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そこはどことも知れぬ塔の中。
びょうびょうと黒い風の鳴く夜に、おかしな格好の二人が、一人は椅子に座って、一人は窓辺に立って外の暗がりを眺めていた。
座っている一人は肩を怪我しており、自分で包帯を巻いて処置している。その作業が痛むのか、時折小さく呻く。
「これを飲むといい」
窓辺の一人が、椅子の男に近づいて丸い粒を手渡した。
「痛み止めだ」
「ありがと。あーもー、しくじったなあ」
男は、リアルな野兎のマスクの下に手を差し入れ、丸薬を口の中に放り込む。
もう一人の男は、白と黒のチェック柄のシルクハットのつばをちょいとつまんで上げた。
「だが目的は達成できたのだろう?」
「もちろんっ。ここに」
ウサギ男は鞄から一冊のファイルを取り出し、得意げに掲げてみせる。
「虱潰しにやってみよう。一つでも解ければもうけものだ」
「うむ。卵を割らなければオムレツは作れないのだからな」
「そのことわざ好きだよね。――そういえば、君が話してくれた金髪の子には結局会えなかったよ。魔術の効かない男には会ったけど」
「それは残念だったな」
「ううん、近いうちに時は来るだろうから」
マスクの下で、ウサギ男は愉快に笑う。
「僕の可愛い弟子も。再会の日まで、死なないことを祈るよ」
3章終了。




