい。ゼシオ」
『なんでもないの』
そう、取り繕うように微笑むと、ゼシオが若干無表情を崩して困った顔をして。
またもぽんぽんと、私の頭の上で優しく、やわらかく、手のひらを弾ませた。
…………もしかして、慰めようとしてくれている。の、かしら……?
だったら――
「ありがとう。ゼシオ。元気が出たわ」
「…………」
そう微笑んでみたけれど、『嘘つくな』って。
『無理しなくて良い』って、言われてしまったわ……。
お見通しみたい。
困ったわ……。




