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ブックマーク、評価ありがとうございます。なんと――


ジャンル別ヒューマンドラマ〔文芸〕日刊1位を頂きました!


1位など縁がなかったのでうれしさ一杯です。これもブックマーク300越えという、ここに遊びに来てくれた皆様のおかげです。もちろん、評価云々だけではなく、ここまで読んでくれた読者がいたからです。

話は後2話で終わりを迎えます。バタバタと走り抜けた物語になれれば幸いです。

 椎名猛はまだ成長途中の投手である。中7日以上あけることを条件に入団した。これは誠の忠告を取り入れ決めたことである。


 入団一年目に大活躍すれば大切に育てるといわれても、ペナント終盤に使い潰される可能性もある。ペナント途中、先発陣のローテーションが崩れれば、フル回転で酷使されてしまう。


 変則的中7日であるがオールスターまでの11試合を投げて、勝ち星は八勝一引き分けとチーム一の勝ち星となった。引き分けと勝ち星がつかなかった二試合は中継ぎ抑えが打たれて逆転された結果であり、実際の勝ち星は10と驚異的数字をたたき出した。


 もちろんオールスターは投手部門断トツ一位でファン投票で選ばれた。キャッチャーは誠であったが、一部の山岡ファンから組織票、えこひいきとかなり叩かれていた。


            *    *    *


「一年目でここに立てるなんて感無量だね」


 誠が笑顔で話しかけてくる。


「夢のオールスターと陳腐な表現だと思っていたけど、実際に自分がここに来ているなんて夢としか思えないよ!」


 猛も笑顔で返す。


「僕が一番で打てるなんて今心臓が止まってもいいよ♪」


「打つ前なら後悔しか残らないよ誠ちゃん」


「それもそうだね」


 とキャッハウフフないつもより高いテンションの会話が続く。


 僕はヘルメットを深くかぶり打席に向かうと見方ベンチから


「ここでも沢山投げさすのか!」


 ヤジが飛ぶ。


「すぐに帰ってきたらなんでもいうことを聞いてあげる」 


「俺も早く帰りたいから同じく」


「じゃあ俺も」


 相手ベンチからも同じようなヤジが飛ぶ。僕が沢山の球を投げさすことは、交流戦で試合をしているため周知の事実。


 今日の先発投手も僕にヘロヘロにされたピッチャーの一人だ。


 初球、完全に真ん中におきに来たボール。僕が球を振る確率など0というそんなストレート。


 かきぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーん


 鈍い音と共にボールがセンターにフラフラあがる。センターがボールの落下点にゆっくりと移動する。ゆっくり、ゆっくり後退しトンと壁にぶつかる。


 ボールが観客席の中にポトリと落ちた。


ワーという大歓声と共に僕は全速力でベースを回る。息を切らせながら


「い、一番早く帰ってきました♪」


 女子力1000%の笑顔を見せた。


 ベンチは大爆笑


「なんでもお願いが叶うといわれたので頑張っちゃいました。今度合コンお願いします」


ニヤニヤするベンチ


「仕方がないのでおじさん達は約束を守っちゃう」


 古株の達川選手が代表よろしく返事する。


「でも、僕18才だから二年後達川選手いないかも」


 舌を出して答えると、ヘルメットの上からバシバシ叩かれた。


 二回裏、最後の打者を三振で抑えた。会場が拍手に代わる6打席すべての打者を猛は三振で打ち取った。


 ベンチに帰ると監督が開口一番


「もう一回投げるぞ」


 猛に告げる。近年のオールスター戦では投手が投げる回数は2回。しかし、奪6回三振となれば連続9奪三振という夢が出てくる。


 江夏豊が記録した9連続奪三振に並ぶ……球場は彼の三回目の登板に静まりかえる。


 7人目の打者を三振に取ったとき大歓声とウエーブがおこる。僕の心拍数も跳ね上がる。8人目パリーグのホームラン・ランキング一位のベブルスが左打席に立つ。初球外角一杯に魔球が決まる。二球目カンとバットから音が出る。フラフラとあがったボールは平凡なファーストのファールフライ。ファーストを守っている清原は一歩も動かずにボールを見送る。彼の横にポトリと落ちるボール。球場は拍手の嵐に包まれた。


 三球目遊び玉なしの魔球をサインで出す。づんという重みが僕のミットから伝わる。あと一人。最後の打者はイチロウ。今期はなんと4割をキープし続けておりプロ野球初の四割打者に一番近い男。交流戦では魔球をヒットにした数少ない打者であった。


 初球カキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンと鋭い打球がサードベースをかすめる。いや数ミリ左のラインを外れる。観客が地響きを立て球場が揺れる。二球三球ボールが僅かに外れる。四球目大きなフライがライトに飛ぶ。悲鳴が上がる。


「やられた」


 僕は歯ぎしりする。ボールは高く上がりライトスタンドに吸い込まれると思われたが、強風に流されポールからはずれた。僕はサインを出す


 投げたボールは大きく右にそれイチロウは軽く見逃す。


「ストラーーーーーーーーーーーーーク」


 主審の右手が大きくあがる。僕の真ん中に構えたミットにボールが飛び込んでいた。


 イチロウは唖然とした顔でそこから一歩も動かない。


 今日一番の歓声が球場を包み込む。


 ベンチに帰ると仲間からあの大きく曲がったカーブはなんだと問い詰められたので


「ただのストレートです」


 しれっと返事をしてやった。


 もちろんベンチに帰るまえに袋だたきに遭う。叩かれるのは猛のほうだろと思いながら心地よい痛みを堪能した。


 ベンチにすわり


「僕か猛がMVPなので先輩方は沢山打つか、この虎の子の一点を守ってくださいね」


 可愛くおねだりする、


 ベンチは立ち上がり大爆笑


 打席に向かう大関選手が、いやいやあと三回ヒットを打てばMVPは俺かもしれないとどや顔で打席に向かう。


「おやくそくや」


 変な関西弁で三球三振してベンチに戻ってきた。


 試合は不条理にもホームランの1点だけで9回裏まで進む。数分前までは軽口を叩いていたチームメイトもフォアボールで塁がすべて埋まってしまうと黙りこむ。一打出れば逆転負け……さよならヒットを押しのけて9奪三振の選手がMVPに選ばれることはないだろう。


 ツーアウト満塁に球場も緊張感に包まれた。フルカウントからの7球目カーンと外野に飛ぶボール。球場全体から歓声と悲鳴が同時に上がる! しかし、ボールは思った以上伸びずにセンターの定位置へ。


 MVPはもちろん椎名猛に輝き、僕は優秀選手賞に選ばれた。



           *    *    *


 プロ野球後半戦、スリーフィンガーファストボールと大きなカーブという二つの武器を持った僕らは無双だった。ピッチングを組み立てることより、負けるって美味しいの? 調子に乗りすぎる猛を抑えることの方が大変な仕事になった。最初に出会った頃は僕より低かった身長が今では頭一つ分以上大きくなっていた……。


 プロ野球になって初めてのレギュラーシーズンが終わる。チームは6位と低迷したが椎名猛個人の成績は防御率1.48登板回数22戦績は16勝2敗、最優秀新人賞、最多三振奪取投手賞、ベストナイン賞と高卒ルーキーとして大躍進。ちなみに僕は彼と一緒に最優秀バッテリー賞と新人特別賞をもらった。特別賞の理由は女性初のプロ野球選手というひいき目はあるが、出塁率6割という化け物的数字をたたき出したからである。エッヘン♪。


お読み頂いてありがとうございました。話のバランスを考え今日は一話投稿です。

面白かったり続きが読みたいと思って頂けたら、最新ページの下にスクロールした先に【評価】のボタンがございますので、ブックマークや評価、感想をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

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