第十三話 素足
なんて考えをしていましたが考えるだけで恐ろしいので、お風呂に入り。
今はネグリジェの上にブランケットを羽織って、肌寒いけれど、ベランダから夜空を見上げています。
数多くの【私】はこの屋敷で殺されました。
死因も様々です。
一~四度目は処刑。
それからはずっと、見ず知らずの人に首を切られたり、胴体を切られたり、毒を盛られたりと……様々。
なかでも酷かったのは、拷問狂な暗殺者ですね……。
目をつぶされ、手を落とされ――……嗚呼、やめましょう。
思い出したくありません…………。
……一度目から四度目までの【私】は、嫌いです。
殺されて当然ですわ!
あんなに可愛く優しくて、ちょっとおバカなところがたまに傷ですけど、ミリーを。
私の侍女であり、姉妹のように育ち……私の『友』。
その彼女を虐げていたのです。
あの場に私が居たとしたら、私は自分で手を下していたことでしょう。
………………あの子が一度目~四度目までの【私】にされていた仕打ちは、過激なことを考えたくなるほどの仕打ちでしたもの…………。
…………不思議ね。
【私】は過去の私なのに、それに腹を立てるなんて。
そう考え、ついつい自嘲してしまいました。
「はぁ……」
ついつい出たため息。
それと同時に、いつの間にか手すりに置いた手を見つめていたことに気づいた。
私は空しいというか、悲しいというか。
良くわからないような感情をなんとかしたくて、月を見上げました。
月は丸く。
いつもより少し、青く見え。
綺麗だった。
――ぺた、ぺた、ぺた
なにやら不気味な音が、ただのゲートに成り果てたこの部屋の入口の方から聞こえ。
私はそちらに目を向けた。
聞こえてくる音はまるで、素足で冷たい廊下を歩くような音。
…………聞き覚えがあるのだけれど……?
ていうか。
昔、よぉ~っく!
聞いた音なのだけれど……。
………………ま、まぁ……違うわよね…………?
私はそれでは無いことを祈って、近づいて来ている音をたてているものが来るのを待った。
しばらくして。
「んぅ……りーすぅ……?」
と、まぁ。
枕を抱えた手で眠そうに目をこすりながら、ミリーが顔を覗かせました。
…………あぁ。
やっぱり……。
ミリー、あなただったのね……。
また素足で廊下を歩いて。
冷たかったでしょうに……。
私はベランダから室内に入って、クローゼットからスリッパを取り出し、ミリーの足元に置いた。
「ほら、ミリー。スリッパ」
「ふぁ……わすれてた…………」
小さく欠伸をしながら言って、ぼんやりとそれを履くミリー。
ちなみに彼女。
侍女姿ではなく、ネグリジェ姿です。
右手に抱えているのは枕。
左手には毛布の端を掴んでいて、引きずっていますの……。
ミリー。
あなた、私と寝る気満々なのね……。
まぁ、良いわ。
さっさと寝かせましょう。
そろそろテノールたちも手が空くころでしょうし。
これからの事について話あわないといけませんものね……。
日曜日は確実に投稿します。
時間は21時過ぎだと思います。