独白。
わたしは、属性の違う父と母の間に生まれた子供の精霊だった。
父の属性が濃く出たために、わたしが産まれるときに母の存在を危うくしてしまったらしく、父に何とは無く疎まれて育った。住む世界の違う母とはふれあうことはなかった。
水の満ちた宮殿で、私はいつもひとり貝殻で遊び日を過ごした。
父と母の属性をちょうどよく継いだ弟が産まれたため、両親はそちらに関心を移してわたしを省みることはなかった。
母の元で育てられる弟は、すくすくと育っていた。通信鏡から見える景色はわたしの心を蝕んだ。
だけどわたしも、鏡越しにしか会えない母にうまく甘えることもできず、ただ愛想笑いしかできなかったので自業自得だろうと思う。
気がつけば、わたしは言葉を失っていた。いや。もともと持っていなかったのかもしれない。
息を潜めるようにして暮らした。子供時代を終え成霊するときも、わたしはひとりっきりだった。しばらくして久しぶりに顔を見た父が、「そなた、成霊となったか」と尋ねたときも?黙って頷いた。父は少し焦ったように、「何か祝いの品を贈らねばな」と言った。それきりだった。わたしはまた、忘れられたのだ。
さすがに哀しくて、わたしは無謀な賭けに出た。
水の精霊の力を振り絞り、道を開き、風の宮殿に母に会いに行ったのだ。
折しも、風の宮殿は弟の成霊を控えて準備に大賑わいだった。母は弟を抱きしめ、弟はにこにこと母を抱き返した。父が現れ、そんな二人の肩を抱いた。幸せな親子像が、そこにはあった。私のはいる隙間は、そこにはなかった。
わたしは全ての力を使い切り、意識を失った。
空の上で支えが消え、わたしは落下し、海に揉まれ、浜に打ち上げられた。
もうどうなってもよかった。
このまま消えてしまいたかったのだ。
だけどそこで、わたしは彼等に巡り合った。
日に向かって咲く花のような友、エイラン。彼女を支えるロウ。そして、リュウ。
彼等はわたしを包み込み、癒してくれた。ただひたすらに愛してくれた。
恋に、落ちないわけがなかったのだ。
エイランには辛い思いをさせて本当に申し訳なかった。このまま消えようと思った。だけど。
だけど、リュウは、わたしを助けてくれた。愛してくれた。選んで、くれた。
だから、わたしはこれからの生命をすべて彼に捧げようと思う。
ありがとう、リュウ。