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名門貴族の変嬢 作者:双葉小鳥

第三章 伯爵家末娘となった変嬢

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第十五話 癒し

 穏やかに空を流れる白い白い羊の群れ。
 私はそれを紅茶を片手に、直に木製のテラスに座って見上げた。
 嗚呼。
 今日も穏やかだわ……。
「やぁ、セイニィ。いつ見ても僕の方が美しいね!」
「まぁ。なんですって? このわ・た・く・し・がっ! 貴方みたいなナルシに劣ると言いたいのかしら……?」
「本当の事だろう? 君より、この僕が美しいに決まっている!」
「馬鹿なことを言わないでちょうだい! ミフィとリースの姉であるこの私が、あなたの様な変人に劣るという汚点があっていいはずはないわ!!」
「汚点って……ちょっと笑わせないでくれよ。『極度のシスコン化け物』といわれている君に、汚点がないと言うのかい?」
「私はミフィとリースを愛しているだけよ! 汚点だらけの変態ナルシ過ぎで『ファランの汚点』と陰口叩かれてるあなたほどではないわ!!」
「なんだと!」
「なんですの?!」
 ………………後ろで騒いでいる人たちが居なければ、ですけれど……。
 お願いですから、後ろでバチバチとずっしりは……止めていただけませんか……?
 ……無理でしょうけど…………。
「ちょっと外、出なよ」
「あら。私も同じことを考えていましたのよ?」
「へぇ……。その減らず口、二度と聞けなくしてあげるよ」
「それは楽しみだわ。せいぜい私に沈められないよう、お気を付けあぞばせ」
 好戦的に微笑んだ『隣国の宝』。
 それに応えるように妖艶に微笑む。
 『イルディオの化け物』と名高きお姉様。
 お二人は微笑みを崩すことなく、何処かえと消え去りました。
 ……あぁ。
 でも本当に良かった。
 何も壊されなくて……。
 それに、変態とお姉様が二人ずつではなかったから、本当によかったわ……。
 なんて考えて再び紅茶を啜り、空を見上げた。
 本当に、綺麗な空だわ……。

 ――コンコン

 小さな物音がしたのでそちらに目を向けてみると、見慣れた人形モドキがガラスをたたいています。
『りーすぅ~! 来たよぉ~』
「あら、ミリー」
 そっと紅茶をテラスに置いて、立ち上がってガラスを開けた。
「おかえりなさい。もうあちらは良いの?」
「うん。もうバッチリだよ!」
 嬉しそうに微笑んで頷くミリー。
 そんな彼女を抱えて、先ほどまで座っていた場所に戻って先ほど同様に座り込んだ。
「えへへ。膝抱っこ! ちょっと恥ずかしいかも……」
「そうかしら?」
「うん。でも、テノール様たちしかいないから、大丈夫かな?」
「そうね。きっと大丈夫よ」
「だよね! ……ねぇリース。私、重くない?」
「重くなんてないわ」
「ならよかった! もう、リース大好き!!」
「えぇ。私もミリーが大好きよ」
「ありがとぅ。もう明日も頑張っちゃうっ!」
 勢いよく振り返ったミリーが両手をいっぱいに広げて、私に抱き着いて来た。
 だからその柔らかなミルクティの髪に優しく触れ。
 頭を撫でるように指で梳く。
「ムリしちゃだめよ?」
「わかってる! 無理なんてしないもーん」
 にっこりとほほ笑んだミリー。
 この子はもう、私の【ミリー】ではなく。
 【一国の王女・シャティフィーヌ】。
 公務に王女教育などで忙しくしていることは知っているわ……。
 だからこそ。
 この子がこの子であれるよう、私は態度を変えないわ。
 だってこの子は今。
 【シャティフィーヌ】ではなく、【ミリー】だもの……。
 私の、可愛いお姉ちゃんで妹。
 大切な。
 大切な、癒しであり。
 家族だもの……。
 だからどうか、安らいで。
 私の前だけでも良いから、ありのままの明るい貴女でいてちょうだい。
「ふふ。そうなの?」
「うん。だってそんなことしてたらリースに会えないじゃん!」
「ありがとう。私も貴女に一日に一度会えることが楽しみだわ」
「えへへ。あたしも! あ。ねぇ見て、あの雲! なんか猫みたいだよ!!」
 そう嬉々としてミリーが指さした先には、本当に猫の様な雲が浮かんでいたわ。 
「本当。猫みたいね。あら。あっちはキノコみたいよ?」
「あ。ホントだ!!」
 こうして、私たちが雲を見つめることに夢中になり始め。
 何時だったか忘れたけれど、メイサがクッキーと紅茶を持ってきてくれて、ミリーとお茶会を始めたころ。
 遠くで閃光が走った様な気がした。


 ――――翌日。

 ある山の中腹に『突如として巨大な風穴があいた』という話と、『急に広大な平地だったものが高原になった』という話を聞きました……。
 今度あの変態とお姉様がいらした時に、お灸を据えましょう。
 そうしましょう。
 私、もう本気です。
 冗談ではなく。
 本気でお灸を据えたいと思います。
 それから『修復をするように』と、言いつけようと思いますわ……。
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