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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
最終章 変嬢の行く末
55/104

第二話 事実

 ……まぁ、良いわ。

 気にしません。

 そうよ。

 もう気にしたら負けよね。

 分かったわ。

 だから先を促します。

「とにかく。お姉様はどちらの隣国に? 変態が居る隣国ですか。それとも、私が良く知らない隣国ですか。どちらですの?」


「「「「………………」」」」


 あら?

 はっきり言い過ぎたかしら……?

 でも。

 あからさまに沈黙するのはやめて欲しいわ……。

 まるで私が変な発言をしたようではありませんか。



「……………………変態の居る国だ……」

 そう、若干疲れた様子で答えて下さったのは、ギルド長。

 彼の隣でゼグロさんが困った顔で笑っています。

 何故かしら?

「リース。仮にも……そう、仮にもだ。アノ変態は実力だけで言えば、『次期王に』と言われているんだ。だから、何が言いたいかって言ったら、確かに救いようもなければ関わりたくもない『変態』なんだが、こんな公の場で本当のことを言ってはダメだ」

「ゼグロ……。事実だが、盛るな」

 真剣な表情で言うゼグロさんに、呆れ顔でそうおっしゃられたのは玉座近くにたたずむ。

 錆色の髪に金の瞳を持つ男性。

 この男性が誰かは知りません。

 興味もありません。

 ただ、お姉様が心配です。

「……それで。お姉様の安否はどうなのですか?」

「捨て置け。アレとてそれ相応の覚悟は持っておろう」

 私の問いに答えたのは、遠い玉座に座る初老の男性。

 おそらく。

 この国の王。

 名は――…………えぇっと……。

 興味が……なくて……その、覚えて、ません……。

 ………………まぁ、良いわよね!

 ということで。

 『王様』で行きます。

 でも。

 『王様』が言ったことに納得はできませんわっ!

「……それは、お姉様を見捨てるということですの?」

「アレを、そなたは救う必要があるとでも……?」

 ゆったりと答えた『王様』。

 そのゆったりさ加減が気に入りません。

 第一。

 お姉様の安否が分からない今。

 何をそのように悠長に構えておられるのでしょうか? 

「ですが! お姉様の安否は――」

「……そんなに心配か?」

「えぇ。当たり前ですわ!」

「…………では、この場に居る者すべてに命ず。【セフィニエラ・サティ・ルフェイドの救出を禁ずる】」

「「「「?!」」」」 

「特に、リセスティ・ルディ・ローダン。そなたの動き次第で、ローダン伯爵家とルフェイド侯爵家を取り潰す。良いな?」

「っ……?!」

「…………以上だ」

 『王様』は淡々と言って、席を立つ。

 ですが。

 『はい。そうですか』と快諾するわけにはまいりません。

 なにより。

 ぽろぽろと涙を零していたミフィが、驚愕のあまり目を見開いたのです。

 私もミフィと同じ気持ちです。

『何とかしたい』

『お姉様を助けたい』

 それだけです。

 けれど、私は優しくして下さったお父様にも、お姉様、ミフィ達に……迷惑はかけたくありません。

 だから…………。


「ルシオ、ゼシオ。お願いね」

 

 私の体がゆっくりと、前のめりに倒れて行きます。

 それを、ルシオとゼシオが――――切り捨てた。

 

『これで、良いのでしょう……?』

「「「?!」」」


 場が静まり返り、背を向けて歩き出していた『王様』が首だけ振り返り、微笑んだ。


『では皆さん。ごきげんよう』


 私はそう言って、この姿の身で扱える空間を繋げる術(門の様なもの)を発動させ。

 それをくぐった。

 

 と。

 かっこよく言ってみても、人形と同じ大きさの私が通れるだけの小さなものですけれどね…………。

 まぁ。

 便利な術が使えるようになったということで納得していますわ……。


 え?

 『料理長たちはどうなるの?』

 あぁ。

 彼女たちは私の本体が屋敷にあるので、護衛に戻っているでしょうね。

 ん……?

 え?

 『さっき双子が切り捨てたのが本体じゃないのか?』

 いやね。

 違うわよ。

 大体、『本体で屋敷の敷地から出る』。

 なんて、テノール達みんなが許してくれないわ……。

『なにかあってはどうするのですか』

 っていって。

 絶対に町に行くことを許してくれなかったんだからっ……!

 …………考え抜いた結果の、苦肉の策なの。

 だから、安心して。

 私の本体が死んだわけじゃないの。

 今頃私の本体は、ほの暗い過去持ちの信頼できる皆が守ってくれているのだから……。


 ***

 

 リースが一人で……行ってしまった。

 私は。

 こんなことしかできない、不甲斐無い姉……。

「…………ミフェイアよ」

「……はい。陛下…………」

「良くやった」

「…………ありがとう、ございます……」

 背を向けたままの陛下に、やっとのことで感謝を述べると、陛下は玉座の後ろ。

 カーテンの中に消えました。

「ミフィ。リースが心配なのは分かる。だが、俺達にはどうすることもできない。分かっているだろう?」

 まるで諭すように、頭を撫でて下さるゼグロさん。

 その手は暖かく。

 罪悪感で心がチクチクと痛んだ。

「っ…………ゼグロさん……わかってるわ。でも。でも、私っ……」

「大丈夫。彼女は強い。それに、とても強い味方が大勢居る」

 はっきりと言い切ったゼグロさん。

 そんな彼の言葉で、リースの周りに居た使用人姿の彼らを思い浮かべた。

「…………そうね……ふふ。でも、見事に真っ黒だけれどね」

「………………あぁ。ホント、真っ黒だ……」

 だって。

 リースが私たちの妹になる前まで、指名手配の紙がこの大陸中に貼ってあったんだもの……。

 今ではもう、姉さんの怒りを買いたくないからって、即刻剥がされちゃったけど。

 それほどに有名な実力がありすぎるほどあるっていう極悪犯たちなのよ。

 彼女の身の回りを固めている人たちって……。

 まぁ。

 姉さんにはかなわないわ。

 絶対に。

 だって彼らは『人』なのよ。

 けれど、姉さんは『人』ではなく、『化け物』だもの……。

 え、私? 

 私は凡人よ。

 だって未来を見る力と、生活に必要な力しか、持っていないのだから……。

 姉さんと比べてはいけないわ。

 私は未来を見る力がなければ、普通の一般人なのだから……。


 ***

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