8話 暴走のはて 1
クラシックカーレビューinたかはた
今年2020年はコロナで中止になりました
ちなみに今更ですが本作は2016年の設定です
「今日は来るかな、赤木君……」
「……うん……」
千代ちんの問いにそう答えはしたものの、わたしの脳裏には、彼の去り際のおびえきった顔が思い出された。
彼にとって、わたしがそのような恐怖の対象であるという事実がなぜか悲しくて、目の前の朝霧のようにどんよりとわたしの心に垂れ込めていた。
赤木君が姿を消して1ヶ月以上が過ぎた。
学校には怪我で自宅療養ということになっている。
同様に姿を消してしまった青木君は、シンハが化けてごまかしている。
もともと交友関係の希薄な二人のことゆえばれている様子はない。
今日は二年に一度のクラシックカーレビューの日。
昭和の町並みに古い車を展示して楽しもうという企画で、二年に一度とはいえ長い間続く恒例行事となっている。
会場は町中心部の商店街。夏祭りの傷跡も何とか癒えて、和やかなムードでお祭りの支度が進められている。
時刻は八時半。わたし、千代ちん、そして青木君に化けたシンハの三人は、夏に黄色い竜と戦った交差点のそば、十字屋文具店の前に備えられたベンチに腰掛けて、クラシックカーが係のおじさんに誘導されて並べられていく様子を眺めていた。
「これだけのお祭りならきっと岩井戸も赤木も現れるッハ。で、問題は現れた後のことだッハ……」
「ほんとに……戦わなきゃなんないの……赤木君とも……」
「……いずれはそうなるッハ……でも、今日のところは相手の出方次第だッハ……」
わたしの問いに、シンハがこちらへ顔を向けることなくさみしそうに答える。
「そう……」
何度もシンハに問いかけた質問、返ってきたのはまた同じ答え。
つぶやいて再び交差点に目をやると、あの、青竹ちょうちん祭りの日の記憶がよみがえる。
油断して、青い龍にかじられそうになったわたし。
あの日は、青木君たちの仕業だと思って怒ったものの、岩井戸の存在が明らかになった今となっては、羽山公園で真相を打ち明けられたときのような彼らに対する怒りや嫌悪感はすでに消えていた。
むしろ自分たちのシナリオが狂った中でも、あの強大な龍に向かってわたしを助けるために命がけで飛び込んでくれた赤木君に対して、感謝の念だけでは言いあらわせない何か別の……いや、これはたぶん、気のせい……だと思う……
「なにぼーっとしてんのぼたんちゃん! 今日のところはまず赤木君よりも岩井戸よ!」
千代ちんがこぶしを固め、鼻をふくらませながら言った。
前回の戦いで遅れをとった彼女は、岩井戸とその配下の狼型のダデーナーへの対抗心に燃えに燃えていた。足の怪我が癒えると、分身したシンハを相手に毎晩のように特訓を繰り返していた。
その訓練の打ち合わせを変身したシンハ相手に学校でするもんだから、青木君と千代ちんは付き合っているといううわさがまことしやかに広まっている。
「今日は町のみんなにミレニィサーカスを見せ付けてやるんだから」
千代ちんの特訓の課題は、空中での機動力の強化と火炎弾の誘導化。
千疋狼ならぬ千疋シンハ相手なら、攻撃をかわしきり、火炎弾を四割程度叩き込むことができるようになった。
「ミレニィサーカス」とはなにやら楽しそうなネーミングだが、かっこいい空中戦闘の演出のもじりだそうだ。
一方わたしはというと、防御の術をシンハから教わって練習を続けていた。というのも、このあいだのシンハの昔話に出てきた岩井戸の真空波から身を守るためだ。
技の名前は「パリッチャ」インドの言葉で盾を意味するらしいが……インドの人には悪いけどミレニィサーカスみたいに自分で名前をつけなくちゃと思う……
「やぁ早いな、君たち」
部長がリュックをぶら下げながら近づいてきた。
「おい、聞いたかい? なんでも最近未確認飛行物体、UFОが出るらしいぞ!」
「え? ホントですか?」
と、千代ちんが身を乗り出す。
「あぁ、何でもどこかの山の上のほうで光がジグザグに飛んだかと思うと、いくつかの小さな光の玉に分かれて消えるらしい!」
「へえぇ……」
そのやり取りに苦笑を禁じえないわたし。
どっからどー考えても特訓中のミレニィのことでしょ、というのは客観的に見ていたわたしだから思うことかもしれない。
とにもかくにもろくな打ち合わせもできずに、必ず何かが起きるであろう一日の幕が開けようとしていた。
パリッチャはインドの武術カラリパヤットで使われる盾の名前です
You Tubeでカラリパヤットで検索すると出てきます
シンハがあっちにいた頃からこの名前かは不明です
ミレニィサーカスは板野サーカスから
評価0のコレがアニメ化は見果てぬ夢ですが
せめて脳内では予算潤沢な幸せな夢が見たいのです
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