後日談2(水嶋アカリの場合)
「おい、アカリ。本当に家を出るのか?」
玄関で靴を履いていると、後ろから和彦兄さんが声をかけてきた。
振り返ると、和彦兄さんだけでなく、由理枝姉さんと竜也兄までが心配そうな表情を浮かべ見送りに来ていた。
由理枝姉さんが、不安そうに手をこすりながら口を開く。
「もう少し、ここにいた方がいいんじゃないかしら。双葉も行方不明のままだし、あなたまでいなくなったら……」
「大丈夫だよ。ちゃんと毎日連絡するし、たまに顔も出すから」
お父さんが亡くなり、お母さんが警察に捕まったあの日から、早二週間が経過した。
その間に起きた重大事件と言えば、双葉お姉ちゃんがいなくなったこと。
何の前触れもなく、書き置き一つ残さず姿を消した。
兄さんたちは慌てて捜索願を出していたけれど、私は何となく察していた。倉庫に置いてあったスコップとシャベルが持ち出され、彼女のハイキングシューズも見当たらなかったから。
そのことを知らない、気付けない兄さんたちには申し訳ないけれど、双葉お姉ちゃんはもう二度と帰ってこないと思っていた。
あの日、相澤さんから告げられた言葉。そして、最近発覚したお母さんの嘘。
これらをまとめて考えれば、おのずと真実も見えてくる。
私にとっては、これ以上なく虚しい真実が。
この家を出ると決めたのは、そうした呪縛から解放されるため。
いまだ不安そうな表情を浮かべる家族に、私は笑顔を振りまいてから外に出る。
外に出てみたものの、予約をしたタクシーはまだ到着しておらず。
今から家の中に戻るのも面倒なため、最後に庭をふらふらすることに。
気づけば父の亡くなった場所に辿り着いていたため、立ち止まり、黙祷を捧げる。
黙祷が終わるのと同時に、玄関からクラクションが聞こえてきた。
どうやらようやくタクシーが到着したらしい。
私はもう一度短く黙祷を行ってから、玄関に足を向け、
――チャリン
お金の落ちる音を聞いた。
『Episode1:お金の咲く木の苗-完-』




