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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
【true end】のその先
77/104

【true end】~~

「? 姫さん……と、双子の片割れじゃねぇか。どうしたんだ、こんな夜更けに……」


 と。

 物騒な顔をきょとんとさせ、顔を覗かせたのは、料理長。


 私は彼女の顔を見て、いつの間にか強張っていた肩から力を抜いた。


「料理長……。家に、帰ったのではなかったの……?」

「あぁ。なんか、嫌な予感がしてな。『気のせいなら』と一応確認に来たんだ」

 

 すぐさま表情を引き締めて、そう言った料理長はどこか不安げ。

 私はそれに気づかなかった。

 だって、自分の事でていっぱいだったのですもの……。 


「…………そう、なの……」


 やっとのことで紡いだ言葉。

 でもそれに料理長は眉を寄せた。


「……その様子だと、何かあったな?」


 す、鋭い……。

 鋭いわ、料理長……。


「……………………そ、そんな、こと――――」

「侵入者」

「何だと? どこのどいつだ!」

「知るか」

「チッ。使えねぇな……」


 料理長の悪くなりかけていた機嫌は少ないゼシオ言葉で急降下。

 そして、彼女はそっと腰の物に手を伸ばし……って、ダメ!!


 慌てて正面に立っていたゼシオの袖をグイッと引いて、首を振った。


「り、料理長! ち、違うの。ゼシオは悪くないのっ!!」


 だからゼシオにソレを向けないでっ!!


「と、突然男が、あらわれ……こ、ころ、され―――」



 『殺されそうになった』

 そう言う前に一瞬でゼシオを握っていた手を外され。

 ふわりと抱きしめられた。


「すまねぇ、姫さん。……怖かったんだな」


 あまりにも、料理長がらしくなくて。

 ……どうしたら良いのか分からなくて、戸惑った。


「い、イヤだわ。大げさよ! り、料理長ったら、私が……そんな――」

「無理しなくて、良い。後はアタシたちに任せな」

「っ…………」


 本当に、らしくない……。

 私もだけれど。

 料理長がそんなに落ちついた、優しい声なんて…………。


「安心しろ。すぐ、終わらせてくる」


 料理長はそう言って私から離れ。

 大きな手のひらで、優しく頭を撫でてて微笑んだ。


「任せたぞ」

「あぁ」

 

 料理長はゼシオは短く会話した後、何かの術式を発動させ、スッと消えた。

 あの男の恐ろしさは私が一番よく知っている。

 だから、皆が心配だった……。

 不安で、不安で……何より怖かった…………。

 だって。

 相手は頭のおかしな殺人者。

 何より残酷に殺せるかを考えるようなモノが、敵……。

 あの男の頭のおかしさは――――


「…………」


 ――ぽんぽん 

 

 ――ぽんぽん 


 優しく、私の頭の上でやわらかく弾む手のひら。

 そしてこの手は……。


「ゼシオ……?」

「…………」


 無言で無表情。

 でも、完全な無表情ではなくて……。

 …………心配をかけてしまっているのは、事実。


「ごめんなさい。ゼシオ」


 『なんでもないの』

 そう、取り繕うように微笑むと、ゼシオが若干無表情を崩して困った顔をして。

 またもぽんぽんと、私の頭の上で優しく、やわらかく、手のひらを弾ませた。


 …………もしかして、慰めようとしてくれている。の、かしら……?

 

 だったら――


「ありがとう。ゼシオ。元気が出たわ」

「…………」


 そう微笑んでみたけれど、『嘘つくな』って。

 『無理しなくて良い』って、言われてしまったわ……。

 

 お見通しみたい。

 困ったわ……。

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