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12話 いわいとのねほだれ 5

 外へと出ると巨人の肩にいた岩井戸がわたしたちを見下ろしながら、

「こんなところに隠れてたの? 飲まずにはいられなかったのかしら?」

 などと小馬鹿にしたように言った。

「お酒は二十歳になってからよ。もっとも、大人になれるかしらね……」

 岩井戸が片手を挙げると巨人もそれに倣う。

万事休すか…… 

 と、その時爆音とともにヘリコプターの連隊が現れた。

「小うるさい蝿が!」

 機銃の攻撃を避け飛び降りた岩井戸は、竜巻を起こし、その上に飛び乗るとヘリコプターへむかって突進した。

 数機のヘリを撃墜したものの、今度は地上から戦車や対空機銃による攻撃を受ける。

「ええぃ! 巨人に対処が無理なら……最後を見れないのは残念だけど……せいぜい自分の選択を後悔しながら地獄に落ちなさい!」

 岩井戸の叫びとともに雪の巨人の目が怪しく紫色に光る。

 岩井戸を乗せた竜巻はうなりを上げながら戦車の群れへと飛び込んでいった。

 一方の巨人はゆっくりとだが確実にこちらに近づいてくる。

「あんなの……どうやって……」

「俺に……考えがある……」

 心が折れそうになるわたしに赤木君が声を掛けた。

「俺があいつの中にもぐりこんで……コントロールを乗っ取る……」

「コントロールを……」

「そうだ……あいつも俺も同じダデーナーだ……あいつの文珠を全て俺が飲み込んでやる」

「でも……」

「なあに、何とかなるさ……俺があいつの動きを止めたら……トゥインクルファウンテンで俺ごとあいつを吹き飛ばしてくれ……」

「そんなことしたら!」

「大丈夫さ、いつか俺が山で暴走しかけたとき、ちょうどいいところで止めてくれたろう……またああやって止めてくれれば、なにも問題は無いさ……」

 赤木君はやさしい目をしてわたしの肩を抱いた。その顔がなぜだかぼやけていく。

 手を離し、振り返り巨人のほうを向いた赤木君に

「待って!」

 と声を掛けた。

 振り返った赤木君の首に手を回すと、唇を重ねていた。考えるより体が動いていた。

 いつかとは違う、その温かで力強い弾力に満ちた感触。あの冷酷で凶悪そうな雪の巨人と同じダデーナーは思えない赤木君のぬくもりが、生命が、唇を通して伝わってきた。

 ズウン……

 巨人の立てる地響きがわたしたち二人を現実に戻した。

「絶対……戻ってきて……わたし……!」

 わたしの言葉をさえぎったのは赤木君の唇だった。

 ラクシュミーの体でなければ折れてしまうのではないかという彼の力強い抱擁からは、なぜだか不安や恐れといた感情が伝わってきたような、そんな気がした。

 永遠にも感じられたが実際にはほんの少しの時間だったのだろう。

「必ず……戻ってくる……」

 唇を離した彼の瞳は澄み切っていた。

 そして背中を向け、雄たけびを上げながら巨人へ向かって掛けだした。

 赤木君に向かって巨人から氷弾が放たれる。左右へとかわしながらぐんぐんと赤木君が近づいていく。

 巨人はその身をかがめると、近づいてきた赤木君に向かってその手を叩き付けた。

 赤木君は跳び上がると、その振り下ろされた腕に飛び乗った。

 巨人は驚いたようにその身を引くが、赤木君はしっかりと足を踏み込みながら巨人の頭部へと迫る。

 巨人の口からまたも氷弾が吐き出された。かわしようが無い狭い足場。急所をかばいながら傷だらけになって二の腕へとたどり着く。

 巨人が赤木君を振り落とそうと腕を大きく上へと振るった瞬間、その勢いを利用して赤木君が跳んだ!

 気がつかない巨人は腕を振り下ろし顔を下へと向ける。その機に乗じて赤木君が巨人の首筋へと取り付いた。

 腕を首筋へとめり込ませたその時、巨人は気がついたのか立ち上がり、そのせいで赤木君が見えなくなってしまった。

 巨人は背中がかゆいかのようなジェスチャーを見せながら赤木君を払いのけようと体を動かしている。が、不意にその両腕がだらりと垂れ下がり、目からまがまがしい紫色の光が消えた。

 赤木君がコントロールを奪った!

 そう確信したわたしは覚悟を決め、トゥインクルファウンテンのために空〈クウ〉から力を吸い上げる。

 あれだけの文珠の量、そして大きさのダデーナーだ……いつもよりじっくりと、しっかりと、そしてたっぷりと力をためる。

「……気力……充実……」

 頭がクラリとする。気を抜くと体が爆発四散してしまうかのような感覚に襲われる。

 集中だ、集中するんだ。

「ラクシュミー……トゥインクル……ファウンテェーーーーーーーン!!!」

 いつもよりはるかに太い光の噴水がトゥインクルロッドから噴出した。

 振動がびりびりと腕に伝わってくる。

「ダデェェエエェェエエエェェエエェェェェエェエエエエエエエェェェエェェ……」

 太く大きな絶叫が一帯に響き渡る。

 浄化に抗おうとする巨人の意思がダデーナーから伝わってくるような、その意思が重さを生みだし、光線を押し返してくるかのように感じられ、わたしはさらに腕に力をこめた。

「あああぁぁああぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁああぁぁああああぁぁぁぁぁ…………」

 巨人から力が抜けてきたような気がする。

 背中が心なしか丸まり、膝が折れ、小刻みに震えだし、頭部を形作る顔のパーツが剥がれ落ちてきた。

「あと少し!」

 と、思ったその時。巨人から何か赤いものが落ちたような気がした。

 人型?

 まさか!

 赤鬼の張りぼて……

 赤木君……?

「いやあぁああぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁっ!」

 あわてて落ちた赤鬼の張りぼてに駆け寄り 揺すってみるが……

「嫌……嫌だよ……動いて!……動いてよ!」

 不意に影が覆い暗くなる。

 見上げると、雪の巨人の巨体がコントロールを失ってわたし達に向かって……

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