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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
第三章 伯爵家末娘となった変嬢
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第十六話 徹夜

 真っ黒な闇の帳が薄闇へと変わりゆこうとしています。

 なぜ私がこのような時間に、リビングの大窓の前に座り込み。

 空を見上げているのかと言うと……。


 お昼にギルド長に呼び出され(二度目の強制送還というか召喚)。

 待ち構えていたギルド長とゼグロさんにその惨状を聞いたからよ……。

 まったく。

 どうしたら山に巨大な風穴が開いて、平地が高原になるのかしら……?

 はぁ……。


 だからこうして。

 国中を騒がせたお姉様と隣国の変態にお灸をすえるべく。

 帰ってきてからというもの。

 ここで、お姉様とあの変態ナルシストを待ち構えておりました……。

 まぁ。

 結果はこのように、私はミリーを見送り。

 眠ることなく朝を迎えようとしております…………。

 あぁ。

 こんなことになるのであれば、早々に部屋に行って眠っておくべきでした……。

 『後少し』とか。

 『もしかしたら私が眠ってしまった頃におこしになるのかもしれない』

 なんて。

 考えるのではなかったわ……。

 はぁ……。

 もう寝ましょう。

 今度会ったときでも遅くはないわ。

 と言うことで、部屋に戻りました。

 ふと目をやった先のローテーブル。

 その上にあのガラス玉。

 私は吸い寄せられるよう、それに触れた。

 何も移していなかったはずのガラス玉は、見慣れた墓地と一人の少年を浮かべた。


『お姉上。お姉上が……僕を嫌っているのは知っています。でも、でも……僕は。正しい貴女を尊敬しています』

 

 真摯に私の作った【私】が眠る墓の前に跪いた少年・ハワード。

 父様の色と姿を受け継いだ……私の、異母弟。 

 ……初めの頃はあまり好きにはなれなかったけれど、今の私は嫌いではないわ。

 私はただ。 

 母様を悲しませた父様に、腹を立てていただけだったのです……。  

 それに、ガラス玉を通して彼を見ているのはとても楽しかったの。

 『父様の幼いころはこのようなことをしていたのかしら』と思いをはせ。

 彼のみせる、あどけない笑顔を見るのも好き。

 とても可愛いと、思っているもの……。

 だから。

 そんなに苦しそうな顔をしないで。

 苦しまなくて良いの。

 だって貴方は、お母様が産むことが出来た子かも知れないのだから……。

 悪いのは……。


 …………すべて、私なのだから……。

 

 私が。

 私が、生まれ出でたばかりの時。

 母様に『子を授かることのできない』呪いをかけてしまったのだから……。

 悪いのはすべてこの私。

 呪いの内容は。


 『母様が授かるはずの命を何処かえと飛ばし、授からなくする』というもの。


 そして。


 母様が授かるはずの命は、別の女性が授かった命を潰し、成り変わる。


 

 ……呪いの解呪方法は、だた一つ。

 『術者の死』。

 ……だからきっと、母様は気づいているはずよ。

 私が生きていることを……。

 母様は今、どうしていらっしゃるのかしら?

 母様に会いたいわ……。

 ハッキリ願うと、ガラス玉は答えてくれた。

 

 ガラスに映った母様は穏やかな笑みを浮かべ。

 『私が結婚式で着たのよ』と見せてくれた、純白のドレスをカンナと共に仕立て直していた。


『リスティがいつ帰ってきて、『お嫁に行く』っていうのかしら?』

『そうね。お嬢様の事だもの。あなたのように突然だと思うわ』

『あら。私、そんなに突然言っていないわ』

『一週間前に言ったら突然よ』

『……そうかしら?』

『えぇ』

『……それにしても、もうすぐ完成ね』

『………………手袋とヘッドドレスにヴェール。全然できていないわよ……』

『もう……。ドレスのことよ』

『ふふふ。分かっているわ』


 母様とカンナは楽しそうに微笑み。

 再び手を動かしました。

「母様…………やはり、気づいておられたのですね……」


 ……………………。

 ……さて。

 今、私。

 いや~な予感を感じたのですが、気のせいよね?

 そうでしょう?

 父様……。

 スッと母様たちが消え。

 書斎で机に肘をつき、頭を抱えた父様が現れました。

 とても憔悴しているように見えるのですが…………気のせいですよね……?

 ついでに。

 父様のいる机に積み上げられている本。

 それは精神異常者についての本ばかりでした……。


 …………父様。


 お願いですから、落ち着いて下さい。

 そして母様とよーっく!

 お話しすることをお勧めしますわっ!!

 それから考えを改めて下さいませ!

 だって母様は精神異常者ではありませんもの……!

 ………………嗚呼。

 父様のせい(不安)で眠気が失せてしまいました……。

 


 ――――結果。

 私は完全に徹夜してしまったのでした……。

 それから数日間は不安で眠れませんでした。

 けれど。

 料理長が落ち着くお茶を出してくれて、それを飲んだら急に眠気が来てその場で眠ってしまったわ。

 次に目を覚ました時。

 三日たっていた事には驚きましたけど……。

 それ程に疲れていたのね…………。

 知らなかったわ……。

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