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転生ライフオンライン〜ネタ枠種族の『ハードエルフ』はチュートリアルからハードモード。  作者: 末廣刈 冨士一
転章 このチュートリアルに万感を込めて。
51/56

ちょっと長めのエピローグ。


サブタイ見ての通りです。


察して下さいm(_ _)m


《 ここは冒険者ギルド エコノス支部。 》



「はい。これが今回の報酬となります。」


 受付嬢さんが素晴らしく愛想の良い笑顔で手渡す報酬を、少し失礼かなって思いつつ…

 

「あ。ハイ。有難うございます。」


 僕は片手で受け取った。でも仕方がない。僕には左腕しかないのだから。つまり右腕がない。僕は隻腕だ。


 恐縮しながら受け取ったその報酬は、銀貨数枚…。

 …あの笑顔を添えてもらうには、ささやか過ぎる金額だ。


『独り立ちしたら、冒険者になって世界中を冒険したいっ!』


 そんな夢を語り、父さんには猛反対され、村の人達には笑われ、それでもと逆境を何とか覆して紆余曲折。

 念願かなって今、僕は冒険者をしてるわけなんだけど…この仕事は想像以上に甘くなかった。


 でも、その数枚を握り込む僕の手は今、震えている。

 そう…やっと、やっとだ。


(つ、ついに……ィヤッフーーーー♪!)


 ……目標の金額に、到達したっ。


「なんだか…凄く嬉しそうですね。何かいい事ありました?」


 オット。いけないいけない。

 ここは荒くれ共が集う冒険者ギルドなんだから。

 誰が見てるか分からないんだから。

 ポーカーフェイスを通さなきゃなんだから。

 なんせこれから大金を動かすんだから。


「いえ、あの、今まで預けておいたお金を、その、引き出したいんですけど…全部。」


 いよいよだ。


(でもやっぱり大金持ち出すのって落ち着かないな〜…。)


 とか思いながら僕がキョロキョロ周りの目を気にしていると


「フフ。駄目ですよそれじゃ。逆に目立っちゃいます。ドーンと構えてスーンと平静を装わないと。」


 いや受付嬢さん?ドーンは馴染みあるけどスーンはね、チョット変。……っていやいや流石はギルド職員さんだ。僕の雰囲気から全部察してその上気遣いまでしてくれて…流石だ。


(でもまあ、こんなトコで働いてたらそうもなるか。)


 屋内に差し込む光を薄い紫にモヤらす、煙草の煙。

 充満している。目が痛い。

 その痛いのを我慢して周りを見渡す。

 この受付を背後に正面を見ればカウンター式のバーがあるんだけどそこには…。


 「ヒャッハーー!」


 とか言いながら、隣の席同士で座ったままの殴り合い(?)を楽しんでいる(?)謎な熱血系(?)の人達がいれば、


 そのすぐ隣で独り静か…ニヒルな感じでお酒を嗜む一匹狼風な人がいたりして……いやよくそんな落ち着いて飲んでられるな?


 その人をそのまた隣からジッと睨みつけてるあの女冒険者さんなんかは…あれってもしかしての求愛行動なのか?獣属の魔物もかくやってゆー眼をしておりますが。怖いですな。肉食系女子。


 …っておい!そのまたすぐ隣の人!その女冒険者さんのお尻撫で回してる?しかもグラス片手にカッコ付けながらっ。なにその「フ…ッ」とか言ってそうなクール顔っ?いや顔と手な?一致しないにも程があるぞソレっ!?

 ……あの女冒険者さんは…ありゃ。気付かないんだ?多分酒が回りすぎて皮膚感覚鈍ってんだろーな。アレ。…誰か注意しろよ。アレ。 


(…まあ僕はしないけど。)


 『注意しない』と言えば…入り口付近にあるテーブルでカードゲームを楽しんでる人達がいるんだけどさ…。

 あの男の人…後頭部がなんか変…髪の毛の中にカード忍ばせててしかも凄いはみ出てるんだよね。そんな大量に忍ばせてりゃそらはみ出るってっ。いやいやテーブルに座ってる人には見えてないかもだけど、その周りからは丸見えですからねソレ?つか誰も注意しないんだ?


(…まあ僕もしないけど。)


 …つか、みんな見えてないのかなアレ。

 いや見えてる。つかめっちゃ見てる。あのイカサマ師めっちゃ見られてる。

 あの人気を付けないと…どう見ても、裏通りとかで逆に鴨られたりするパターンだよなアレ?『よーう見てたぜ?俺にもさ。お溢れをくれよぉ。なあ?ギャハハハハ!』的なアレで。


(まあやっぱり僕は注意しないんだけど。)


 「あの……」


(ホント、クセの強い荒くればっかだよな。ギルドって場所は。怖い怖い。僕も用心しなきゃ。特に今日みたいな日は…)


「あのー…」


「おい。」え?


 うわ。これまた典型的人相の人に絡まれちゃったんだけど…スミマセン誰か注意して下さいこの人怖いんです。背負う大剣の柄がめっちゃ曲がってます。振れないでしょそれ? 


「受付の嬢ちゃんが呼んでんじゃねーか。早く用事済ませろや若造。後ろで待ってるモンの迷惑ってもんを考えろ。この浮かれが。」


(あ、ああ。そういう事か。)


「どうもスミマセン…」


 随分と早くお金用意したもんだな…とか思いながらもバツ悪そうにして僕が後ろへと振り返ると、そこには受付嬢さんの困り顔があった。


 彼女の手元に視線を移すと、金貨銀貨が入った詰め袋はなかった。手に持っていたのは……『魔石』だ。


「え…あの、お金は…」


 状況が分からないのでとりあえず聞いてみる。


「いえ、あ、あの、ももしや……あ、あの『装具師さん』の所に行かれるのでは?…と、思いまして。いえ違ってたらゴメンナサイっ!」


 受付嬢さんは遠慮がちに僕の右腕(…があった場所)を指差し、やはり遠慮がちに…というか挙動不審にそう聞いてきた。


 ん?なんでそんなオドオドしてんだ?『ドーン』と『スーン』はどこ行った?


(まあでも、女の子には優しくしなきゃな。)


 昔、幼馴染みの女の子と大喧嘩をして泣かせてしまった事がある。これはその時に得た教訓だ。


「あ〜その『装具師さん』っていうのは、『乾坤一擲』って武具屋に居る装具師さんのことですか?もしそうなら…ハイ。その通りです。僕の右腕は…見ての通りなので」


「やはり、そうですか。……事前に知れて良かったです。本当に…。あ、あの、既にあそこで義手を注文されてる訳なんですよね?」


「え?ハイ…そうですけど…」


「あ。不躾に聞いてスミマセン。口座から全額引き落としを希望されていたので、多分そうなんじゃないかなと思いまして…。

 その…あの方が造る『義肢』は完全オーダーメイドで高額なのですが………そう。あの方が造られる義肢は凄すぎるんです。その高値に倍する以上の価値があると言われています。だから物凄く人気なんです…けど…あの『装具師さん』は誰にでも造る訳ではなくてですね……その〜人を選びますのでそのう……義肢を強奪して…転売しようとする卑劣な人がいたりしまして……」


 なんだか恐る恐る言葉を選んで話す受付嬢さん。でもそれがかえってアダとなって要領を得ない。

 辛抱強く聞いたところ、どうやらかの『装具師さん』の作品を使用している人達が、その義肢を強奪されるという事件が頻発した事があったんだそうだ。

 その強奪を繰り返していたのが、なんと冒険者中心の悪党グループだったんだそうで、業を煮やしていた『装具師さん』はその噂を聞いた瞬間、遂に怒りを爆発させた。


 彼は既に潜伏しつつあった悪党冒険者どもをどうやってなのか、すんなりと見つけ出し、証拠も揃えないで当たり前のようにコテンパンにのしたあと、何の説明もなくそいつらを騎士団詰め所に放り込んだ挙げ句、それで終わりにはせず、その狼藉を許してしまった責任を追求するべくここ、冒険者ギルドエコノス支部にまで殴り込み、ちぎっては投げちぎっては投げの大乱闘を繰り広げたののちに…なんとここの最高責任者であるギルド支部長に詰め寄って、特別な便宜をはかる事をねじこんみさらに、事件の被害者達に相応の慰謝料を払う事まで約束させ、しかも大暴れしたはずの『装具師さん』はそのまま無罪放免とさせてしまったんだそうだ。無茶苦茶だ。そんなこんなで今や危機管理として、支払いなどは僕の口座から直接『装具師さん』の口座へ送金という形をとるのが原則なんだとか。


(そうなんだ。良かった…全額引き落とす前に教えてもらえて。つかさ、『えー〜〜?』だよ。あの人、そんな怖い人だったの…………………よし…、僕も今後気をつけよう。)


 そしてギルドが取り計らってくれるという『便宜』の内容についてなんだけど…


 詳しくは省略するけど、とにかく面倒な手続きが必要だ。


 技術的には、ギルド公認の識別番号を魔力刻印した魔石が使用されたり、『装具師さん』の錬金技術でその魔石に僕の魔力波長を馴染まさせたり、それを粉末化し、僕の血を混ぜそこからさらにまた錬金の技術で【抽出】することにより魔力的に純度が増し液状化したそれを材料に、『装具師さん』の【紋章術】で義肢に刻印したり…。


 こうすることで、僕以外にその『義肢』を使うことは出来なくなるのだそうだ。まあ、使えなくなるとは言っても……

 使えない義肢でも…使われている素材が高価な物なのだから、盗もうとする輩が現れる可能性は結局残る。


(ホント、巷は物騒だなー。)


 そのために、ギルド公認の識別番号入り魔石を使ってるんだそうだ。

 ギルド公認の識別番号と僕の魔力波長が登録されて更に僕の血を混ぜたあの『液体』をインク代わりに使って書類にサインをする。

 僕とギルド支部長と『装具師さん』の3者がサインが必要だ。それをを3枚用意。あとは各人各所が保管する。という流れ。

 そうしておけば、もし盗まれた際にはギルドにしかない『ギルド識別番号解析魔導具』で書類のサインを解析する事が出来る。そして同時に検出される僕の情報をもとに、これまたギルドにしかない『広範囲探知魔導具』を使って義肢の在り処を特定、地の果てまで追う事が出来るように…なるんだとか。


(まあ見つけ出すまでに解体とかされてたらアウトらしんだけど。)


 本来このような措置を取るのは、『伝説級』と呼ばれるアイテムの場合だけで、しかもやるとなれば結構な手数料を請求される。だというのに、僕らは特別に無料でそのサービスを受けられるらしい。

 しかもこんな、ギルドにとって面倒でしかない手続きを受け付けてもらえるのは普通、特級冒険者以上の者だけだ。

 身体のどこかを欠損し、事実上その身分にまで昇格がほぼ不可能となってしまった冒険者をそこまで優遇する事なんてことは、本当はありえない事なんだ。『装具師さん』はそれをねじこんだ。正直、聞いてて爽快な気分だった。


しかも、この3枚の書類を作成する際には、ギルドから特別に凄腕職員さんを護衛に付けてもらえるんだとか。

 …確かに。この書類を作成するためには、ギルドと『装具師さん』の間を何回か往復しなきゃならない。その間に紛失したり盗まれでもしたら面倒だ。

 因みにもし、その書類を失くしたら?銀貨5枚の罰金を支払った上で、前に作成した書類を無効化するための書類まで作成し、その無効化の為だけに往復してからのやり直し……という、ただでさえ面倒な手続きが更に倍以上の面倒になってしまう。う…面倒だ確かに面倒っ。

 

「よくもまあ…こんな無茶が通りましたね…それにこんな込み入った事を……あの人、()()()()から打ち合わせとか大変だったでしょうに…」


 そう言って僕が受付嬢さんを見ると。


 ブルブルブルブルブルブル…っ!


 …めっちゃ首を横に振っていた。


『いえ!いえいえいえ!そんなこと滅相も御座いませんっ!』て感じを必死で表現しようとしている…のか?


 いやいや、そこまで首振ると逆に『拒絶』を感じてしまうんですが?


(…一体あの人ギルド職員さん達にどんなトラウマ植え付けてんだよ全く………………………よし………僕も今後気をつけよう。)


 そう思いながら僕は、机に置かれていた魔石を手に取った。

 それを見た受付嬢さんは、この面倒な手続きに必要な諸々の決裁をもらう為なのか、飛ぶ勢いで支部長の元に行き、これまた疾風の如き速さで僕を護衛するのであろう凄腕ギルド職員を連れ戻ってきた。 


(つか普通、ギルド支部長って忙しいんじゃないの?)


『なにい?あの『装具師』の案件だとおお?は、早く!早くその書類を寄越せ!ああ早くしないと!早く対応しないと!またあいつが…あいつが……この部屋に来るっ!また来てしまうぅっ!』


 とかなんとか言いながら慌てふためいて手配するギルド支部長の姿を、勝手に想像してクツクツと笑いながら、


(ホント、爽快だ。)


 僕は護衛についてくれた凄腕ギルド職員さんを連れ立って、その場を後にした。









スミマセンm(_ _)m


エピローグなのにサクッと終わらず次話に続いちゃう展開です。ま、まあ、プロローグもそうだったし?この物語の仕様だと考えればこれはこれで……


スミマセンm(_ _)m


でででもっ、

今話と次話に登場させたキャラ達は全て第二部でも登場してきます。一応、その、無駄では?うん。ありませんので……。


今後もジンを宜しくお願い申し上げます。



 さて!

 少年は伝説の義肢装具士と運命の出会いを果たす。

 果たしてそこに希望はあるのか。

 隻腕というその不遇を跳ね返す活路を見いだせるのか?



 次回。

 『エピローグ。懲りずの続。』


  乞うご期待♪





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