第六話 四号
――少し時を遡る事、数分前。
「あらかた、片付いたな……」
「あぁ。そうだな」
そう言ったのは、この屋敷でおっかないと言うことで一位、二位を争う二人。
執事と頭――じゃなくて、だな。
料理長様だ……。
そんな二人なんだが……ハッキリ言おう。
怖いな。
あっという間に死屍累々の山を競うようにしてお作り上げになったんだ。
……俺がもし敵なら、こんなのの相手なんぞゼッテェしたくねぇな。
考えてみろよ。
きっと俺みたいな雑魚、瞬殺だぜ……?
これ。
ハハハ…………。
まぁ、そんな命知らずなことしねぇけどさ……。
つーか今頃姫さん。
何してッかなぁ……。
また変なことしてねぇといいけど……。
あ。
そう言えば釘刺されたって言ってたな。
責任も感じてるみたいだったし、大丈夫だと思うけど……。
あの姫さん、ずれてっから。
それに姫さんは大人ぶって何も言わねぇけど、どーせまた――
「寂しがってんだろーな。姫さん」
しみじみ考えてたら、ついついぽろっと漏れた言葉。
これに『おっかない』代表の二人が勢いよく振り返ってきやがった?!
とか思ったら残像?!
って……何か俺。
今すっげーおっかないの二人に、胸ぐら掴まれたんだけど……誰か助けて…………。
「四号。どういうことです? さぁ、言え」
「さっさと吐け」
嗚呼。
人の胸ぐら掴んで低音吐く二人が怖い……。
執事が怖い。
頭のヤバイ顔が一層ヤバイよ……!
視線だけで近くに居た一号に『助けて』と意味を込め、目を向けてみた。
結果。
ため息つきやがった。
「……あきらめろ」
嗚呼。
そうだった。
お前はお頭以外には薄情だったな……おらぁ、ついつい忘れちまってたよ…………。
ちぃくしょぉぉおおお!!
もうこの際だから姫さんでも良いから……。
助けて下さい……。
「おら。さっさと吐け」
「ハイ、お頭。姫さん極度の寂しがり屋で『大人なのに寂しいなんて私ダメね』って言ってましたっ!!」
ごめん!
姫さんっ!!
俺、俺……『秘密ね』って言ってたのにばらしちゃいました…………。
すんませんっっっ!!
不甲斐無いくてほんっっっとすんません!!
なんて俺が姫さんに謝罪してる間に、胸ぐら掴んでた二人は血相変えて(またも残像を残して)居なくなってくれました。
しかも振り返ったら大量にいた奴ら、誰一人いないというね……。
俺さ。
ホント思うんよ。
ここの人間ってさ、皆薄情だよな…………。
てか、『姫さん命~!』って感じでさ。
姫さんにかかわる事以外どうでも良いってかんじ?
まぁ。
俺も人の事言えないかもだけど……。
……さて、と。
さっさと姫さんに謝りに行くか……。
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