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竜王はワシじゃろ?  作者: 阿弥陀乃トンマージ
第一章

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第8話(2)友達

「あっ……」

 トイレに行った竜子は鏡の前で泣いていた玲央奈の姿を見つける。

「……」

 玲央奈がハンカチで涙をさっと拭い、鼻水をすする。

「す、すまん……」

「何故貴女が謝るのよ」

「あ、ああ……」

「謝るのはむしろ私の方よ」

「え?」

「え?じゃないわよ、決勝で会おうって言ったのに、負けちゃったのだから……」

 玲央奈が顔を俯かせる。

「しょ、勝負は時の運じゃ!」

「運を引き寄せられなかった私の負け……」

「あ、相手の差し回しが予想外のもんじゃった!」

「それに対応することが出来なかった私の力不足……」

「ほ、ほとんど五分五分じゃった!」

「そういう一局こそモノにしないとならないのに……結局は勝負弱いということ……」

「ぐっ……」

 竜子も顔を俯かせる。

「ふふっ……」

 玲央奈がぷっと噴き出してしまう。

「ん?」

「なんで貴女まで俯くのよ」

「い、いや、なんとか慰めようと思ったんじゃが、手詰まりじゃと思って……」

「慰め?」

 玲央奈がキッとした目つきになる。

「む……」

 竜子がややたじろぐ。

「そんなもの要らないわよ……!」

 玲央奈が低く鋭い声色で呟く。

「う……」

「こちらがよりみじめな気持ちになるだけだわ……」

「す、すま……」

「だから謝らない!」

「は、はい!」

 竜子がピシッと背筋を正す。

「………」

 玲央奈が竜子を睨む。

「…………」

「……………」

「………………」

「…………………」

「……で、でも……」

 竜子が目をきょろきょろとさせながら口を開く。

「でも?」

 竜子が再び顔を俯かせて呟く。

「げ、元気付けてあげたいのじゃ!」

「元気付ける?」

「そ、そうじゃ」

「……何故?」

「何故って……それは……」

「それは?」

 竜子が顔をパッと上げる。

「友達だからじゃ!」

「!」

 玲央奈が目を丸くする。

「ど、どうしたのじゃ?」

「友達……?」

「あ、ああ……」

「誰と誰が?」

「い、いや、誰と誰って……玲央奈とワシじゃ」

「貴女と私……?」

 玲央奈が自らと竜子を交互に指差す。

「ああ、そうじゃ」

「友達だったの……? 私たちって……」

「違うのか?」

「……いつから?」

「い、いつからって……そりゃあ、初めて会うた時からじゃろ」

「……今日で会うのは三回目よ? たったの……」

「そうじゃな」

「あまり話したことないじゃないの……」

「多くを語り合ったじゃろ……盤上で」

「‼」

 玲央奈がさらに目を丸くする。

「うん?」

 竜子が小首を傾げる。

「……………………」

 玲央奈が再び顔を俯かせる。

「……ち、違うたかの?」

 竜子がおそるおそる玲央奈の顔を覗き込む。

「……ぷっ」

「ぷっ?」

「……あははは!」

「おおう⁉」

 いきなり顔を上げて笑い出した玲央奈に竜子が驚く。

「ははははは! ははは……あ~可笑しい……」

 玲央奈が指で目からこぼれる涙を拭う。

「な、なにかおかしかったか?」

 竜子が戸惑う。

「いいえ……将野竜子ちゃん!」

「お、おう……!」

「どうもありがとう、すっかり元気が出たわ」

「そ、それは良かったの……」

 やや間をおいてから玲央奈が話す。

「……友達としてお願いがあるのだけれど……」

「なんじゃ?」

「決勝戦、必ず勝ってちょうだい、私があらためて貴女を倒すから」

「! ……ふふっ、任せとけ!」

 竜子が力強く頷き、会場に颯爽と戻る。

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