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転生ライフオンライン〜ネタ枠種族の『ハードエルフ』はチュートリアルからハードモード。  作者: 末廣刈 冨士一
転章 このチュートリアルに万感を込めて。
49/56

第42話…の前に。とあるスキルの友情物語。 〜不遇?『だからこそ』でしょ。


バッド視点です。


 僕がジンを『スキップ』させたあと



 色々あった。



 一体いつまでスキップするのか……それを僕に伝えないまま、ジンはスキップの中へと逃避してしまった……どれほど長い時間をスキップしようと、ジンにしてみればそれは一瞬の経過でしかない。だから意味はないんだけど…きっと、それを忘れてしまう程、ジンは打ちひしがれてしまったんだろう…。


【(何やってんだよジン……ゲームの中でまで引きこもろうとするなんて……)】


 なので、今僕と時間を共にしているのは、ジンが言ってたところの『相棒』くんだ。


 彼は僕に話しかけてこなかった。ただ黙々とジンの為に動き続ける。そういう存在であるように見えた。


 だから僕は退屈だったし、ジンではない誰かに何が起ころうと関与しないし…そもそも僕という存在は、真に覚醒するまでは宿主にすら直接的な関与はしてはいけない立場にあった訳だし。


【(まあ、ジンは別。)】


 そう。特別だ。




 あの日…クラフトが立ち去った後。

 ジンがスキップして数時間後。

 魔炉が本調子を取り戻し、そろそろ『相棒』くんも動けそうになっていた頃。


 馬に乗った二人の人間が接触してきた。


 一人は全身黒い服を着てて無表情で…いかにも胡散臭いヤツ。もう一人は小奇麗な格好をしてるけど、これまた無表情で何を考えているのか分からない感じの男。結局どちらも無表情で胡散臭い感じだった。


 この二人は騎士(仮)達の残骸を…バラバラになって散乱する無残な遺体を、何故か気にした風もなく、僕らに話しかけてきた。


【(ホント、この人達何者なんだろう…?)】


 と訝しく思っていると『相棒』くんが【魔脳】を使って過去の記憶を引っ張り出し、見せてくれた。


 黒装束の人は誰だか分からないけど、どうやらもう一人の小奇麗な男とジンは、面識があったらしい。

 この男は昔一度だけジンと会ったことがあるらしく、その際にはジンを題材にした『偉人伝』を将来発行したいとかなんとか言って来た変人さん(…はあ?何なの?胡散臭さが逆に倍増したんだけどっ!?)としてジンに記憶されていた。


 ジンは名前もちゃんと覚えていた。…まあ忘れないだろうねこんな印象深過ぎる人。

 彼の名前はロンプフェーダ…というらしい。フルネームはロンプフェーダ=マヘンドラー。商人さんであるらしかった。身なりもそんな感じだ。いかにもな感じ。それにしても…


【(え?『相棒』くんこの人についてくの?いやいや絶対やめた方がいいって!この人絶対ヤバいアレだよ?あ…あ〜あ…)】


 黒装束の人はどっか行ってしまったのか、いつの間にかもういなかった。残ったロンプフェーダさんにより馬に乗せられた僕らは、最寄りの村に立ち寄り、同じ宿に一泊することとなった。朝起きて宿を出るとあの黒装束の人が玄関で待ってて少し驚いた。


 ……この二人のやり取りを聞いてわかったことは、どうやら黒装束さんはロンプフェーダさんの命で馬車を手に入れるため、別行動で奔走してくれていたらしい。


 ということはこのロンプフェーダさんは気前良くもジンを保護する為だけに馬車を購入したという事なんだろうか。


(そうか。そこまでジンを…なら、信じていいのかもしれないね…)


 金にうるさいはずの商人さんがここまでの気遣いをしてくれたんだ。きっとジンは悪い扱いを受けることはないだろう。



【…なんて思っていた頃もありました。】



 その後結構な日数と道のりを経て、僕らは『エコノス』という都市に連れて来られた。


 この都市はかなり栄えていて城壁も高く分厚く広く、行き来する人種も多様で、城壁を潜れば見た事もない活気で溢れていた。


 頑丈で洗練されてて背の高い建物が多いことからなんとなく察せられたけど、エコノスはこのアウトリア王国では首都の次に栄える交易都市であるらしい。


【( だからか。)】


 取り引きされる物の殆どはここではない各地へと流通されるらしく、城壁の外には広大な規模の田園風景が広がっていて道中でも目にしていた。


 その田畑を耕す農家の人々はこの都市を中心として衛星的に散らばる村々に住んでいるらしい。


 そんな村々の人々にとつては、耕す田畑が離れて在るのは負担がかかるし面倒な事に見えるけど、税の何割かをこのエコノスの商人さん達が負担する上、村々の防衛費用までも援助してもらえるらしく、しかもどうしても割高な取り引きになる行商人を待つ事をしなくても、自分達でこのエコノスで欲しいものを買えたりして…、

 商人さん達にとっては、自給が万全になり、手持ちの物資を最大利益を見込める交易に全投入する事が出来る事と、この街のギルドに大勢の冒険者達を呼び込む為の仕事だって生まれる。冒険者というのは何かと便利で、戦闘力だけではなく、商売上必要な人員に不足があった場合にはそれを補うのにも役立ってくれる。冒険者ギルドというのは街の発展には欠かせない、貴重な人材の宝庫なのだそうだ。

 そうして大量に呼び込んだ冒険者達はこの街で多いに金を落としてもくれるし、有事の際に商人さん達が交易で不在としていても彼ら冒険者達が大量に居れば、都市防衛の主力として見込める。

 そうなれば更にと本来の商売に専念出来て最大利益を見込むことが出来る。


 …という、二者両得…冒険者を含めて三者総得な仕組みが出来上がっていて、その条件の良さから街でも村でも人員には事欠いていないらしかった。


 このようにして人と金と物が問題なく循環して栄えているので、人々の心に余裕が生まれる。だから娯楽も豊富にある。大道芸人というのを、僕は初めて見たし、しかも彼らはそこかしこに大勢居て、その集客力を利用するかのように、沢山の店舗からさらにはみ出したようにして並ぶ露店には、珍しい物が溢れていて見てるだけでも楽しかった。


 他にも娯楽の基本である酒場や劇場や娼館なども勿論揃っていて、しかも沢山あり、それぞれが様々なコンセプトを前面に押し出していて飽きさせない。


 そしてこの街では、通常では許されていない高額レートの賭博までも(王営の施設内限定だけど)許されている。そんな中で一番に人気があるのが闘技場であるらしい。


 闘技場というのは、自身を解放する為にやむを得ず、戦いに身を投じる闘奴や、腕試し…もしくは地位と金を同時に、しかも手っ取り早く手にしたいとする武芸に秀でた人達、そして野で暴威を奮うも捕獲され戦う事を強制されることになった魔物達が、命を賭けて戦う場所だ。

 人々はそれを観覧するために入場料を払い、誰が勝つのか、生き残るのか、どれだけの時間生きていられるか……などを賭けて楽しむ。


 それが闘技場だ。

 そして今、


 僕らはその闘技場の中にいる。


【あはは〜そう。お察しというやつです】


 ダマサレマシタ。

 アノショウニンニハホント ダマサレタ。


 僕らはロンプフェーダに騙された。彼の奴隷になるように隷属魔法をかけられてしまった。そして今、僕らはこの闘技場の中にいるわけだ。闘奴として。


 その裏切りに文句も言わず、『相棒』くんは黙々と戦っている。もう既に、何度も何度も戦ってきた。


 ジンの心を慮っての事なのか、対戦相手が人であろうと悪人であろうと魔物であろうと、殺さぬように手心を加え戦った。最初は観客からのブーイングが凄かったけど、今やファンも大勢ついて、彼はもはやこの街の英雄だ。


 彼をただベラボーに強いだけの英雄だと思っている人には分からない事だろうけど、『相棒』くんが自らに課して日々挑んでいるそれは、ただ『手加減』という言葉で処理出来るほど、生易しい行為ではなかった。


 相手はコチラを全力で殺しに来てるのだ。そうしなければ自分が死ぬのだから当たり前だ。そんな相手と、『相棒』くんは片腕を失った状態で戦わねばならなかった。


 これが厄介だった。ハードエルフにとって隻腕であることは想定以上のハンデとしてのしかかる事になった。


 ハードエルフは魔力を体外へと放出出来ない。飽和し続ける魔力を処理するには、スキルを使用するなどの『体内で消費する』という手段しか残されていない。そんな欠陥のある種族だ。

 だから近接戦闘しか戦う術を持たないんだ。【人外化】の暴走による化物变化(もう、アレは使わせない)は別としてだけどね。


 その上で、片腕を失っている。


 戦ってみてわかった事は、ただ一言に『片腕を失った』と言っても、ハードエルフの場合それは、『片腕が使えなくなった』というだけでは済まされない問題だった。


 在ったはずの片腕が無くなった事で、全身のコントロールが微妙に狂うことになったんだ。ボディバランスというやつだ。通常の種族ならそのボディバランスの狂いにも自然の内に馴れていったのかもしれない。


 でも、近接戦闘しか許されていないハードエルフは違う。ハードエルフは近接戦闘しか許されていない中で、しかも敵を『圧倒』しなければならない。

 圧倒できなければ殺さずに勝つことは出来ないし、殺すことが許されていたとしても、圧倒出来ないのであれば、敵がただ『距離を取り遠距離攻撃に専念する』という簡単で単純な戦法を取るだけで、種族的弱点をモロに突かれる事になり、そのまま為す術もなく敗れてしまえる。


 ハードエルフは『相手を圧倒出来る』という実力差を身に付けて初めて、その『遠距離攻撃の壁』をくぐり抜け『辛勝』することが許される。そんな不遇種族なんだ。


 その『圧倒的戦闘能力』を手に入れるには、大量のスキルが必要だった。しかもただスキルを大量ゲットするだけでは足らないんだ。

 それらスキルを十分に育て上げ、育った分、制御し難くなったそれらを『十全に』、『自然に』しかも『大量に』その上、『同時に』コントロール出来るようにと修練に励み、血肉へと溶かしこんで、やっと戦型が整えられる。


 ジンが五体満足だった時でもそれは至難の業だったんだ。至難であったからこそ、【魔脳】の台頭を許すことがあったわけだし。


 そう、五体満足でも至難だったのに今、ジンは片腕を失ってしまった。マグナさんていう人…あの、元冒険者の人だって怪我で引退しなければいけなかった。あの人だって、スキルを沢山持ってて強かったはずのに、ジンの場合は片腕欠損で、しかもハードエルフという不遇種族だ。


 勝つために必須として緻密に緻密を重ね構築されていたジンの戦闘技術は隻腕となった事で脆くも崩れ去ってしまった。

 それどころか隻腕となった事で魔力の循環までが今までと違うものになってしまったらしい。

 その影響なのかスキルの中には使えなくなって無用の長物と成り果ててしまったものまである。


 そんな不遇種族の、更に不遇な状態の中で、『相棒』くんは戦っている。相手を倒しても殺さずに。

 つまり、ただでさえ戦うのに不向きな種族が、劣勢の中で相手を救うなんていう手間までかけて戦っている。


 ジンの為にそうしてくれているのだから僕としては感銘を受けなければならないのだろうけど…正直言って呆れた。


 何故なら、彼がジンとは別人格であることを僕は知ってたから。何故そこまでジンの為にあろうとするのかが分からない。だから気になった。気になってしょうがないので聞いた。(そういえばコレが僕と『相棒』くんとの記念すべき初会話になったんだなぁ。)すると彼はこう答えたんだ。


「バッドくん。スキップ中にしか生きられない『僕ら』という存在はね。プレイヤーと言われる人達が使ってるこの身体の、『本当の持ち主』だった者達なんだよ。」


 それは衝撃的過ぎる答えだった。


 彼が言った事が本当なら、ジンはこの『相棒』くんの人生を根こそぎ奪い取ってしまったことになる。しかも、ゲームをするためなんていう、軽い動機でだ。


 …であるなら、更に疑問だ。何故、そんな相手の為にこれ程に尽くすんだろう。謎過ぎる精神構造だ。


「いやゴメン。言い方が悪かったな。……『この身体の持ち主になるはずだった』…これが正しい表現になる。だって『僕ら』は、本当なら死産によって喪われる運命だった者達なんだから。」


【……あ、そういう事か…】納得だった。


「『ぷろぐらむ』?…って言うのかな……『本当ならお前は産まれるはずもなかったんだよ』っていう情報を知らされて、生まれる存在なんだよ僕らは。……そう、僕はこの世に生まれる筈のない存在だったんだ。それって本当なのか?って思うかもしれない。でも僕を見れば納得だよね。本来ならエルフとドワーフの間には子供が産まれるはずなんて、無いんだ。だから、もしジンがこの種族を選んでくれなければ、僕はこの世に生まれることすらなかったはずなんだよ。」


【…………あ…】どう答えていいのか分からなかった。


 その生は幸運と呼べるものなんだろうか。いや、不運と呼んでも不足ない生でもあるはずだ。

 何故なら、プレイヤーが『独り立ち』し、『さあ、これからが本当の人生の始まりだ』とか言いながら意気揚々として旅立つのを、彼らは見送らなければならないのだ。


 しかも見送った後、彼らは消滅しなければならない。


「……うん……ジンが言ってた通りだな…やっぱりバッド君は優しいね。」


【うえ…?】なんですか急に。初めての会話でそんな不意打ちやめてください。


「…でもね。『だからこそ』、僕は自分が不幸だなんて思わない。思えないんだ。何故なら、この世に生まれてやっぱり良かったなって。そう思えたから。そう思える事をジンは沢山見せてくれたから。それに、『本当なら死んでた』なんてことを生まれつき知ってる僕『だからこそ』、そういう事に気付けて、理解できたんだと思うしね。」


 心からの実感がこもった言葉だった。僕は出せないけど、涙が出そうな程、凄い言葉だった。圧倒的だった。


 そして、今すぐジンに聞かせてやりたいと思った。あの、打ちひしがれて、抜け殻になってしまったジンには、今こそ彼の言葉が必要だろうと。きっと喜ぶはず、そう思えたんだ。


 でも、彼とジンは同じ生にして別の生を生きている。お互いが『自分』であるというのはそういうことだ。記憶を介してしか交われない。彼らは表と裏。直接会話することが出来ないのだ。


 そんな両者と直接会話が出来るこの幸運な立場を、僕は『相棒』くんがそうだったように、気付いて、理解しなければならない。そう思った。そして彼の言葉をジンに届けたい。そう思った僕は、意地悪な質問だと理解しつつ、更に彼に問うた。


【そう?ジンは沢山酷い目にあってきたよ?『相棒』くんだって経験してきたはずじゃないか。ていうか、大部分は君が経験してきた事だろう?それなのにジンの都合でアビーっていうあのアニマの娘と、君は別れなくちゃいけなくなったし…それに、そのアビーはきっともう…この世には…なのになんで…っ】


 躊躇いがちに言ってるうち、吐き出すようになってしまったその質問に『相棒』くんは


「『だからこそ』だよ。」


 即答だった。


「もし、運良く僕だけで生まれて来れたとして…そんな何億に一つの幸運が許されたとして……でも、その人生はどうなっていたことだろう。つまり、ジンと二人三脚で取り組まなければ、この人生はどうなっていたことだろう?」


 なんで…そんな風に言えるんだろう?なんで…そんなに…


「きっと差別されたら泣き寝入りするか、反発して村の人達との溝は深まってた。というか、その前にこんなに沢山のスキルを取得するなんて、できなかったはずだ。それを思いつくための魔力理論だって、発想すら浮かばなかっただろうしね。そんな僕だったら、きっと父さんと母さんは心配することしか出来なかったろうし、師匠にもあんなに可愛がってもらえなかったし、マグナさんだって僕の事なんかどうでもいい感じになってたろうし、それなら、あのアビーだって……アビー…そうだ。アビー…」


 そうだよ…彼女の事を忘れちゃいけない。好きだったんだろう?でも、彼女はもう死ん……


「アビー。そう、彼女と出会う事も、きっとなかった。僕は『魔炉狂い』というあの難病に呑み込まれて、早々に死んでたはずなんだから。」


【でも……】 


 迷いもなくそう言い切ってしまえる『相棒』くんが僕にはとてつもなく眩しかった。

 だから、僕は…彼から言葉を引き出すのは、僕だったはずなのに。僕は…何故だろう。僕の方が…


【君も…ジンも……報われてないじゃないか…】


 僕は逆に、引き込まれてしまっていた。そして引き出されてしまった。言葉を。言ってはいけない言葉だって分かってて言ってしまった。

 たまらなくなったんだ。苦しくて、申し訳なくて…だから、


【そうだ……報われてない。あんなに頑張ったのに。こんなに頑張ってるのに。それは何故かって…こんな……僕みたいな災厄を抱え込むことになったからだ。……そりゃぁ、ジンは許してくれたけどさ…『お前は相棒だ』って言ってくれたけどさ、なのに…結局……力になりたいのに。僕は結局…】


 『災厄を呼ぶ』


 望んでそうなったわけじゃないけど、僕はそうなるように創られた。だから僕がどんなに強がっても、努力しても、至る結論は結局こうなる。結局の疫病神なんだ。僕は。


【僕のせいなんだ。そうだ。何もかも僕の力が呼び寄せたに違いない。…ただの偶然じゃない。きっと、僕のせいでクラフトは見つけてしまったんだよ。ジンのママさんを。見つからないままだったら、ママさんは家族から身を引く事もなくて、パパさんだっていなくならなくて、ジンだって、あんな目に合わなくて済んで、村の人達だって、アビーだって、死ん……ゴメン……ゴメンよ。ゴメンナサイ。】


「大丈夫だよ。」


 え?何が大丈夫なんだろうか。こっちは深刻な話をしてるつもりだったのに。


「…ジンにしろバッドくんにしろ…。ホント、自分を責めるのが好きだね。それ流行ってるの? ああ確かに。辛い事が沢山重なった。だけど…『だからこそ』、僕はこの世界で輝けた…気がする。ジンは大変な目にあって『だからこそ』、僕を頼ってくれたんだろうし。」


 そんな風に考えられるのは、『相棒』くんが役に立つヤツだからだよ。でも僕は違う。


「いや、ジンだって凄く弱かったんだからね。『現実の世界』という場所で、ジンはとっても弱かった。だからこの世界に逃げ込んだ。だから。そんな自分を大嫌いで、そんな自分を変えたかったから。『だからこそ』、ジンはあそこまで強くなれたんじゃないかな。だからバッド君も、きっと大丈夫。ジンのこと、大好きなんだろ?だから、バッド君は大丈夫だ。バッド君にだって出来るはずだ。『だからこそ』ってやつが。」


 なんでそうなる…。それに、そんな強いジンだって、今はもう…


「そうだね。ジンはクラフトっていう化物に出会ってしまった。出会って、どんだけ凹まされたんだろうねアレは…。きっとそれはもう深刻なレベルで凹まされたんだろう。そしてジンはまた、『弱い自分に悩まされる病』にかかってるんだろうけど。


 ……でもね。


 ジンはもう、『弱い自分を克服すること』に病みつきになっちゃってるはずだから。弱いから強いなんていう…ホントわけわかんない強さを、もう身に付けちゃってるはずだから。あんな『みっともない最強』には、きっと誰も勝てっこない。ジンは当たり前の事みたいに、きっと、復活しちゃうんだから。だからジンの事をそんな風に心配しても無駄なんだってば。」


 う…。凄いな。流石はジンに『相棒認定』されてる人は言う事が違うな。それに比べて僕は


「はあ〜〜〜もう。そのジンに『相棒認定』されてるのは僕だけじゃなかったはずなんだけどな………ねえバッド君。さっきの僕はああは言ったけども…ジンはもういよいよ後がない。次に出会う困難に負けてしまえば今度こそ、きっといなくなる。この世界から。バッド君だってソレ、分かってるんだろ?」


 う。


「僕はね。それだけならいいと思ってるんだよ。ジンがこの世界で死んでも、『現実の世界』って所でジンはまだ生きてるんだから。よく分からないけど、この世界は『げーむ』ってヤツなんだろう?」


 ああ、そうだよ…。ホントは秘密なんだけど。


「でも、それは逆に言えば、ジンには『その先がある』って事でもあるんだ。ねえ、ジンは大丈夫なんだろうか?『現実の世界』から逃げ込んだ先であるこの、『げーむの世界』でまた逃げ出してしまって、そしてまた、負けてしまっても大丈夫なんだろうか?ねえ、ジンは大丈夫なのかな。大丈夫だと思う?僕は大丈夫だとは思えないし、そうなるのは絶対イヤだ。『ジンは英雄になる。』ロンプフェーダさんはそう言ってた。僕は信じてるんだ。あの言葉を。心の底から。」


 いやいや、あの商人の言う事を信じちゃうの?僕らめっちゃ嵌められてんだけど。『相棒』くんこそ状況わかってる?闘技場(こんなとこ)に放り込まれて流石にそれは…


「なるほど、バッド君は……信じてないと…。そうか。ジンの『相棒』枠は僕一人のモノになるわけか。いや別に…うん。それはそれで……ああ、ありっちゃーあり…か」


【ああもう!それズルいぞソレ!?それ言ったら…もう!…………分かったよ…】


「そうか。流石は僕の相棒だな。『バッド』」


 フェ?


「え…だってジンの『相棒』なら僕の『相棒』でもあるわけだろ?……あれ?…違うのか…?」



【いやだから普通『相棒』なんてのは一人しかいないから『相棒』なんであって…




       ───まあ、いいか。】




 その日、僕と『相棒』くんは沢山の事を話した。



 『相棒』として、僕達三人が、何をすべきで、どうあるべきか……なんていう真面目な話も勿論したのだけど、他愛もない話も沢山した。というかそれが殆どだった。


 我ながらウザい性格だって自覚はあるけど、『相棒』くんは気にした風もなく全部の話に付き合ってくれた。僕達は親しくなった。とても親しくなれたんだ。


 でも、親しくなればなるほど、僕は怖くもあった。


 それは、分かっていたからだ。


 『相棒』くんとは、いつか別れる時が来るということを。


 それはきっと、ジンも同じな訳で…


 いや、『だからこそ』だ


 『相棒』くんと出会えて、友達になれて、本当に良かった。彼の『相棒』になった今なら、こう思える。


 

【だからこそ。だからこそ。】



 不遇『だからこそ』、


 精一杯に。全力で。一心不乱に。無我夢中になって。


 ……そんなジンと、ジンの『相棒』くんの、『相棒』になったんだ。僕は。


【『だからこそ』……その意味は?】


 例のアレだ。


『何が来ようが、ひっくり返すっ!!』コレだ。


 今までのジン達がずっとしてきたことだ。


【だからこそ、僕も、そうする。】


 なんせ、『相棒』だからね。


 なら、僕だってそうだ。



 僕は、僕の『だからこそ』をやり遂げるんだ。





ちょっと臭いと思われた方、すみません。作者は燃える展開が大好きです。なので臭さは欠かせません。悪しからずm(_ _)m



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