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戦艦島流拉致方法

 おはようございます。

 今日も更新します。



 八島グループの超ブラック企業伝説はともかく。


 ちょっと他人には言えないことで怪我をした場合、どうすればいいのか? その答えをスピーカーの声が教えてくれた。


「昨夜から今朝にかけて戦艦島全体で鎮痛剤は17箱、傷薬は8箱、消毒薬も8箱、包帯は2巻購入されていて、アルファの購入分以外は追跡完了。いずれも不審な点なし。そのアルファに今朝仲間だと思われる人物が接触した。以後、接触した仲間らしき人物をブラボーと仮称する。現在ブラボーはB地区からA地区に移動中」


「あれ、見て」


 トラックはA地区に入っていた。


 周囲は兵器工場ばかりということでもある。そこを1人の男が歩いていた。


「あいつが首を負傷した仮称アルファに接触した仮称ブラボー。おそらく買い物を頼んだと思う。薬局での経験から出歩くと怪しまれると警戒してるみたい」


 あのときの男のような気がする。


 機械化されていて右腕にサブマシンガン、左腕にショットガンを仕込んだ奴だ。


 記憶を貯めこんだクラウドを参照して確認する。


 うん、間違いないな。


 そして、ルイが言うようにブラボーは右手に白いレジ袋を提げていた。


 食料の買い出しを頼まれて、近くのコンビニで弁当でも買ってきたのだろうか?


 トラックのダッシュボードに手を伸ばし、ルイは備えつけられたモニターをナビゲーションシステムから画像データに切り替えた。


 そこには男のやや斜め気味の顔が表示される。


「照合結果は?」


 いきなりの問いかけに驚いたが、僕に対する質問ではなかったようだ。


 そのモニターの横にあるスピーカーから声がした。


 エロボイスで返事だ。



『テン、ナイン、ナイン、ナイン』


「0.001パーセントの確率で冤罪か……許容範囲は?」


「いいんじゃないの? とりあえず身柄を拘束すれば」


 こっちを向いて声をかけてきたから、今回は僕に対する質問だろう。


 ほぼ確定なんだから捕まえてもトラブルに発展する可能性はゼロに近い。


 よくわからないけど、間違っていたら謝ればいいんだし。


 問題になったとしても、せいぜいアルバイトを馘になる程度でしょ、どうせ。


 もし馘になったところで、ブラックなアルバイトなのだから、むしろ助かる。


 時給が安くてもいいから、安全安心な仕事が欲しい。


 そんなことより入学式をやっている間にもルイを襲撃した犯人を特定し、監視していた部隊の方に興味を惹かれた――写真部とか、映画研究部とか?


 いや、八島高校の生徒は入学式があったから全員がそっちに参加していたはずで、中学か大学か、あるいは八島警備保障の社員かもしれない。


 それが誰だったとしても、すでにブラボーに関しては僕たちに引き継がれている。


 こいつは僕たちのターゲットだ。


 周囲に他の人影はない。


 当然だろう。


 工場は1日8時間の3交代制となっている。


 その交代時間の前後30分くらいは通勤で混み合うが、それ以外の時間に路上を歩く人なんかいるわけない。


 僕たちのようにトラックであれば部品や製品の運搬など通勤時間以外に走っていても不思議はないが、作業着ではなく黒いシャツにジーンズという私服で男が徒歩というのは珍しい――怪しい。


 50メートル、40、30、20と近づいていく。


 ところで、ルイは作戦みたいなことを口にしないが、どうすればいいのだろう?


 車から降りて、飛びかかったらいいのか?


 いや、相手は機械化改造体。下手に飛びかかったら反撃されるし、そうなったら、たぶん死ぬ。


 もちろん、僕が。


 それなら銃を抜いて「フリーズ!」みたいな感じ?


 アメリカ映画でよくあるように。


 しかし、トラックはいっこうにスピードが緩む様子がない。


 もうあと数秒でブラボーとすれ違ってしまう。


 あるいは後ろから襲うつもりか?


 慌ててルイに質問した。


「どうやって捕まえる?」


「頭さえ残せば、残りはどうなっても問題ない」


 すれ違う寸前、ルイはちょっとハンドルを動かした――ブラボーのほうにタイヤを向ける。


 次の瞬間ゴン! と衝撃を感じた。


 なにかに乗り上げたような嫌な感触がお尻に伝わってくる。


 続いてゴンゴンと後輪がなにかを乗り越える。


「轢いた?」


「轢いた」


「轢いた?」


「たから、轢いたと言ってる」


 ドン引きだ。


 跳ね飛ばすとかではなく、タイヤでブラボーの体を踏み潰したのだ。


 前のタイヤで踏み、後ろのタイヤでも踏み、それからやっとブレーキをかけた。


「捕縛の予定じゃなかったの?」


「だから頭が残ってればいいわよ、どうせ体はほとんど機械なんだろうし。機械だったら修理もできるし、部品交換も可能。大切なのは脳だけ」


 ルイは平気な顔でそんなことを言う。


 なんと言うか……価値観が違いすぎる。


「で、その潰れたのはどうする? トラックの荷台にでも放り込んでおけばいい?」


『積み込み完了。バイタルチェック中』


「もう終わったみたいね」


 不思議なことを呟いて、ルイは再びトラックを走らせた。


 慌ててバックミラーを確認してみると、赤いもので禍々しくペイントされた道路が見えるものの、人型の物体は存在しない。


 どうやって積んだんだ?






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