第十四話 適性
「ほらミリー。ベッドに行って寝ましょう?」
そっと肩に手を置くと、ミリーはパサッと毛布から手を離し、私の手を握ってきました。
眠いのか、力はあまり入っていません。
「ん……」
コクリと頷いたので、私はその手を引いてベッドに向かう。
――ぼすっ……
変な音がしたので、軽く振り返るとミリーが枕を抱いていません。
しかも器用に歩きながらコクリコクリと舟をこいでいます。
…………まだ五歩も歩いていないわよ……?
なんて思ったけれど、無視してミリーとベットに入った。
これと同時にミリーは寝息を立て始め、幸せそうに微笑んだ。
……さて。
この子は何をしに来たのかしら……?
………………まぁ、ちょうど良いわ……。
「ごめんね。ミリー……ちょっと、覗くわ…………」
あまりこういう事、したくないのよ……?
でも、必要なことだから。
私はミリーの頭を撫でながら、才能のないことだけが判明した魔術。
それを展開した。
黒い光を放つ陣。
それは、ゆっくりとミリーに取り込まれ、消え。
これと同時に私は彼女の記憶の中に潜った。
――――――――――
―――――――
最初に見えたのは、顔をしかめて眠っている私の手を握って泣いている姿。
これに胸が締め付けられたけれど、先を急いだ。
奥に行くにつれて、ミリーと私は幼くなって行き、テノールたちは若返っていく。
私はそれを横目に見ながら、歩みを早める。
しばらくして、私がミリーを拾ったあの日が見えた。
だからそこに行って、私に会う前のミリーを探す。
そうしたら、必死に走っている姿の彼女が居た。
と言うことは。
もう少し奥ね……。
私はもっと奥へと進んだ。
そうするとミリーの記憶が、無くなった。
後ろを振り返れば、記憶はあるわ。
でも、この先は何もない。
けど。
きっと何かある。
そう確信し、なおも記憶を遡ろうとした。
でも――……阻まれたわ……。
見えない【何か】に……。
私はその【何か】に手を触れた。
真っ黒で冷たく……微量だけれど魔力を感じたわ…………。
でも、この魔力。
上手く隠されているだけで、本当はもっと強力なものだと思うわ。
きっと、ね……。
だって、一度。
解除しようと試みたのよ。
でも出来なかった。
まぁ、私。
そう言うのとか攻撃術、防御術、治療術とか……全然ダメなのだけれど……。
…………………ハッキリ言って、私。悪質な術しか使えないの……。
他人が考えていることを読んだり、記憶を覗いたり。
生身の人間とまったく同じ傀儡を作り出したりとか。
それを操ったりとか……呪ったり。
ほかにもあるけど、言いたくないわ。
とにかく悪質なの。
そんなのにしか適性がなかったのよ……。
でも過去の【私】を見たから、納得したわ。
特に処刑された一度目から四度目でね…………。
私は自分自身の魔術適性が大嫌いよ。
でもこれを切り札にしないと、私の未来が無いわ……。
…………あぁ。
暗くなってしまいましたね……。
さっさとミリーの記憶から出ましょう。
そしてテノールたちと話をしなくてはね。
私が生きるための扉の鍵は、彼らが握っているのだから…………。