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【完結】あの子は剣聖!! この子はエルフ!? そしてオレは操縦士-パイロット-!!!  作者: PRN
8章 あの子の剣 この子の杖 そしてオレはクエストにゃ

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166話 【VS.】神聖なる魔物 クエストキーパー ダモクレスガーゴイル

立ちふさがる門番

白き魔物は

悪意を欲す


別れの決意は

新たな出会いへと

 ニーヤの無声会話(テレパシー)による叫びが直接脳に届いた。

 怒りによって支配されていた明人が咄嗟にモニターを睨んだ瞬間。

 すでにそこには白い巨像が造形物の如きトゲだった羽で砂塵を舞い上げている。


『Kiii!! Kaaaaaa!!』


 霊長類を思わせる面長の口からは、ガラスをこすり合わせたかの如きかん高い耳障りな声を鳴らす。

 見る見る間にその全貌が明らかになっていく。

 突き出した彫刻の如き両手には鳥のような3本の爪。ヤギの如き角を生やし両手を広げるかの如き羽は、水晶のように背景を透かす。

 迫ってくる異常物体を視界にとらえて後悔する間もなく明人は、反射的に上へと声を発した。


「ジャハル! カラム! 逃げろッ!!」


 一瞬遅れて衝撃がワーカーを襲う。

 揺れる操縦席と霞む視界。モニターに映し出されたのは、ねとねと糸引く敵の口内。

 勢いの乗った一撃を受けたワーカーは、勢いそのままに数10メートル後方へと押しやられる。4つ足が食い込んだ入れ替え模様の石が、がりがりと跡を残して砕けていく。

 冷や汗がぽたりと頬を伝って流れ落ちる。明人は、手元と共に頭のスイッチを同時に切り替えた。

 即座にアクセルを踏み抜いて座席の両後部からアームリンカーを引き抜く。


「ぐっ! とまらねえ……!」


 リンクがはじまって両腕を同期させるもまるで押しだせない。超過技術(オーバーテクノロジー)のワーカーが力負けしている。

 卵を抱え込むように重機に貼りついたガーゴイルは、噛み付いた。

 カメラの前で幾度も口を開けては閉じを繰り返す。しかし、鍾乳石の如き牙はワーカーの丸いボディを沿うだけ。

 その様子をテレーレは、青ざめながら胸の前で手を結んで見つめていた。

 ときおり、ピクリと肩を揺らして目を堅くつむる。明人と画面を交互に見やるも眉を曇らせるだけ。


「ぐ、くぅ!?」


 なおもワーカーは、雪道でスリップをはじめたタイヤのようにずるずると滑っていく。 

 まるでハイドロプレーニング現象の如き滑りだした足が、食いつかない。

 そこで明人は、ワーカーに謝罪した。


「すまんワーカー! 耐えてくれ!」


 操縦士である悪手を使用する許可をとるもワーカーは、答えない。

 現在5速にギアが入っている。明人は、それを確認してクラッチペダルを踏んだ。

 先ほどコンソールを弾いてマニュアルモードに切り替えている。伝動装置が動力と切り離された状態になったワーカーは、火がついたように吠え滾った。

 左手でギアレバーを稲妻のような手さばきで2速に変速する。そして、足を上げてクラッチペダルを離す。

 刹那。エンジンが烈火の如く唸り声を上げる。エンジンの回転計は振り切れてレッドラインを差した。

 シフトチェンジによるエンジンブレーキ。過度なシフトチェンジをすることでエンジンの回転数が大きくなりすぎる状態になってしまう。オーバーフローを起こしかねないこの行為は、運転手にとって最悪の行動だった。

 しかし、回転数が上がったことでパワーが増したワーカーは、ゆっくりと足をもち上げて新たな石を踏み抜く。

 それでもまだ足りず。幾度も幾度も足をもち上げて徐々にスピードが殺されていった。

 次いで明人は、膝の上で震えながら青ざめるテレーレに指示を飛ばす。


「テレーレ! 支援魔法をワーカーにかけろ!」


 1拍子おいてからテレーレは、空へ手を掲げた。


「――はいッ! す、《ストレングエンチャント》!!」


 すると、上部ハッチの丸い穴の向こうで透明な赤いベールが揺らめいて落ちてくる。

 組みつかれたガーゴイルを無視してワーカー全体を包み込んだ。まるで白玉の身体のフチをなぞるように赤いオーラが貼りつく。


「ぐぐぐっ! おおおおおおおッ!」


「――KA!? Kiiii!」


 明人の気合の声に両腕が、前へ前へと押しだされる。

 同時にワーカーの爪が敵の両肩をしっかと挟み込んでガーゴイルを引き剥がしていく。

 そこへ、先回りして待っていたニーヤがワーカーを飛び越えてガーゴイルの鼻面へ華麗な蹴りを見舞った。


「Kiiiiiiiaaaaaa!!」


 残響を残してワーカーが通ってきた道を逆走するようにガーゴイルは、吹き飛ばされていく。


「ナイスニーヤ!」


『まだにゃ! 終りじゃないにゃ!』


 そのままニーヤは、猛スピードでガーゴイルへと追撃をかけるべく地を蹴った。

 嵐を乗り切った明人は、たまらず肺の空気を絞りだした。


「はあ……。死ぬかと思ったぁ……」


 カンカンカン。エンジンの熱で膨張した金属が、ワーカーが、まるで文句でも言うように異音で訴えかけてくる。


『明人! 大丈夫か!?』


 モニターの下部に小さく表示されたのはジャハルだった。

 胸甲から伸びる腕とハーフパンツから伸びる足は、すでに《トランス》済み。

 全員がうまく逃げおおせたという安堵が明人の胸にじんわりと安心感として広がっていった。


「ああ、大丈夫だ。でも、なんでいきなり動きだしたんだ?」


『それは、恐らくオマエと聖女様の声を攻撃と勘違いしたのだろう』


 チラリ。明人が他意もなく視線をすべらせるとテレーレは、怯えるように下に目を逸らす。


「……ごめんなさい」


「気にすんな。オレにも悪いところはあった」

 ニーヤとガーゴイルの激しい接戦をとらえながら明人は、考える。

 どうにもガーゴイルの動きを見るにワーカーへ近寄りたいらしい。それは、キングローパーも見せた挙動だった。

 それをニーヤは、巨体に関わらず軽やかなステップで蹴りを見舞って妨害する。

 参戦したカラムもまた、爪や拳を繰りだして応戦している。

 しかし、ガーゴイルには効いた様子もなく、すぐさまその骨ばった足で立ち上がった。


「くそっ……! なんで攻撃が効かないんだ?」


 忌々しく文句を口にしても明人の手は、ワーカーを操る。

 手頃な武器として歴史ある石柱を爪で挟むと、へし折って、構えた。

 すると、戦闘中の三角耳が首を回すようにこちらを向く。


『にゃあ! コイツは、石像になって寝ている間にダモクレス鉱石に変異したんだにゃ! だから、めっちゃ堅いにゃ!』


 その流麗な灰色の毛は、風を纏って頑強なる敵を押し倒す。


『Kaaa……! Kiiiiiii!!』


 神聖なる力を得た突然変異。ダモクレスガーゴイルは、それでもこちらに舌なめずりしながら手を伸ばす。

 ワーカーにこめられた悪意に光を見て求めるが如く。


『はああああ!』


 全体重を乗せるように飛んだカマルは、正面から鼻っ面へ拳を叩き込む。


『くっ……! これも効かぬか!』


 終わりが見えない攻防だった。

 今まで自身が過剰なまでに保護されていたことを明人は、身にしみて実感した。

 勝ち筋を模索する。ひとつふたつの案はあれど、どれも現実性に乏しい。

 ひとつは、腰の合成皮革(ひかく)製ポーチに入っている薔薇を模したベルを鳴らすこと。

 しかし、メリベルを鳴らして友だちをいきなり戦場へ呼びつけることに躊躇いがある。

 ふたつは、考えた瞬間に却下された。

 それは、キングローパー戦で使用した性転換の薬。しかし、あの硬い体に注入することもできねば、性別を変えて意味をなすとも限らない。

 底のない沼にずぶずぶと沈んでいくような気持ちの悪い錯覚。明人は、他者の行動を読むことはできても本能で生きる魔物の対応策を知らない。


「あ、あのっ……明人様すごい汗です……」


 テレーレは、焦って思考が纏まらない明人の頬を白い布で拭った。

 小さくすぼまった体は、かたかたと小刻みに震えている。その頬に触れる手も氷のように冷たい。

 そんな体を明人は正面から抱きしめた。花の香りが弾けるように鼻孔をくすぐる。


「きゃっ! あ、明人様!?」


 一瞬驚いたように跳ね上がるもテレーレは、諦めたようにきゅっと目をつぶって、ふにゃりと手を垂らした。

 顔に当たる銀糸の如き髪は、柔らかい。そして、その体もほんのりと暖かくて枝のように細い。


「いいか……? オレは……弱いんだ……わかるだろ……? 頼れる仲間がいないとこんなにも……弱いんだよ……」


 耳元で明人は、囁く。

 歯を噛むように、罪を吐きだすように、震える体で震える体をぎゅっと抱きしめる。

 画面の向こうでは、少しずつガーゴイルが近づいてきている。それを、大狐のニーヤと狼の父娘が懸命に足止めをしていた。

 当然、ガーゴイルも打たれるばかりではない。いい加減、妨害してくる面々を敵ととらえたのか。その鋭利な爪を振るって反撃にでる。


『Kiiiiiiiieeee!!』


『グニャッ!? ぐぅっ……!』


 硬度を誇る爪の前には、体毛すら役に立たない。

 横腹を引き裂かれたニーヤの毛がじわりと朱に染まった。

 目に見えてその動きが鈍くなっていく。


『ニーヤ様!? このぉっ!』


『待てっ! 冷静になれジャハル!』 


 カラムの静止を無視して飛びだしたジャハルは、たれ耳をはためかせて敵へと飛びかかる。

 しかし、まるで飛んでいるハエでも払うかの如くガーゴイルはそれをはたき落とした。


『がっ――!? うぐっ……!』


 大地に体が叩きつけられる寸前にカラムがその体をすくいとって救助する。

 圧倒的力の差とどうあがいても倒せぬという絶望感が満ちていく。

 傷ついていく仲間たちを横目に明人は、テレーレをひときわ強く抱きしめた。


「オレは英雄なんかじゃない。オレは臆病で、卑屈で、卑怯な男だ」


 そう言って、体を離すと触れ合っていた箇所がひんやりと冷えていく。


「あ……、うっ……、そのっ……!」


 呆けたような顔をしたテレーレは、なにかを話そうと口をぱくぱくさせて、陶器のような手を伸ばしたり下げたりするばかり。

 そして、明人は最終手段に移行するべく覚悟を決めた。


「認識コード840、舟生明人」


 指はコンソール横の黒いフィルムの上に置いて、マイクに向かって語りかける。

 敵の狙いがワーカーだとするならば、呼び水となるワーカーを置いていけば逃走は容易だろう。

 ここで命が散ることを許さない。それでも、操縦士として愛機を手放すのは苦渋の決断だった。


「モード変更。残業(オーバータイム)モードを頼む」


 僅かにワーカーの鼓動する音が不調する。

 極端な操縦によってエンジンのどこかが壊れたのかもしれない。

 すると、操縦席全体がほんのりと蒼に包まれていく。硬いイスも、手垢で汚れたコンソールも、景色のみが映しだされた3枚のモニターも、すべてが未知の蒼、F.L.E.X.を帯びていった。

 こうすることで、原型を保ったままのワーカーと再会できるかもしれないという一縷(いちる)の望み。

 明人は、コンソールを撫でてやる。文字通りに1本の線にすがるかのような淡い希望とともに。


「ごめんな……ワーカー。もしかしたら、ここでお別れかもしれない……」


 愛機は、返事をしない。愛機は、重機である。

 ゆえに、なにも喋らない。

 じわりと目の奥が熱くなっていく感覚を覚えて明人は、鼻をすすった。

 共に死ぬはずだった。しかし、生きたいと願った上に約束を裏切るようなマネをして1人だけ生き残る。それはきっと一生癒えぬ傷となるだろう。


「ワーカーをこの場に残して戦闘区域から脱出するぞ」


 触れる手は、友への手向け。割れた鏡を残して明人は、無抵抗のテレーレを軽くもちあげた。

 次に出会う姿も丸いままであることを祈り、ワーカーを敵に捧げる。

 しかし、ここでひとつの疑問が残った。それに気づいたのは愛機との別れを惜しんでのことなのか明人には、わからない。


「……アイツは眠っていた?」


 外にでると風は、汗ばんだ肌に冷を運んでくる。

 遺跡に降りかかる秋の日差しは、まるで踊るように輝いていた。

 お姫様抱っこをされた女王は、頬を染めてぼんやりと空を見つめている。


「……なんでだ? なんでガーゴイルは眠ってたのに……オレたちは魔物に襲われたんだ?」


 魔物の集団は、逃げるようにして明人たちへ襲いかかってきた。

 それは恐怖する対象がいなければならない。しかし、ガーゴイルは動かずサーガ遺跡にいつづけたとニーヤは言う。

 テレーレは、そっと手を伸ばす。明人ではなく高い空色の空へ向かって。


「明人様……アレはなんでしょう?」


 魂の抜けたかのように思案していた明人は、その声を聞いて無意識に上を見た。

 次第に近づいてくる影がひとつ。優雅に円を描いて空を泳ぐ物体がそこにいる。

 バッサバッサ。羽ばたくたびに風を裂く音が木霊した。接近してくると徐々に風は強くなり、遺跡に大荒れを巻き起こす。

 渦巻くように砂が舞い踊ってあっという間に周囲の風景が砂色へと変化していった。

 魔物が逃げ出すほどに恐ろしい者を明人は、見上げて理解する。


『どけ。掃除の邪魔だ』


 ビリビリと脳を震わせる低音の囁き。

 目を丸くして降臨したソレを見上げていたニーヤたちは、いっせいにその場から飛び退いた。

 そして、ソレは鱗に包まれたほら穴の如き鼻から大きく息を吸い込む。胸部分の鱗が紅蓮に染まって照り輝く。


「Kia……? kiiiiiiiaaaaaaaa!?」


 本能が危険を察知したのかガーゴイルは、白くトゲだった翼を開くと逃げるようにして羽ばたいた。


『逃げられると思っているのか? 答えは……否だ』


 ギザ刃の口より発せられた火柱の如き炎獄の炎は、大慌てで逃げいていくガーゴイルの背中を一瞬のうちにして呑み込む。


『Kaaaaaiiiiiiiaa――!!』


 燃え盛る赤のなかで影は、金切り声を上げるもそれはすぐに止まる。

 あの硬度を持ってして骨すらも、炭ですらも残さぬ灼熱。牙の隙間から高温の余韻を立ち上らせて龍は、まるで空を支配するかの如くその場で羽ばたく。


『汝らは如何用だ。決闘ならば受けて立つぞ。聖女に王に2つ名か。良いパーティならばこその良い決闘ができそうだ』


 地鳴りのような威厳のある低い声。黄土色の鱗を身に帯びたルスラウス世界最強種は、その巨躯でもってして笑う。

 そそり立つ岩肌は、まるで要塞の如く。


「あれが龍族……!」


 君臨せし龍を前にして明人は、ルスラウス最後の種と対面した。



○○○○○


両性巨乳女性よりの天使が解説するSSのコーナー

……………

「ほぉい!! ですのよぉうっ!! グルドリーもつき合うですのよ!!」


「エルエル。アナタって定期的に壊れるわね……。叩いて直るかしら?」


「今回はー、ズバリー、《トランス》ですのよー」フヨフヨ


「体の一部を獣化させる魔法ね。……それだけよ?」


「ですのよ。しっかーし、ニーヤ様はちょいと違うんですのよ」


「ああ、あの子は元が獣ね」


「そうそうですのよ。……いきなりネタバレするのやめてもらっていいですのよぉ?」


「ソレ以外にも龍族は――」


「ちぇい!」ブォン


「いたっ! ……くはないけど、おしりでぶつかるのやめてもらえる?」


「龍族は、種族特性で変化するんですのよ。だから、魔法ではなく生態ですのよ。ちるちるしても元には戻らないんですのよ」


「獣族で勘違いしがちなのは、女性は普通で男性は毛むくじゃらなのよね」


「ですのよ。つまり女性の毛問題は、耳と尻尾意外で魔法による変化ですのよ」


「にゃにゃにゃを除いてね。あの子は、例外中の例外よ」


「んで、男性は毛むくじゃらが基本ですのよー」


「なぜそんなことになったのかしら?」


「男は、よく闘うからですのよ。進化とは時として意図しないことも多いんですのよ」


「男女で見た目が変わるのって不思議ね。……アナタもだけど」


「えっへんですのよ!」プルン


挿絵(By みてみん)

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