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水着

 夏の陽射しが強くなり始めた頃、クレアは俺にこう言った。

「暑いね」

 そう言ってパタパタとスカートに風を入れて風を取り込もうとするクレアのチラチラと覗くふとももに目を取られながら、俺はそうだねと適当な返事をする。


「……で……よね?」

「あ、ああ。うん、そうだね」

「……しょ!……?……」

「うん、うん、そうそう」

 正直、俺はクレアが何を言っているのか全く覚えていない。うんうんと生返事をした事だけは覚えている。それだけ、クレアのスカートパタパタのふとももは魅力的だったんだ。


 その日の午後、ごちゃんの連中が訳の解らない事で盛り上がっていた。

『イベント発生するかな ゼウス』

『お約束だしな。しってるか?このイベントは十八歳以下でも大丈夫なんだぜ? カラス』

『確かに、水着幼女なおまけがあったりするよな。来年になると直接的になるだろうから、これは期待できる ミスリル』

『なあ、クレアのふとももが頭にこびりついて離れないんだがどうすればいい? 悪役令嬢』

 俺はスレの流れをガン無視するくらい、昼間に見たクレアのふとももに思考の半分以上のリソースを費やし、脳内再生していた。絶対記憶を手に入れる前だったのが口惜しい。


 その後、俺はクレアのふとももを脳内再生しながら、大人しく眠りにつく。

 そして、目がさめると……。

「おはよう、ネトア!」

 俺の前にクレアが居た。脳内再生しながら眠ったのが良かったのか、クレアが側に居た。

 真っ白のワンピースで、白い帽子。お嬢様ルックなクレアは、さあ出して、と前の席に向かって言う。

 これは俺の夢。つまりこのクレアのふとももは俺の物だ。

 眠気で鈍っている頭ながらも、俺は最適解をはじき出した。

「お休み」

 夢のクレアに声をかけ、ふとももに顔を埋め眠った。


 どれくらい眠ったんだろうか。

 次に目が覚めた時、クレアがついたよ、と俺を揺すり始めた。

 ついた?どこへ……。


 そして、身体を起こすと、砂浜と綺麗な青色。

 海だった。


「え、何で海……?」

「何でって、ネトア。昨日一緒に行こうって約束したじゃない。眠たそうにしてたからそのまま車にのせて連れて来たよ?」

 意味が解らない。今日は確かに休日だ。水着の準備を何もしてないけど、どうするんだよ。

「ネトアお嬢様。お嬢様の水着は私がお持ちしました」

 侍女のマリエが水着を持って付いてきていた。

 どうやら、俺とクレア、運転できる俺の侍女のマリエで車にのって海に来たようだ。

「やっと付いたな、剣を使う泳法なら任せてくれ」

「ネトア、おはよーっ」

 アロワ、ラレア、それにクレアの侍女がもう一台の車に乗ってやってきていた。

 剣を使う泳法って、錆びるだろ絶対……。


「ネトア、水着に着替えて泳ごうか」

 そういうクレアの後ろをついて歩き、ふと気付く。

「マリエ、水着」

 はい、ネトアお嬢様、とマリエから水着が手渡される。

「ありが……ん?」

 何だこれ……。


 やたらと布地が少ない紐の付いた布切れが三つのピースで手渡される。

 俺はその布切れを手に取って考えこむ。


 まず上だが、同じ形になっているこの二枚の布。これが胸を隠すんだろうと思われる。

 直系五センチくらいで三角形の布。

 紐とS字の金具が付いていた。このS字とS字を絡めて留めると思われる。


 上下左右全部はみ出る事前提で、胸の先しか隠れないであろう布だった。


 それは、いい。

 いや、本当は良くないが、それはまだいい。

 問題は下だった。

 『▼』なら、ああ下に履くんだなと感覚的に解るが、『V』だった。

 はてなマークを浮かべる俺に、マリエが自分の服の上に当てて見せた。

「こう使います」

 これきちんと毛の処理をしないと着れな……。いや、処理するともっと直接的に危ない水着に。


 いや、マリエの使い方が間違ってるだけかもしれない。

 水着じゃないだろこれ……。


 ごちゃんに書き込んでみる。

『どう使うと思う? 悪役令嬢』


『▲ー▲ ゼウス』

『 V  カミカ』

『完成 名無し』


 予想通りだった。

 悩む俺に、早く行こうと俺を引っ張るクレア。

「クレアの水着ってどんなの?」

「私?これ」 

 クレアがワンピースの水着を出す。ピンクに近い赤色で、腰回りに無駄フリルがあり、可愛らしいデザインだった。

「私はこれだな」

 聞かれてもないのに、ラレアは競泳で着るような水着を出す。黄色い競泳水着に近いワンピースタイプの水着だった。

「僕のはこれだよ」

 アロワもワンピースタイプの水着だった。

 海パン一枚で歩きまわるよりは目のやり場があるけど、と納得する。

「マリエ、他の水着は?」

「ありません、それだけです」

「……ふうん、マリエの水着はどんなの?」

「私はこれですが?」

 マリエの水着は無難なサイズの調整がきくセパレートタイプの物だった。


 ああ、良かった。似た体格で本当に良かった。

 マリエから水着を奪い取り、危ない水着を手に取ったマリエは、ぶつぶつと呟きながら座り込んだ。


『付けてあげればいいのに。ほら、侍女さんが可哀想だよ カミカ』

『具現化で出せば良かったんじゃないの? 名無し』

 具現化……忘れてたわ。

 紐のようなマイクロビキニを手に持ち、せっかく海に来たのに。こんなの着れない、と泣くマリエ。

 自分で着れないと思う水着を人に着せようとすんな……。

 しかしさめざめとガン泣きするマリエに少しばかり罪悪感が湧いてくる。

『そろそろ水着を出してあげたら? カミカ』

『反省したら水着を出す……が、場合によっては俺があれを着てたんだからな? 悪役令嬢』

読んで頂きありがとうございました。

水着回は必須ですよね?

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