プロローグ
甲斐正義 日本人
イケメン
そして怪我人
その日は、朝からひどい雨だった
空を覆う黒い雲から
絶え間なく雨が降り注いでいる
道路には水が溢れ
傘を差した人々は
足早に通り過ぎていく
その雑踏の中に 一人の男がいた
薄汚れた上着
伸び放題の髪
落ち着きなく動く目
男は周囲を気にする様子もなく
ふらふらと歩いていた
そして 不意に足を止める
その視線の先には
もう一人の男がいた
笑った?
男が動いた
鈍い衝撃
腹部に
焼けつくような痛みが走った
何が起きた?
わからない
アングルが降りる
包丁?
握る手
血塗れ
「……っ」
声がだせない
ただ
息が漏れる
何かを叫ぶ 男
激しい雨音
言葉は聞き取れない
足元が揺らぐ
膝に力なく
身体は傾く
遠くから悲鳴
「誰か! 救急車を!」
何も聞こえない
その日は 朝から土砂降りだった
◆
知らない天井
規則的な電子音
とても遠く感じる
消毒液の匂い
ゆっくりと開く目
己の躰 質量
耐え難い痛み
腹部
『ここは……病院』
状況把握を試みる
情報不足
ここにいる理由?
『何があった?』
しばらく天井を見つめた後
男は掠れた声を漏らした
「俺は、いったい……」
主人公は刺されました。
亡くなって転生?しません。
死んでいないので
なぜ?




