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12話 いわいとのねほだれ 2

 指定の日、前方後円墳を模した「文化ホールまほら」は珍しく混みあっていた。

「ねほだれ大会」

 この辺の方言で「寝言」のことをさす「ねほだれ」転じてくだらない馬鹿話を意味する。

 そんな馬鹿話……というかネタや寸劇、はたまた歌謡や踊りなどをお年寄りが披露するのが毎年二月半ばにおこなわれるこの「ねほだれ大会」だ。

 お年寄りの間で人気が非常に高く、本来ならば入手困難なチケットが必要なこのイベントではあるが取材の名目で容易に入場することができた。

 二階のホワイエ。お年寄りだらけのこの場所で、若いわたしと赤木君、そして青木君に変身したシンハは目立っていた。が、好奇の視線を向けていたお年寄りは演目が始まると皆ホールへと姿を消していった。

 中学校が見えるソファに腰掛け、その時を待つ。

 あの日のことは全て二人に話してある。

 結果導き出した結論は……

 と、不意にホールの扉が開く音がする。

「面白いっていうから来てみたけど、内輪で盛り上がってるだけね……」

 中から現れたのは高そうなコートに身をつつんだ岩井戸だった。

「岩井戸!」

「あら、シンハお久しぶり。ずいぶんと血相を変えて、その様子じゃ答えは……」

「決まっているッハ! そんな自己中心的な目的のために如意宝珠は渡せないッハ!」

 立ち上がったシンハが岩井戸を指差しながら言い放つ。が、岩井戸は余裕の様子で、

「自己中心的だなんて、これは親の愛よ」

「親の愛?」

「そ。それに彼女にもいったけどこの世界やこの国を滅ぼすつもりじゃないのよ。この世界、この国、この時代は私たちの生まれた時代より夢や希望に満ちている。あの子達にもこの世界を味あわせてあげたい。幼くして死んでしまったあの子に命の喜びを味あわせたいだけなのよ」

 岩井戸はうっとりした表情で腕を広げる。

「それが自己中心的だって言ってるッハ!」

 シンハの叫び声に岩井戸は眉根をひそめる。

「自己中心的だって言うのならわたしの考えているターゲットのほうに言って欲しいわ。私も勉強したのよ、この時代のこと……考えなしに繁殖し、環境のことなど配慮せず、自然を汚し尽くし、食らい尽くし、疫病をはびこらせ……このままにしていたらこの星を砂漠にしてしまうわ。私は弥彦と弥三郎をこの世に呼び戻すことによってこの星を救うのよ」

「地球の神にでもなったつもりかッハ! まるでほかの人間に価値の無いような言い方を!」

「あら、価値は認めているわよ。かわいい弥彦と弥三郎の復活のための生け贄としてね。ねぇ? 女の子っておとぎ話の中の王子様の復活とか憧れるんでしょ? その目でハッピーエンドを見てみたいと思わない、ぼたんちゃん?」

 そうわたしに同意を求める岩井戸がなんとも忌まわしい存在に思われて、

「……ねほだれだ……」

 と口からこぼれ出た。

「え?」

「……もっともらしいことをいっているけど、あなたのやろうとしてるのは……ほんとに『ねほだれ』だわ……内輪受けにもならない独りよがりよ……そんなことに手を貸すなんて……絶対に出来ない……」

「そう……」

 岩井戸の目がすっと細くなる。

「シンハ!」

 掛け声とともにシンハと赤木君がわたしの前に壁を作る。と、同時に如意宝珠を受け取ったわたしは

「オン・チンターマニ・ソワカ!」

 の掛け声とともにラクシュミーへと姿を変えた。

 変身のタイミングで仕掛けてくるかと思ったが、岩井戸は予想に反して腕を組んだまま冷たい瞳でこちらを見ているだけだった。

「結局、それが答えなのね……」

「そうだッハ。お前に与えられた時間はもう終わったんだッハ」

「……よくも……あの十三の歳に終わっていたはずの私の人生を無理に引き伸ばしておいて……よくもそんな勝手なことが言えたものだわ……」

 そういうとシンハからわたしへと視線を移し、

「ふるさとが破壊され、親が殺され、もう何もかも投げ出したいのに……有り余る力を与えられて、無理やりに闘わせられた私の気持ち……そんな私に出来た安らぎを、守り助ける力を奪われてしまった虚しさや悔しさ……私は失ってしまった安らぎを取り戻したい、ただそれだけなのに……そうね、その気持ちが理解できればあなたにも私の気持ちを理解してもらえるかしら……」

「なにを……?」

 と、わたしが返そうとすると、岩井戸は開いた両の手のひらを仰々しく持ち上げる。それとともに地鳴りが響く。

 わたしたちは腰を落とし攻撃に備えるが、岩井戸に特段変わった様子は見えない。

「どこを見ているの? あなたたちの相手は外にいるわよ」

 と、あごをしゃくる。

 言われて振り返ると……ホワイエを覆う一面のガラスの向こうに五メートルほどの白い雪の巨人がずらりと並んでいた。

 彼らに裏表があるのかは不明だが、どうもこちら側ではなく向こう側を向いているようなのだ……が……まさか……

「文珠!」

 の声にシンハはすぐに文珠をくれ

「ラクシュミー・トゥインクル・ファウンテン!」

 を窓越しにぶっ放す。

 ファウンテンは三体ほどの巨人の上半身を薙いだものの、ほかの巨人たちはのしのしと放射状に町へと散っていった。

「まずはふるさとがめちゃくちゃにされる思いを味わいなさい」

 いつの間にか向こう側のドアのほうに移動していた岩井戸が声を上げる。

「待ちなさい!」

 と、詰め寄ろうとするが、突如ホールのドアが開き

「地震だ! 地震だ!」

 と、大勢のお年寄りの波がホワイへへとあふれた。

「ま、ちょ……ンもう!」

 まさかお年寄りを突き飛ばして追いかけるわけにもいかず、先ほど破ったガラス戸から外へと躍り出る。

 巨人のスピードは意外と速い。

 正面にホームセンター、はすむかいに交番、そして裏手には老人ホームに病院と町役場……

 岩井戸は……見失って……もう……どこから止めたら……

「病院と老人ホーム!」

 わたしが叫ぶと赤木君が飛び出す。

 赤木君は大きくジャンプを繰り返し、わたしはその上を飛びながら一体の巨人に迫る。

 赤木君が巨人のひざの裏側めがけて強烈なキックをお見舞いする。

 ひざカックンを食らった巨人が重そうな音を立てその身を横たえる。

 次々たおしていかないと! 即効でかたをつけるには……

「シンハ! 文珠を!」

 声をかけるが今度はシンハが近くにいない。

「シンハ! シンハどこよ!」

 声を立てるが返事が無い。

 そうするうちにも巨人が再びその身を起こそうと地面に腕をつく。

 立ち上がろうとする巨人の腕を蹴り、再度横にする赤木君のほうがよほど役に立つ。

 シンハをあてにするより自分で出来ることをしないと!

 わたしはトゥインクルファウンテンのための儀式の踊りを踊る。

「気力充実! ラクシュミー・トゥインクル・ファウンテン!」

 輝く噴水のような光が巨人の上半身を吹き飛ばし、下半身は力なく崩れ落ちる。

 でも待ってよ? 何か物足りないような……

「後ろだ!」

 との赤木君の叫び声に驚いて振り向くと、いつの間に現れたのか雪の巨人が腕を大きく振り上げていた。

 間一髪でその攻撃を避け、赤木君のそばへと駆け寄る。

「いつのまに? あいつ……」

「ファウンテンを撃った直後、突然雪が盛り上がった」

「そういえば、いつものあの絶叫が」

「ああ、聞こえなかったな……」

「って言うことは……」

 物凄くいやな予感がする。

 不意にズゥウゥウゥゥン……と重い音が響く。

 見ると建物に雪の巨人が突っ込んでいる。

 そこから紫色の稲妻のようなモノが走ると雪の巨人の体は音を立てて崩れ落ちた。

 そして、その稲妻のようなものが向かった先から雪が隆起し巨人の形を作る。

 つまりは雪の体は使い捨てで、倒すにはあの本体を叩かなければならないとのか……

 ズゥウゥウゥゥン

 今度は病院のほうから!

 老人ホームと病院、いったいどっちを……

 とりあえず手近な老人ホームの巨人を迎撃に向かう。

 拳や蹴りを加えても、打撃面の小さなわたしの攻撃では腕や足が雪にめり込むだけだ。

 ズゥウゥウゥゥン……

 また病院のほうから破壊音が聞こえる。

 そちらに気が取られた隙をとらえて、固い氷で覆われた重いこぶしがわたしに叩きつけられた。吹っ飛ばされたわたしは停めてあったセダンのフロントガラスをぶち破る。

「律儀なものね」

 ドアを開けて外に出ると上から声をかけられた。

 見上げると青木君を消し去ったあの日の衣装を身にまとった岩井戸が照明灯の上に爪先立ちで立っていた。腕にはボロボロになったシンハをぶら下げている。

「シンハ!」

 呼びかけに弱弱しく視線を向けるもののろくに体が動かせないようだ。

「ねぇシンハ、最近はこんなのが流行ってるって言うじゃない?」

 そういうと岩井戸はシンハを胸の高さまで持ち上げ、緑の風につつまれた反対の腕をシンハに近づける。

「ああぁぁあああぁぁぁぁあああぁぁあぁぁ………」

 風をまとった手のひらがシンハの体中を這い回り、シンハの毛をまるでプードルのように刈り上げてしまった。

「ふふふ、似合うわ、かわいいわよ。ねぇそうは思わない? ぼたんちゃん」

 そういってわたしへ向かってシンハを放り投げる。

 シンハを受け止めたそのとき、今度は少し遠くから激しい破壊音が響いてくる。

 サイレンやクラクションなども聞こえてきた。

「あ、あ……」

 いったいどこから手をつければいいの? わたしと赤木君だけじゃ手におえない……

「こっちを見なさい!」

 うろたえているわたしに岩井戸が声をかける。

「ふるさとがメチャメチャにされる気持ち……少しはわかってもらえたかしら?」

 左手で何かをもてあそびながら岩井戸が問いかけた。

「次に私が受けた苦痛は家族の死……確かお家、あっちのほうだったわよね?」

 そういってわたしの家のある方角を指差す。

「違う……やだ……止めて……」

 わたしの声を無視するように左手でもてあそんでいたものを右手に持ち替えて振りかぶる。その手が紫色に光る。

 文珠? ダデーナーの種か!

「やめてえぇぇええぇぇぇえええぇぇぇ!」

 わたしの叫びと、岩井戸がそれを投げるのは同時だった。

いわいとの目的のセリフに歴代プリキュアの目的をかぶせてみました。

歴代ってもちゃんと見てたのはハートキャッチから姫プリあたりまでですが。

言う人が変われば聞こえ方も違います。

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