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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
第二章 元、名門貴族な居候
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第五話 青虫

 なんて思って、幸せだったこともありました……。


 ですが今は――――。


「ねぇ、テノール。私ね、青虫なんかじゃないのよ……?」

「えぇ。そうでしょうね」


 やんわりと抗議したら、満面の笑みでそう言われた。

 もちろん、食い下がるわよ?  


「じゃぁ、どうしていつもいつも草料理なの……?」


 もうね。

 正直に言って、うんざりなの。

 道端に生えてるような草ばっかりを使った料理はね……。

 まぁ、それしかないから食べてますけど…………。


「薬膳料理です」


 ニコリと微笑み、そう言いきるテノール。

 変ね。

 私、薬膳ってお肉も使うものだと思っていたのだけれど……? 


「……あなたの料理でお肉を見たことないわ…………」

「薬膳料理なので当然です」

「(違うと思うのだけど、この様子だといくら言っても無駄よね……)…………………………そうなの…………」


 いくらいっても無駄のようだから、諦めてその野草と言うか雑草と言うか……なんとも言えない料理を完食しました。

 とても激しく!

 もうとっても……料理長が恋しいっ…………!!

 料理長のおいしいご飯が食べたいのよ!!

 

 やり場のない悔しさをどうにかしたくて、ダンッとテーブルに両手の拳をぶつけた。

 でもすっきりしないので、もう一回叩いてみます。

 

 少し、すっきりしました。


 でも。

 だけどね、やっぱり私。

 料理長のご飯が食べたいわ……。


「料理長のご飯食べたい……もう、草はイヤ…………」


 どうして、どうして私、稼いでるはずなのに、こんなつつましやかな食事をしないといけないの?

 パンが食べたいわ……。

 お肉が食べたいの。

 お野菜が食べたい…………。

 ついつい顔を覆ってさめざめと泣いてしまいました。


 ちなみに、このやり取りは何度目になるのでしょうね……?


 十回を超えたあたりから、数えてないわ……。


「ねぇ、テノール。まともなお料理が出来る方を雇いましょう? 臨時で良いから……」

「いけません。お嬢様。どんな者が来るか分かったモノではありません」


 笑みを浮かべたまま、はっきりと言い切ったテノール。

 こんな所でなんて、負けないわ……!


「でもね。テノール――――」

「とにかく。いけません」

「そんな……テノール…………!」

「いけませんって言ったらいけません」

「そこをなんとか――――」

「無理です。ダメです。いけません」

「…………あなたはいつもそれしか言わないんだから……」

「本当の事です。無理なのモノは無理ですし、ダメなものもダメです。いつも言ってるではありませんか…………」

「じゃぁ……テノールが草料理じゃなくて、普通の料理を作ってくれたら何も言わないわ……」

「薬膳料理はお嫌いですか……?」

「(あなたの料理は薬膳料理なんてものじゃないわ……)……草料理もうイヤなの、もう飽きたの食べたくないの。普通の料理が食べたいのっ!」


 もう、テノール。

 貴方は何度言ったら聞いてくれるのかしら?

 そして。

 何度このやり取りを繰り返したら良いの……?

 

 嗚呼。


 料理長、お願いよ。

 

 早く戻ってきて……!


 じゃないと私。

 テノールに青虫にされてしまうわ!! 

読んで下さり、誠にありがとうございました!

お気づきの方もいるでしょうが。

テノールが、リスティナにその辺の草を食べさせてるわけがないし、そしてそれが野菜ですらないというね!

さて、なんでしょうね?

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