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転生ライフオンライン〜ネタ枠種族の『ハードエルフ』はチュートリアルからハードモード。  作者: 末廣刈 冨士一
転章 このチュートリアルに万感を込めて。
52/56

エピローグ。懲りずの続。


第一部、堂々の完結?



「あの……入らないんですか?」


(うるさいなっ何度来ても緊張するんだよここはー。)


 せっつく凄腕職員さんに心中で悪態をつきつつ…意を決して、ドアノブに手を掛ける。


「こんちわー…」


 そして僕は、件の武具屋、『乾坤一擲』の扉を開けた。

 頭上で『コッコロン』

 …軽快な音が鳴る。

 この無骨極まりない店舗には決して似合わない音だ。


 扉の上部に据え付けられた魔物の牙製の鳴子が鳴ったんだろう。

 この何気ない感じで使われている牙がグレートワイバーンのものであるのは知る人ぞ知るというやつだ。


 アレは『この程度の素材はうちの店じゃぁ、屑程の値打ちもねえんだぜ?』っていう挑発なんだ…とか、勝手な勘違いをして畏怖している冒険者もいるようだけど。


 僕には一流の職人がそんなふうに素材を無駄にするとは、思えない。


 僕の目にはあの鳴子が、天才鍛冶師の異才の顕れに思えて仕方がない。


『一流なるを良しとしない孤高なる逸流(いつりゅう)』


 その証明であるように何故か思えてしまって仕方がなかった。だからなのかな。何度来てもここは敷居が高く感じてしまう。僕みたいなヘタレは特に萎縮してしまう。


(てゆーか職員さん入ってこねーじゃん。裏切ったな……きっとあの人も怖いんだなこの店が。一応、凄腕とか言われてるくせに…)



「ぇらっっしぇーぃ…」



(出た。『いらっしゃいませ感ゼロ』攻撃。そしてこの重低音。肚に響くんだよコレ。)


 それほど広い店ではない。というか狭い。そんな空間に、触れるのもこわいと思ってしまうような業物の高級武具達が無造作に、しかも所狭しと飾られている。なので緊張感が更にと追加されてしまう。


「え、そあ…そ、そそ装具」


 なので僕は噛んだ。

 噛んだのが分からないくらい、出だしの部分で即噛みした。


「なんじゃいはよ言えや若ぇモンが覇気のない」


 このドワーフの親父さんがまた怖い。


 ドワーフらしい巨大でイカツイその顔に、『わざわざ顔面で受け止めに行ったの?』ってくらいに魔物の爪跡が縦横無尽、刻まれている。

 そのえぐれた箇所を避けて膨大な量の髭が無理やりに生えてるもんだから、コワモテ感が数段上の仕上がりになってしまっている。


 背は160…くらいかな。でも横幅が盛り上がる筋肉で凄いことになっているので、その体躯が放つ威圧感は人外の域に達している。これはもう、人間と言うより、『小型の山』だ。

 この人の名前はガラハッド。姓は知らない。この武具店の店主であり、鍛冶師だ…


(…おっといつまでも気遅れしてないで、ちゃんと要件を伝えなきゃ…)


「あ、あの、お金っ!持って来ましたっ!」


(あーもう!緊張して会話の順序がおかしくなっとるやん!)


「あん?なんじゃいワシに用じゃないんか待っとれや」


 おや?あれだけでも僕の言いたい事は伝わったようだ。


(さすが職人。無駄がない…)


 それにあの、ゆっくりとしたリズムの、低い声。なのに息継ぎ無しで言い切るこの、独特の喋り。……怖いけど、正直たまらない。


(なんというか…無駄をとことんまで削って、機能だけを追求する職人魂みたいなもんが、更にむき出しな感じがして……ああもう、ホントたまらないっ。)


 僕はあの親父さんが怖いんだけど、彼が打った武具を装備するのが、密かな夢だ。でも今日は別の要件でここに来てる。僕が用があるのは『装具師さん』の方だ。


 

(にしても、待たせるなー…。)



 珍しく僕以外には誰もいない店内。グルリと見渡す。

 いつもは特濃キャラが総出な感じなのにな。

 嫌な賑やかさで渦巻いてるのにな。

 ……でもなんだか、これはこれで寂しい。

 来る度に早く店から出たいと思っていた僕なんだけど。

 今日は時間が流れるのが遅く感じられた。


 それからさらに結構な時間待たされていると…


 バックヤードとこの店を仕切っていたカーテンが突然、怪しく揺らいだ。


 ………手だけ。


 手だけが現れ、スーと伸びてくる。結局身体はついて来なかった。腕だけ出して、僕に向けて掌を上にクイックイッと振ってくる。


(誰だ?ミステリアス…。うーん、これは、どうやら誘われてるようだけど…。)


 この店ではこの程度の怪しさで躊躇していてはだめなのだ。なので僕は指示された通りにカーテンをくぐり抜ける。するとそこには廊下があった。あれ?……誰もいない。


(…いや、そうか。ここは廊下じゃなくて『部屋』なんだ。棚に挟まれて通路みたくなってんだなこの部屋は…)


 多分この部屋の中に何列も置かれているのであろう棚の中には店出ししてるあの業物武具すら目じゃないのであろう超業物が、ギッシリと無造作に置かれてて……。


(…いやいや僕のこと信用しすぎでしょ。こんなの盗まれたらどーすんの?…あ。ヨダレ出ちった。どれでもいいからさ。ひとつくれないかな〜…)


 なんて思いながらその『通路』の先にある扉を開ける。そこは鍛冶場だった。そしてまただ。誰もいない。


(つか、このハンマーってアダムダイト製なんじゃないか?そんでアレはオリバルダイト製だろ。え〜〜?マジかヒヒロンダイト製のまであんのかよ!使い込まれてる感は凄くするけど……え、なのに傷跡一つ…つか歪みとかへこみの一つもないし…ココ、やっぱ凄いな)


 ってゆーかさ。整頓して大事に置かれてるのは分かるけども。マジでこんな不用心に置いてていい代物じゃないからね?どれもコレも。


(んー。触ってみたい。だけど我慢)


 道具は職人の命だ。

 使い手の許可も無く勝手に触っていいもんじゃない。

 眼福過ぎて触りたい欲求で気が狂いそうになりながら僕は鍛冶場を突っ切ってまた扉を開けた。


(ここは…裏庭、かな?)


 外から見られないように配慮しているのかな…かなり高い塀で四方が囲まれている。どうやらここは購入する武具を試す為にある空間であるらしい。そこかしこに試し撃ち用の的があるし、試し斬り用なのだろう木製の杭や金属製の杭が地面に刺し立てられている。


 驚く事に、縦に斬り裂かれ、しかも滑らかな断面を晒す金属製の杭があったりもした。


(どう斬ればこうなるんだ?欲しい。コレをやった剣。)


 なんて思って茫然としていると…


 やっと『装具師さん』のお出ましだ。


 なかなか気付かれない事に焦れたのだろう。

 送られてきた凄い圧力のジト目を感じて、僕はやっと彼の存在に気が付いたのだった。


(うん、この人も……結構怖いんだよ。見下ろされる形になるし、なんせ全く喋らないからな…。いや、喋れないみたいなんだけど。)


 『装具師さん』は結構背が高い。185…って所か…。それにエルフ並にイケメンなんだよな〜。チラホラ無精髭が生えてるからエルフではないみたいなんだけど。ああ、エルフというのは髭が生えない種族なんだよ。ドワーフと仲が悪いのはそれも原因としてあるらしい。


(ていうか…ホントこの人って表情が読めないよな。)


 別に無愛想って訳でも無表情って訳でもないんだろうけどね。怖い感じもしない。なんというか…無理やり表現するなら


『何でもない。』…そんな感じの顔だ。平然としてるけど冷静を装うために心を押し殺してる感じも全くない。


(どんだけの修羅場くぐったらこんな顔になるんだろ?揺らがない感じが半端ないな……ていうか。いつの間にそこにいたんだ?…あ。)


「お…おおー!それですか?僕専用の義手は?」


 僕は慌てて取り繕った。そんな僕を見てフンと鼻を鳴らす『装具師さん』。なんかジェスチャーしてるけど……


「あ…ああ、はい。」


『とりあえず脱げ』と指示されたのが分かったので、僕は上半身肌着だけの姿になった。

 すると『装具師さん』は革製のベルトを組み合わせて胸と肩を縦横に経由する形状の装具を僕の身体に装着していく。


 それが何の為にあるのか最初は分からなかったけど、装具と義手をベルトで繋げる感じで装着してみて、直ぐに分かった。無かった筈の右腕に、僕の物でないはずの、この義手に、僕の身体から装具を伝って無理なく魔力が流れていく。


 そして一瞬にして、、


 義手は僕の一部となった。


 『それ』は、瞬く間に『利き腕』になった。

 『それ』は、どんな複雑な動きもしてくれた。

 それを見た僕はと言えば…


 感動した。もうそれしかない。


「あ……あ…僕の腕、動く。ああ!動くっ!動く!!義手じゃない…こんな、こんなの…義手じゃないよこんなの…これは、これは僕の腕だ。僕の肩に連動して動いてる…!僕の胸にも、背中にもっ!僕の心のままにっ!僕の身体の一部として!力の加減も変幻自在で………こんな!こんなの……義手じゃない……〜〜〜〜」


 最後の方。言葉にならないどころか、声にすらならなくなった声。それが漏れ出ていた。腕が戻った代わりに今度は声を失ったのかと、そう錯覚してしまうほどだった。


 大袈裟じゃなく、これはそれほどの、奇跡のような、至上の喜びで…。とにかく僕の腕は、また、戻って来てくれたんだ。


(これなら、また振れる。剣をっ!また僕は戦える!昔みたいにっ!いやこの腕なら!昔以上に…!)


「凄い…っ、凄いですコレ…ホント、凄い…うう、うう〜〜」

 

 もうそれしか言えなかった。もう泣くしかなかった。


 凄い。本当に凄い。僕が勝手に失ったと思っていた『人生の何割か』。それを、この人は今の数瞬で取り戻してくれたのだ。


(『装具師さん』…)


 ──不思議な人だ。


 そのあと『装具師さん』は色々な微調整を、これでもかと丁寧にしてくれたあとに、僕から魔石を受け取ってババババっと目にも止まらぬ早さで面倒である筈の『例の刻印までの作業』を済ますと、

 口元に人差し指を当て、『これ、秘密だからな』という感じで『義手に仕込まれていたギミック』を教えてくれた。

 それを見た時は更に度肝を抜かれた。何なのこの人天才なんだろうか?つかもう惚れてまうわホント何なのこのイケメン。


 とゆーか。 


 ガラハッドさん…。開いた扉の隙間からコッチ見て涙ぐんでる…つかボロボロ涙流してるの目撃しちゃいましたゴメンナサイ。しかもそれ見て笑いそうになったのは秘密ですけど一応ゴメンナサイ。この事は誰にも言いませんので許して下さいそして安心して下さいゴメンナサイ。








 ──いつまでもここではしゃいでるわけにもいかない。


 二人に迷惑を掛ける事にもなるし、それにまだ例の面倒な手続きが残ってるし、外では職員さんが待ってるし。

 僕は早速『装具師さん』から例の書類にサインしてもらい、店をでるべく試験場を後にし、鍛冶場とバックヤードを経由して店の中へと戻った。




 すると、




 いた。狼が。


 めっちゃデカイ狼だ。しかも傷だらけ。


(出たよ。コイツ苦手なんだ。凄い苦手なんだ。つか、いつもどうやって入って来るのこの狼。どう考えても店の扉くぐれないよねその巨体。ていうかこの狭い店内にその大きさで居座られると……僕が通れなくなるんですが?)


 つか伏せの姿勢でハッハッと舌出して上目遣いでコッチ見ないで?

 ソレされてもカワイイとか全然思えないから。

 まさか食おうとかしてないよね?

 いやでも旨そうとかは思ってそうっ!

 やめてくれせっかく右腕戻って来たのにっ。

 この場合全身いかれちゃうのか?

 それは流石に酷い展開だっ!


 という感じで、何度会っても馴れないこの狼に、僕が夢中で慄いていると。




 ズズ…っ




 暢気な感じで茶を啜る音。


 この狭く無骨な空間には、どう見ても相応しくないテーブルがある。造りは大きくないけどその、シンプルながらも重厚感を損なわぬ上品で繊細な細工が施されたテーブルの上にこれまた繊細な細工が施されたティーカップが


 カチャリ。


 置かれた。これまた同様に高級感溢れる椅子に座っているこの人が置いたのだ。そしてこの人を僕は知っている。というか、この街でこの人の事を知らない人間なんていない。


(というか…よくこの店で見るんだけど。マイテーブルやらマイチェアーまで持ち込んでる熱心さなんだけど。それっていいの?立場的に。ちゃんと仕事してるのこの人?)


 そう、この人こそが、奇抜、奇妙、奇天烈という言葉を各方面から誰よりも寄せられ、ついには『奇卿』なんて呼ばれながらもこのエコノスの領主様から最も信を置かれ、それに相応しい実績をしかも他の追従を許さない程打ち立て続ける奇人にして大商人。その名もロンプフェーダ=マヘンドラー。


 ある人がこう噂した。『この領の影の主はロンプフェーダなのだ』と。それを聞いた領主様が『もしそうであるならこの領地は安泰であるな』と笑ったのは有名な話だ。




 ズズ…っ




 またもう一つ。茶を啜る暢気な音。


 客はもう一人いた。その人はもの凄い美人さんだった。素晴らしい。なんと茶を啜っていらっしゃるのです純粋エルフも霞む程の美人さんが。素晴らしいです。

 黒髪なのを見るとハーフエルフなんだろうか?まあいいか。どっちでもいいか。美しいもんは美しいんだ。名前は知らないけど、この人もほぼ毎日この店に来ているようだった。


(ていうか、今更気付いたけど、腰元に差してるあの曲刀はもしやアズマノコク伝来の『カタナ』ってやつか?嘘だろこの店そんな凄いもんまで扱ってんのかよ?てゆーかこの人の腰…何度見てもエッロいなあ〜ありえんくらいにエッロいな〜〜はあ〜…抱きたい…無性に抱きたい。)


ゴ(……ってあれ?)ゴゴ


ゴゴ(ん?え、ちょっと。)ゴゴ


ゴゴゴ(なんか凄いオーラ感じる背後から)ゴゴゴ…


 恐る恐る 振り向いた。


「ひいいっ!」


 鬼がいた。『装具師さん』が鬼の形相で僕を見ていた。


(いつもの『何でもない』顔どこ行ったのーー!?)


 キレイな薄水色の長い髪を、ワラワラと逆立てて僕を威嚇している…。


(つか正体表したな!『装具師さん』やっぱあんたはみんなが言う通りの死神だったんだなー!)


 じゃなくって。


(ヤバイこの大魔神様のお怒りを早々に沈めなきゃ。こんだけの恩を受けたんだ間違いなく天罰が下されるっ。あ。そ、そうだ。お礼っ。お礼言うの忘れてたしっ)


 しっかりしろよ僕。





「あ、あの!『 ジンさん 』!」





 あ。『ゴゴゴ』止まった。ギリセーフだったみたいだ。


「『ジンさん』…本当に有難う御座いましたっ!こここんな凄い義手、造ってくれて!」


 僕がそう言うと、『ジン』さんはまた、あの『何でもない』という顔で口だけをへの字に曲げ、シッシと僕に向かって手の甲を上に何度か振った。


 …多分アレは『用が済んだならサッサと帰れ』ってことなんだろうけど…


 ……でも、僕には分かったよ。あれ、微笑みそうになるの隠したんだよね。つまりアレは照れ隠しのへの字口。




(ふふ。みんなが慕うだけの事はあるよな。)


 この頃の僕は、


(不思議なヒトだよホント…)


 予想だにしてなかった。


 この無口で物騒な『魔導義肢装具師のジンさん』。


 彼がのちに、このエコノスを未曾有の危機から救い出し


『独り語りの(トーカー)ジン』なんていう二つ名で呼ばれる…大英雄になるだなんて。



「う、あチョッ…狼くん。甘噛みやめて。いやそれ加減おかしいつか血ぃでてるし。」



         ─────第一部。完。




 もし、


 面白いと思って下さった方、

 面白くなるかもと思って下さった方、

 いやこれ面白くねー!と思ってる方も!


 是非、評価ポイントお願いします。


 低いポイントでも嬉しいんですよね。読んで下さってる方もいるのだと思えて支えになるし、良いポイントに振り直して貰おうと、面白くなるようにと、日々努力する甲斐が生まれたりします。


 普段なるべく『直接的おねだり』は控えていますが…折角の区切りですのでぶっちゃけます。


 どうかポイントの方、

 何卒!

 宜しくお願いし申し上げます!

 評価ポイント入力は下にあるタグで入力出来ます。






はいこれにて。


 『ジンシリーズ第一部』は一応の完結ですが、


 第一部に収まり切れなかったジンの幼少時代の外伝とかは思いつき次第この第一部に随時投稿していきたいなとは思ってます。


 構想として第五部?くらいまで考えていて、


 特に一部から三部までは

 『ジン』が主人公であるのは不動のまま、

 物語の時系列も順のまま、


 しかし作風とか物語の舞台とかをなるべく『ガラッ』と変えていきたいな。

そう思ってますので各部、別のタイトルで投稿するつもりです。


第二部から読んでも第三部から読んでも楽しめる感じにしたいんですよね。


第四部と五部は怒涛の展開でクライマックスという感じです。


 第二部投稿の開始が決定次第、次の外伝でお知らせしますので、暫しの間おまち下さい。


 いつも読んでくれて、

 本当に有難う御座いますm(_ _)m

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