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5話 ウソの味 2

「いえーぃ、アメちゃんゲーット!」

 体を真っ赤に塗って赤鬼に扮したおじさんが沿道へと向けて投げたあめ玉を、千代ちんは幸運にもつかみ取った。

 夜のとばりが落ち、真っ赤なちょうちんに火がともった。

 御仮屋の祭りのおみこしパレードの始まりだ。

 商工会、建設組合、わかわしスポ小バレーなどなど、例年六、七台のおみこしが商店街を練り歩く。

 いつのころからは知らないが、縁結び通りと、まほろば通りの交わる交差点で、モチやら、アメやら、ビーチボールやらをまくようになった。

 千代ちんが手にしたそのアメは、商工会青年部のおじさんが投げたモノだった。

「なにかご利益あるのかな?」

 千代ちんが手にしたアメをわたしに見せながらうれしそうにいった。

「さぁ?」

 そっけなく返事したのは、シンハがふみつぶされないよう両手で抱き上げているため、アメの争奪戦に参加できなかったからではない……決してない。

 そうこうしているうちに、青い龍のおみこしが交差点へと現れた。

「泣いた赤おに」とならぶ浜田広介のもう一つの代表作「りゅうの目のなみだ」の龍を模したおみこしだ。

 役場男性職員の手によって中華街の蛇踊りのような演舞を見せ、観客の歓声を受ける。

 ひとしきり演舞が終わり、龍がまほろば通りに流れていこうとしているとき、とつぜん場違いな悲鳴が上がった。

 悲鳴の主は、龍のおみこしに随伴してきた、黄色い龍のずんぐりむっくりした張りぼての着ぐるみ、いや、着ぐるみの後ろで尻もちをついているおじさんだ。

 着ぐるみは不気味な光を放ちながら、むくむくとその大きさを増し、

「ダデーナーーーー!」

 と、大きく叫び声を上げた。

「来たッハ!」

「ぼたんちゃん!」

「うん!」

 わたしたちは顔を見合わせると人目につかなそうな四ツ角にある三郎薬局のかげへと駆け込んだ。

 と同時に、黄色い龍の変化に気がついた人々の悲鳴が聞こえてくる。

「いそぐッハ!」

 シンハが如意宝珠をよこす。

『オン・チンターマニ・ソワカ!』

 二人は声をハモらせてラクシュミへと変身した。

「行かなきゃ!」

 と、かけ出そうとするわたしの肩をミレニィがつかんで引き止める。

「どうしたのよ?」

 と、ふりむくわたしに、ミレニィは人差し指で上を指す。

「どうせなら、派手に行かなきゃ」

 そういうと彼女はわたしの返事も待たずに三郎薬局の屋上へと跳びあがった。

「ん、もう!」

 わたしも後を追う。

 屋上へと降り立つとすでにミレニィは交差点を見下ろしている。

 小走りで近寄ってミレニィの後ろに立った瞬間、彼女は大きな声で

「そこまでよ!」

 と、叫んだ。

 黄色の龍と御祭りの観客がいっせいに彼女に視線を集める。

「まほろばの大地に千年の安らぎを、ラクシュ・ミレニィ!」

 そういうと彼女は見得を切った。

 そして、あんたも早くやんなさいよ、といわんばかりに目くばせしてくる。

 心の準備も何も出来ていないわたしはアタマが真っ白になって、

「ピ、ピピピピオニィ!」

 と、噛みながら、それらしいポーズをとるのが精一杯だった。

「楽しいお祭りをメチャクチャにしようなんて許せない! 行くわよピオニィ!」

 そういうとミレニィは黄色い龍めがけて飛び降りた。すぐにわたしも後を追う。

「づあぁあぁ!」

 ミレニィのキックが龍の鼻面へと突き刺さる。

「はぁあぁあ!」

 衝撃で下がった龍のあごを、目の前に着地し沈み込んだわたしが、伸びあがりざまに掌底で突き上げる。

 黄色の龍は信号機の高さまでその体が跳ね上げられ、受身もとれずに地面へと激突した。

 背中合わせで龍の挙動を警戒するわたしたちに、歓声と、拍手と、カメラのシャッターがいっせいに浴びせられた。

 黄色い龍は片手をつきながらゆっくりと立ち上がろうとする。

「あたしは胸から上、ピオニィは腰から下よろしくね」

 そういうと、ミレニィは背中の羽を使ってわたしの背中をなで上げる。

「わ、わかった」

 ぞくりとするその感触に、彼女が何をしようとしているのか理解する。

「ゴウ!」

 黄色の龍が立ち上がり、わたしたちに向かって威嚇の声を上げた。

 その声がまさにゴーサインだった。

 二人同時にとび出すと、龍に向かって連続攻撃を叩き込む。

 空を飛べるミレニィは、約2メートルほど浮いて連続で回るようにキックを、わたしは地に足をつけてパンチやひじを叩きいれる。

 龍は必死にガードしようとするがとても手が足りない。

 じりっ、じりっと後ろに下がっていく。

 すごい……

 この前は千代ちんまでひどい目にあうんじゃないかって不安に思ってた。

 でも違った。

 なんだか体が軽い。

 一緒に戦う仲間ができたっていう気持ちがそうさせているのかな。

 やられる気なんてまるでしない。

 二人いるってサイコー!

 なんだか、もう何も怖くない。そんな気がする。

「づあぁ!」

 ミレニィがひときわ強く黄色い龍の頭を蹴りつけた。

「うりゃぁ!」

 バランスをくずした龍を思いっきり蹴り上げる。

 龍はまるで風車のようにぐるぐると回転し、頭から地面に激突すると痙攣した。

「いまよ! ピオニィ!」

 ミレニィの声に、わたしは龍から5メートルほど間合いを取ると、トゥインクルロッドを取り出す。

 くるくると舞を舞うようにしながら空中に魔方陣を描くと、しだいに力がみなぎってくる。

「ようし! 気力充実! ラクシュミー・トゥインクル・ファウンテン!」

 わたしがロッドを振りかざすと、輝く光の奔流が黄色い龍に向かって降り注いだ。

「ダ、ダデェエェェエェェェエェエエナァァァァァアアアアアアァァー…………」

 黄色の龍が絶叫を上げ、その体から力が急速に抜けていくように感じられた。

 ほっ、としたその時、視界の端で何かが動くのを感じた。

 ふと目をやると、そこには役場の職員が操っていた青い龍がなぜか空中に浮かんでいて、その大きな、いや巨大な口がわたしの眼前にせまっていた。

赤おにが飴をまき始めたのは2000年代はじめごろ。

建設組合が餅をまいてるのをパクって、ないた赤おにの「オイシイ オカシモ ゴザイマス」のセリフにちなんで初めたため特に御利益はないと思います。

なんでそんなわかったようなこと言うかって?

それは赤おにのパフォーマンスを始めたのが作者だからです(笑)

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