第13章
最後に、良い事をするんだ。僕は、貯金を降ろせるだけ降ろして、古い友人に偽鑑定をお願いしたんだ。
まるで、大判小判を掘り当てたように偽装して。自分の貯金だと知らせないように工夫した。別に、僕の貯金をそのまま振り込んでも良かったんだけど。注目されたかったんだよ。そして一番重要だったのはテレビの取材を受ける事さ。そこで僕は言うんだ。
「妻が恵まれない子たちのために使おうと言っていたので、寄付をしたい。」
って。僕の妻はいい人なんだよ・・・って。世界に発信したかった。
僕の妻は、良い人なんだよって。
本当は、良い人なんだよって。
多恵は全部里枝のために使いましょうって言ってたけどな・・・。
もちろん、全部寄付したよ。僕は、最後に良い事したんだ。だから、後は悪い事してもいいよね?
最初は、しろだ。
君に預けて・・・多恵に刺激の無いように殺した。・・・うん。怒られて当然だ。代わりに沙世ちゃんに刺激与えちゃったもんねー。うん、本当御免。今そのショックで多恵が普通になったら・・・殺しづらくなるかなぁと思って。ははは、そう大きな声出すなよ。頭が痛い・・・。
大丈夫。ちゃんと、最後まで喋るから。
しろを殺してから、すぐ君の家から飛び出て・・・家に帰ろうとした。そしたらさ、君が家に入って行くもんだからビックリ。ずーとベランダで機会を伺ってたんだけど。
君と話している時は、多恵比較的普通だったなぁ。僕と話してる時はもっとひどいのにさぁ。やっぱり昔の友達と話すときは違うのかねぇ。
・・・そうか。君からしたらあれでも結構変だったか。僕も結構感覚が狂ってるみたいだね。
そして、君が帰ってすぐ僕は家に帰った。そしたら多恵は君の事なんて忘れてたよ?
「里枝はどうだった?里枝、元気にしてた?里枝に、逢わせて。何で私には逢わせてくれないの。ねぇ、里枝!」
「・・・僕は、朔也だよ多恵。」
「どうでもいいわ!里枝、里枝を出してよ。ほら、ほらぁ!里枝、里枝は?里枝・・・。」
ってずーっと言ってたよ。だから・・・君に飲ませてたのかな?そこら辺に合ったお茶に、ずっと前から用意してた眠るようにすぐ死ねる薬を入れて。
「落ち着きなよ。話はお茶を飲んでからだ。」
と言って渡した。多恵は渋々といった具合で飲んですぐに喋ろうとした。
「里枝っ・・・・・里・・・・・」
最後の言葉は、それだけだったよ。結局多恵は、里枝しか見てなかった。本当は、僕もその薬で死のうと思ってたんだ。
でもさ。思ったんだ。僕はもうちょっと痛い思いして死ななきゃいけないって。
だからね。死のうと思うんだけど。君、見届けてくれないかな。僕らはそんなに親しくなかったけれども。僕らは同じ女に縛られてただろ。だからさ。松下君。
僕の死の理由を、誰かに知って欲しかったんだよ。
すぐ警察は僕の嘘に気付くだろうし・・・。君だけには、何でこんなことしたか知って欲しかったんだよ。
だから、松下君。止めないでくれ。僕は、天国に行けないから。天国へ行ったら多恵を慰めてくれよ。」
長い長い、桜井朔也の独白がやっと終わった。
俺はその間に立ってるのがきつくなって座ったり、あぐらかいてたのにもかかわらず足がしびれたので呻いたりしながら聞いていたが。俺はまだこれが現実の事だと信じられなかった。しろが死んだ時からずっと。どこかでこれは夢なんじゃないかなぁーって考えていた。
だからかもしれない。
俺は、止めなくて。
ジジィは敏捷な動きで木に登って。
俺は、止めなくて。
ジジィはてっぺん辺りで微笑んで。
俺は、止めなくて。
ジジィは「この桜井朔也!魂は死せども、肉体は花咲かせてやりやしょう!」と叫んで。
俺は、「冗談だろ・・・。」と言ったきり。止めないで。
ジジィは勢いよく頭から、地面へ飛び込んだ。
俺は、落ちてくる朔也が怖くて、避けた。
ジジィは避けた俺を見て微笑んだような気がした。
ああそして。そして。
俺の真横で桜井朔也は花になった。いいや、違う。花を咲かせた。
ジジィは真っ赤な花を咲かせた。
俺は、その隣で花びらを受け止めた。
真っ赤な真っ赤な花を咲かせたジジィの横で、立ち尽くしていた。




