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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
最終章 変嬢の行く末
66/104

★ 『第六話』からつながる物語。

なにやら後味が悪かったようなので、続投。

数話で片付けます。

 ――――ガタガタガタ!


 ――――バタバタバタッ!



 ――――バァンッッッ!!


「アルッ!! 君だろ?! 俺の箱壊した奴!!!!」


 青い髪を後ろになでつけ、紫色の瞳の目尻を吊り上げた。

 本来は緩い顔が特徴的な男が一人。

 扉を壊すほどの勢いで部屋に飛びこみ。

 満面の笑みでモザイクの掛かった何かをすりつぶしている、金の髪にアクアマリンの瞳の女性を発見した。

 

「まぁ、バルフォンじゃない。どうしたの?」


 邪気のない。

 無邪気な笑みを見せるその女性。

 


『ぅば、ばるぅぅぅうううううう……た、助けつぅぇ…………』

 

 なにやら心当たりのある声で、モザイクの掛かったへんなものから聞こえた。

 

「…………え? ねぇ、それ――――」

「なぁに?」


 男は邪気もなく、無邪気そうに見える真っ黒な恐ろしい笑顔を受け。

 口を閉ざした。



「さぁ。これを丸めて、フライパンで焼いちゃいましょう。ウェル、ウェル~~~」

「はい。エルセリーネ様」

「あのね、これを焼いてほしいの。出来るかしら?」

「はい。もちろんです」

「最高火力で焼いてちょうだい」

「かしこまりました」


 にこにこと。

 モザイクの掛かったモノを平たく丸め。

 手渡す女性と。

 それをニコリとした笑顔で受け取った青年。


 男はそれを見。

 

 そっと。

 

 静かに……扉を閉めた…………。



 ――――それから数日。

 先ほどの部屋からはあの少女の悲鳴と、何かをすりつぶす音が聞こえていた。



 男はその間自室に引きこもり。

 カタカタと震えながら耳をふさいで過ごした。


 ――――こうして。

 やっとその音が止み。

 二日たったころ。

 男は少女を呼び止めた。


「ねぇ、アル」

「ん? 何?」

「俺の木箱壊したろ?」

「…………バル。『僕』じゃなくなってるよ?」

「うるさい。答えろ」

「え~……。うん。壊した! だってつまんなかったもん」


 当然とばかりに答える少女。

 そんな少女に男は呆れた。


「………………直してよ。もとに」

「直せばいいじゃん。簡単でしょ?」

「世界を壊したのはアルだろ。だからちゃんと戻して」

「簡単なんだから、自分でやりなよ」

「………………さんっざんっ干渉して引っ掻き回しておきながら、それってないよね?」

「え~~……。私、もう散々おしおきされたから、疲れちゃった!」


 『てへっ』と付け足し、片手で作った拳をこつんと頭に当てて見せた少女。

 それに男の額に青筋が浮かんだ。

 

「……………………エルを呼んでこようか……?」


 底冷えする程に低い声。

 そんな声が緩い顔の男から聞こえ。

 少女は固まった。

 


「……え……。まじ…………?」

「ああ。そう言えば、俺。確か倉庫に人間プレス機もってたな」

「…………」


 さっと少女は青ざめた。

 しかし男はしばし考え。


「エルとウェルに言ったら、嬉々としてそれを使いたがるだろう。よし、渡して――――」

「ご、ごめん! す、すすすぐに、なおす……なおし、ますぅぅぅ…………」


 さっと踵を返した男の服を掴み。

 そう言った少女の顔色は血の気が失せていた。


「はぁ……。初めからそう言っておけばいいんだよ」

「うぅぅ……」


 少女は呻き。

 

『みんなが可愛くない。私に優しくない』

 

 と、零しながら壊した木箱を修復し。

 男に渡したのだった。


「さてと。アルに直させて干渉も外させたことだし、設定をいじろうかな……」



 ――――――――――――――


 ―――――――――― 



「ひゃあはっはっはっ! おらおら逃げ惑え雑魚どもぉっ!!」

「ふふふ。さぁ、これはどうでしょうねぇ……」

「うは! これこれぇ!」

「血の匂いだ……うひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

「戦いってのは、やっぱこうじゃなくきゃなぁ!」

「つーか、雑っっ魚っ! 弱すぎて話にもならねぇってぇのっ」


 いつもは優しい厨房の皆が凶悪な感じで戦場を駆け巡っております。

 そしてその戦場は混沌として―――――


 ……あら?


 私、確か――――――



「やっぱり、厨房の番号たちは鬱憤が溜まってたみたいですね」

「本当。凶悪さに磨きがかかっているわ」

 

 そんなマリアとメイサの声が聞こえました。


 …………あら?

 変ね。

 私、矢を受けて……死んだのでは…………?


 と、とりあえず。

 状況を把握しましょう。


 そう思うと同時に、頭の中にこの場が見え。

 ぎゅんと上空に遠ざかり、私たちが小さく見えました。

 そしてそれからびゅんと、上空からの映像が飛びぬけ。

 ここから離れたある一点で止まった。


 私はこのことに驚愕した。

 

 だって。

 きっとこの次に見えるモノはおそらく……私が死ぬ原因の魔導師。


 案の定。

 ハワードが魔導師に、呪を纏った矢で狙われていました。


 いけない!


 このままでは……っ!


 私は驚きのあまり手から槍を落としかけました。

 ですが、慌ててそれを掴みます。

 だって。

 このままいけば私は死ぬ。

 行かなければハワードが……。


 そんなもの。

 許しません。



 私は人形の姿になり、ゲートをくぐりぬけ。

 ハワードの横。

 矢が飛んできている方向に出て。

 槍でそれを弾き返した。


 こうして矢は術者のもとに帰っていき。

 その後。

 術が発動したのです。


「ぇ……?」

「「「「?!」」」」 


 ……死亡フラグ、回避出来ました。

 でも、まだ危険なことには変わりありません。

 私は魔導師がどうなったのかを見よう考えていたら、槍が教えてくれました。

 

『魔導師は即死』


『この周辺に危険はない』


 と。

 私はこれに安堵しました。

 なので、マリアとメイサのもとへ戻ります。

 その際。

 ハワードの声が聞こえた気がするけれど、きっと気のせいよ。


「お嬢様!」

「姫様!」


「「どちらへ言っておられたのですか?!」」


 そう、二人同時に問われた。


『ふふふ。大丈夫よ? 戦場はどのような感じかしら?』

「我らの優位は揺るぎません!」

「はい。毛ほども揺るいではおりませぬ」 


 元気なマリアと、優美なメイサ。

 私はそんな二人に安堵した。


『そうなの……。それは良かったわ。でも、もう少し急がなくては、ミリーが心配してしまうわ』

「はい。彼女を確実に助けます!」

「えぇ。もちろんです」


 笑みを浮かべたマリアとメイサ。

 私はその笑みが心強かった。


 ですが。

 もっと急がなくてはいけません。

 こうなったら、この槍をもって――――



「ですが……姫様がこれより先へは、なりませぬ。」

「はい! 絶対にダメです!!」


 ……なんで分かったの。

 しかもそんなにはっきりと……。

 

……二段構えのバッドエンドが悪かったみたい…………。


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