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“光の庭”のうたた寝 =100=

❝ =第一章第5節_33 ; 陰山山脈の南域にて・・・・ ❞

 ウイグル文字での一通には、=吐蕃の兵馬が酒泉城郭を襲うもよう。 祁連山脈の杣間道を密かに北上縦断する奇襲。 時期不明だが、祁連山脈南麓・哈垃湖畔に吐蕃兵が集結済み。 遼王国は耶律大石統帥の欽宇阮将軍以下120名の武将が邑民保護のため、武威に集結中。 密やかに邑落に導き、将軍の指揮を仰ぐこと。 尚、酒泉城を預かる曹撻烈殿にも密かにこの文面を見せること《ミイ・イムルグ署名》= と記されている。 訳したタングートの将が、文面をソグドの老人に示して 「ご老人、 オルデイ・イムルグ殿とやらが この文を受け取り、すばやい処置を命じられる前に転送されたのか」と問うた。


 「関係者間で回覧の必要がある重要な文は、伝鳩の事故を考えて二通以上送ります。 イムルグ様は邑を預かるオルデイ様と酒泉城代殿への書面と、この文を含めて五通だされたようです。 連番が記されております。」


 「ご老人、漢の言葉は話されるか・・・・・」

 「はい、商いで長安、洛陽、郅州にも居りました 」


 「成れば、好都合、この文にあるオルデイ・イムルグとはそなたではないようだが・・・・」 


 「はい、オルデイさまは、吾等が長のイムルグさまの実弟。 年はかなり離れておる若い方ですが、酒泉府に出入りしております。 その文は酒泉の店でオルデイさまが鳥海のイムルグさまから一昨日受け取られ、昼前に 私くしが預かる武威の店に鳩が舞い降りたしだいで・・・・・  私くし宛に添えられた連絡文には、明朝そちらに迎えに出る。 ついては、 120名の諸将を20名の小班に分割してもらい、武威の店の者が酒泉に案内しろと記されてありました 」


 「なれば、耶律康阮さま、我々 タングートの兵30名も6班に割り、明日より 20名の一団はそれぞれ間隔を空けてこの場を出発いたしましょうぞ。 オルデイ・イムルグ殿の手の者が道中同じとあらば、吐蕃の間者の目が誤魔化せます。 道中の宿泊は西夏の軍営に委ねれば事足りましょう 」


 「ご老人、今ひとつ お願いできまいかな 」

 「いかがなことでしょうか 」 


 「この文を渡すべき欽宇阮将軍は蘭州からこちらに向かっている。 二十名の騎馬武者を率いて、ただ 吐蕃と諍いで公道をおおっぴらに歩めぬ。 ましてや、遼の諸将である。 吾等とてこちらの言葉には通じておらぬ。 西夏の公務で旅立ったゆえ通事は付いておろうが、本日到来の予定であった。 無理を申すわけではないが、ひとつ、誰かを迎えに出してくれまいか 」


 「良くわかりました。 わたくしめが預かり、管理している領内の事。 気の利く輩がそこかしこに居りまする。 内密に欽宇阮将軍さまの動向を探り当て お会いすることなど容易いことでしょう。 今から、私が参りましょう、今夜中に古浪に入っておけば 明朝から 天祝のチベット族の村落を抜け、蘭州との境まで足が伸ばせます。」 


 「だれぞ 腕が立つ者を同行させようか」


 「一人の方が何かと動けます・・・・・それに、将軍さまにお会いできれば その必要はございますまい。」


 「なれば、欽宇阮将軍に連絡をつける方策はそなたに一任するのが最善であろう。 でその後は、ここに帰来して酒泉に・・・・・」


 「天祝から蘭州へ向かう途中の永昇村落より西に向かって、祁連山脈東南部を横切れば、一日の山越えで張掖へ向かう蘭州からの商人街道に出ることが出来ます。 祁連山脈の山中を縦断するこの街道は幾度となく通ったこともございます。 早や駆けの馬が疾走しても怪しまれることはございません。 この道を使えば、安全に、早く 耶律康阮さまとの合流が叶うでしょう。 

 天祝から一日道程の忠和に入いれば、蘭州での将軍が付いておられる交易隊の動向は把握できます。 忠和から蘭州へは半日の行程、将軍さまへの連絡は見知りの者を四方に走らせましょう。 お会いできた後は、蘭州から紅古に向かって祁連山脈の商人街道を早や駆けすれば三日で張掖に至れるでしょう。」


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