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BLUE&GOLD  作者: 三日月


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8/8

エピローグ&プロローグ

お楽しみください

 救出された舞は、意識を失ったままアンドロギュノスの医療施設に搬送された。


 ゆかは腕を組み、心配そうに舞を見つめていた。


 エミリーはさすがに部外者扱いで別室で待機していた。


 マユリが説明した。


「幸い舞さんには外傷はほとんどないのだよ」

 

 ゆかが頷く。

 

 カプセル型のユニットに舞を寝かす。


「もう少しで彼女は目覚めると思う。その時の記憶がどうなっているかが気がかりなのだよ」


 マユリが舞の髪を撫でながら優しい目を向けた。


 二人は今回失われた命のことに想いを馳せた。


「茜……結城夫妻……失われたものは大きいけど私たちは託された想いと願いを紡いでいかなければならないのだよ……舞さんは必ず守りきるからね」


「わかっているわ……ところで舞さんのことなんだけど」


 ゆかはあの時の信じられないほどのエナジーについて報告した。


「にわかには信じられないのだよ……しかし、本当ならば、この娘には私たちの想像もつかない力が眠っているのかもしれない」

 

 マユリはカプセルの中で眠る舞を見つめた。

 

「これ以上、この娘を危険にさらすわけにはいかないのだよ。今回の報告書には、特異な反応は見られなかったと記載することにしよう」

 

 ゆかは静かに頷いた。


「それよりもゆか、あのカンパニーのナンバーワンのJOKERはどうするんだい?」


「エミリーよ」


「で?」


「で?」


「で?なのだよ」


「だから何よ」


「どうしてここにいるのかってことなのだよ」


「本当に色々あったのよ」


「ゆか、嬉しそうに喋るのだな」


「うるさいわよ」


 そして、舞の意識が戻った。

 

「舞さん」

 

「……ここは?」

 

「アンドロギュノスの医療施設なのだよ。もう大丈夫だからね」

 

「お父さんとお母さんは……?」

 

 ゆかとマユリは顔を見合わせた。

 

「私……捕まって……その前に何か……」

 

 舞は額を押さえた。

 

「思い出せない……頭が……痛い……」

 

「舞さん、今は無理に思い出そうとしなくていいのだよ」

 

 マユリは舞の手を握った。

 

「身体を休めることが先なのだよ」 


 舞はまた眠りに落ちていった。


 ◇◇


 マユリとゆか、エミリーが舞のベッドを囲んでいた。


 二週間の入院で、舞の体力は回復していた。

 

 しかし、結城家で起きた出来事を思い出そうとすると、頭の中が真っ白になった。

 

 両親が亡くなったことは理解している。

 

 それでも、二人の最期だけがどうしても思い出せなかった。

 

 結城家の火災は、事故として処理されていた。

 

 舞はその説明を受け入れ、両親は事故で亡くなったのだと思っていた。


「舞さん、あなたのこれからのことなのだけど、多分施設に行くことになると思う」


「わかってます」


「もう一つ、辛い話をしなければならないの」

 

「……はい」

 

「これからのことを考えると、もう結城の姓は使わない方がいいと思う」

 

 舞は俯いた。

 

「……結城は、お父さんとお母さんがくれた名前なんです」

 

「わかっているわ。だから、忘れろとは言わない」

 

 ゆかは舞の手を握った。

 

「あなたがあの二人の娘であることは、何も変わらない。でも、今の名前のままでは、また狙われるかもしれないの」

 

 舞はしばらく黙っていた。

 

 そして、小さく頷いた。

 

「……わかりました。結城という名前は、私の中に大切にしまっておきます」

 

 舞はゆかを見つめた。

 

「これからは、舞として生きていきます」 

 

 舞は明日、ここを出て施設に行くことになっていた。

 そしてできることならもう会わない方がいい。


 それでも、何かあったときには助けられるようにしておきたかった。


 ゆかは舞に名刺を渡した。


 名刺には妖精の絵が描かれていて【環境保護団体】の肩書きと【ゆか】の名前と電話番号が書いてあった。


「舞さんこれを渡しておくわ、何か困ったことができたらすぐにここに連絡するのよ」


「ゆかさん……絵が上手で羨ましい」


 やっと舞に笑顔が戻りつつあった。


 外を見るとため息が出そうなほどの茜色の空だった。


◇◇◇


 ゆかとエミリーは部屋に戻って、テーブルを挟んで椅子に座っていた。


「ゆか、さっきの絵はなんなんだ?」 


「絵?」


「そうだ、舞さんに渡した連絡先に書いてただろ?」


「妖精よ、上手かったでしょ?」


「あぁ優しい、いい絵だったよ」


 不意に褒められてゆかの顔が赤くなった。


 恥ずかしさを隠すように尋ねた。


「ところでエミリーはこれからどうするの?」


「もう古巣には戻れないからな、それに……」


「それに?何よ?」


「私もなってもいいと思う……なんだ?その……フェアリーとやらに……」


「厳しい仕事よ」


「ゆか……お前とならやっていけそうな気がしてる」

 

「茜も、結城夫妻も……あの人たちが護ろうとした未来を、今度は私たちが護っていかなきゃね」

 

「そうだな」

 

「大事なことは一つ。いつか人は死ぬ。その瞬間まで精一杯生きる。それだけよ……そして、そのときにはエミリーに一緒にいてほしいと思ってる」

 

「そうか……わかった。それを私の揺るぎない覚悟として魂に刻もう」


「ありがとう……エミリー」


 ゆかが聞いた。


「とりあえずこれからどうする?」


「腹が減ったな」


 二人は顔を見合せ笑った。


「肉と酒と……」


 その先は言えなかった。


 唇が塞がったからだ。



 ◇◇◇



 ——6年後


 ベッドで寝ていたゆかがスマホを見ると着信履歴と留守電が入っていた。


 内容を聞き飛び跳ねるように起きた。


「どうした?ゆか」


 ガウンを羽織ったエミリーが聞いた。


 音声をスピーカーにしてエミリーにも聞かせる。


 聞きながら2人は素早く服を着て、留守電が終わった時にはもう準備が出来ていた。


 結というレゾナントからのSOSだった。


 舞という名前がスピーカーから聞こえた。


 二人の顔が引き締まった。


「エミリー」

「ゆか」


「「行くよ!」」


 青と金が手を繋いで走っていく。


 


読んで頂きありがとうございます。


前作フェアリー・レゾナンスの前日譚なのでこちらもよろしくお願いします

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