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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
第二章 元、名門貴族な居候
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第十話 生き物……?

「よし。出来たわ」


 ついつい嬉しくて声が弾んでしまった。

 そしてそんな私の目の前に引っ張ってきたローテーブルには、片腕で持てる大きさのビクスドールがお行儀良く、座っている。

 私がただひたすらに『生きてないモノを』と考えた末の、形です。

 人形です。

 もちろん脈なんて恐ろしいものは打っていません。

 なんと嬉しいことでしょう。

 人形は黒髪で菫の瞳で――……って、何故私が出来たのかしら?

 変ね。

 依頼とかで脈を打つ人形を作るときは、私になんて似ないのに…………。

 

 …………あぁ……。

 そう言えば私。

 依頼主の頭の中をのぞいて、それに合わせて作っていたわ……。

 まぁ。

 似て当然なのかもしれないわね。

 だって、私。

 『生きてないモノ』に執着していたから……。

 それに、あの子もこれを見たら馬鹿なこともやめるかもしれないわね。

 こんなにも私に似てしまったのですもの。

 私はそう思って、お行儀良く座っているビクスドールに手を伸ばし、抱き上げた。


 なんとなく自分と同じ菫の瞳が嫌で、瞳を閉じた形に変更。

 

 えぇ。

 これでいいわ。


 少し満足して、それをローテーブルに戻す。


 ――――ドガーン


 そんな音を立て、私の部屋の天井から壁が一部壊れてきました。

 天井に張り付いていた明かりはかろうじて無事ですが、私が人形をおこうとしていたローテーブルはぺしゃんこです。

 隣室はひどいありさま……。


 ……でも良かったわ。まだ手を離してなくて……。

  

 そう、ホッとした。

 で。

 天井の一部と共に降ってきたモノに目を向けた。

 

 降ってきたモノは、長くて美しい黒髪に藍色の瞳の女性。

 それと、変な……そうね…………。

 生き物って呼ぶのは変な感じだわ。

 だって、腐敗臭の様なものを漂わせているのよ?

 腹部から赤い何かを『だらりとたらして』?

 いえ。

 これは『引きずって』? いるし……。


 まぁ、そんな感じなの。

 で。

 顔は骨みたいになっていて、皮? みたいなのが顎? それとも首? にぶら下がっているわ。

 これは【生き物】って分類で良いのかしら?

 そう思いながらそれを見ていた。


「チッ……。しぶといわね」 


 そう言ったのは落ちてきた女性。

 これに生き物かな何かわからないものが、低く唸った。

 その唸り声は屋敷中に響いたようで、部屋の扉がノックもなく。

 勢い良く開いた。


「「「「お嬢様っ!!」」」」

「「「「姫さんっ!!」」」」

「「「姫様っ!!」」」


 血相を変えたテノールと双子、バリトンだけでは無く。

 彼らの部下が血相を変えて部屋に飛び込んできました。

 その中には料理長の部下もいます。

 身重の料理長が居ないことにホッと安心しました。


「あら、皆。どうしたの? そんなに慌てて」


 なにやら青ざめている皆。

 何かしら?

 そう思っていたら、頭上に影が差した。

 変ね?

 だって、四号がつけてくれた明かりは無事なはずなのに。

 なんて思いながら、明かりを遮った何かを見上げた。

 

 落ちてきた低く唸る、腐敗臭の様なモノを漂わせる生き物が正面で歯を見せています。


 犬歯がとても大きくて鋭いわ。

 これで噛まれたら痛そうね。

 

 なんて考えていたら、黒髪の女性が魔術を展開するよりも早く。

 テノールと双子、バリトンが動いた。

 

 四人はそれからどこかにいったようで、居なくなったの。

 どこに行ったのかしら?


 そう思っていたら、落ちてきた生き物がばらばらになって床に落ちた。

 

 次の瞬間。

 その生き物は淡く発光して、小さな犬に姿を変え。

 可愛らしく、一階だけ吠えて消えた。


 なんだったのかしら?

 今の……。


「ねぇ、テノール。今のは?」

「………………」

 

 沈黙し、目を逸らすテノール。

 彼が言いたくないと言外に訴えてきたので、双子に問うけれどその双子もまた、沈黙。

 だからバリトンに目を合わせる。

 これに彼は気まずそうにして、頬を掻いて困った顔で笑った。

 だから彼らの後ろ。

 使用人をしてくれている皆に目を向けてみた。

 でも。

 反応はテノールたちと同じで、沈黙を返してきた。

 

「皆、教えてくれないの……?」


 どうして?

 皆は分かっているのでしょう?

 なのに、教えてくれないの?


 ……私。

 今まで生きてきてこんな生き物は初めて見たのに…………。

 

「…………えっと、良いかしら?」


 突然聞こえた声。

 それがした方に目を向けると、そこにはさっき降ってきた女性が居た。

 なので『はい、なんでしょう』と声をかけると、女性は屋敷を破壊したことについて謝罪して、その壊れた場所を直してくれたの。

 だから素直に礼を言うと、その女性が急に抱き着いてきました。


 なぜかしら……?


 ―――――――――

 

 ――――――

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