↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/68

68 クラッススの興行

紀元前76年10月。

ついに大富豪クラッススが主催する興行が幕を開けた。


連日繰り広げられる熱戦にローマ市民が沸き立つ中、興行は滞りなく進み、明日、この興行最大の目玉試合である、レンとセウテスのデスマッチが行われる。


レンはローマ郊外に設営された剣闘士用の臨時テントの中で、明日の戦いに思考を巡らせていた。


(次が剣闘士として最後の戦いだ。

セウテスには悪いけど、全財産をはたいて買った修羅モードを出せば、試合は一瞬で終わる。だから、ある程度は客を楽しませるために互角の戦いを演じるけど、油断はしないからな)


レンは負けることなど考えていなかったが、セウテスを警戒し、スキルの最終チェックを行う。


(ステータスオープン)


■名前: レン

■年齢: 17歳

紀元前92年9月産まれ

■出身地:ガリア

■容姿:黒髪黒目の美形。戦闘適性の高い体格。


■家族なし

■パトロン クラウディア

■配下4名


■所持金

0デナリウス

(金貨0枚 銀貨0枚、銅貨0枚

交換比率1対20対300)

■資産 パキポサ小屋(価値800デナリウス)

パキポサ蛾(価値不明)


■称号:ガリアの英雄(全能力値補正+20%)

■加護

★イオ(全能力値補正+12%)

効果時間2日


■レベル: 207

★HP(体力): 768/768

(+12上昇)

SPスタミナ: 442/442

(+14上昇)

★MP: 4/948

(+165上昇)


■【能力値】(平均的な剣闘士400)

★筋力:540

(+13上昇)

★敏捷: 624

(+11上昇)

★耐久: 598

(+12上昇)


■■【スキル】

■非発動型

★二刀流術 Lv.52(攻撃力&防御力+520%)

★回復術 Lv.94

(+3上昇)

★カンフー Lv.30

★痛覚軽減Lv.50

(Lv.75で軽減度の調整解放)


■発動型(必要MP 10)

★修羅モード Lv.60

(+59上昇)

(スキル効果時間を 1秒に圧縮し、そのぶんの威力を1秒に上乗せする倍率が発生する)

※例:筋力強化 Lv.68、通常180秒 → 1秒に圧縮

 → 680%×180秒 × 0.60倍(修羅Lv.60) = 73440%の上昇バフ

★筋力強化 Lv.74(筋力+740%)

(+6上昇)

★スタミナ強化 Lv.74

(+6上昇)

★敏捷強化 Lv.74

(+7上昇)

★集中力強化 Lv.73

(+6上昇)

★耐久力強化 Lv.73

(+6上昇)

★『敵攻撃の先読み Lv.75』

★動体視力強化 Lv.73

(+6上昇)


■■重要度低スキル

■非発動型

★短刀術 Lv.11

★盾術 Lv.5

★言語理解(ラテン語/ガリア語) Lv.Max ※憑依転生特典

★気力枯渇耐性Lv.95。ダメージ95%カット。気絶無効。

(+1上昇)

★毒抵抗 Lv.33

★病気耐性 Lv.30

★性病耐性 Lv.30(maxLv.50)

■発動型(必要MP 10)

★地獄耳強化 Lv.60

(レベル+10上昇)

★隠密強化 Lv.60

★跳力強化Lv60

(レベル+10上昇)

★話術 Lv.60

(レベル+10上昇)

★避妊 Lv.50(maxLv.50)

★毒検知 Lv.57

(レベル+7上昇)

★視力強化 Lv.50

★性的技巧 Lv.64

(レベル+3上昇)

★感情伝播 Lv.70

(レベル+13上昇)

■ポイント残高0


(修羅モードだと、筋力が瞬時に通常の73440%出せる。つまり……734倍、これホントヤバいよな。誰がこんな力に耐えられるんだよ)


レンが心の中で呟いた時、突如AIの声が頭に響いた。


《そうですよね! やっぱりレンさんも修羅モードは“やりすぎ”だと思いますよね!》


「うわっ!? お前、突然声かけんな! 心臓が止まるだろ!」


《そんなレンさんに重要なお知らせがあります!》


「人の話を聞けよ!」


AIはレンの言葉を無視して続ける。

《AI運営会議で修羅モードの危険性が議題になりまして、“さすがに734倍は世界の物理法則を壊す”という結論になりました》


「いや、まあそうかも知れないけど別にいいと思うぞ……」

(俺にしかメリットないからな)


《そこで我々AIが、神様に“下方修正案”を提出したところ、修羅モードは人生で一度だけ使用可能 という新ルールに決まりました! おめでとうございます!!》


「はあ!? ふざけんなよ、お前! なに勝手にナーフしてくれてんだ!! それって当然なにか補償はしてくれるんだろうな!?」


《ご安心ください! ご使用前なら、特別に修羅モードスキルを返品することが可能になりました! 返品した場合、全額返金と全ポイントの返還を保証いたします!》


「その保証じゃねえよ、償いとしての補償だ!!」


《そんなものはありません! 元から一度だけ使用可能なスキルだったと思って諦めるか、返品するかの二択です》


「ぐぬぬっ……。返品しろとか言うけど、返品してセウテスに勝てるのかよ」


《そうですね……。レンさんもこの4か月でスキルを成長させたましたが……、現状はよくて五分五分だと思います》


「じゃあ、返品なんか無理だろ!」


《そんな事は、我々は知りません。それでは、返品したくなったら使う前にお呼び下さいね。では失礼します!》


「あっ、逃げやがったな!」


「旦那様、何が逃げたんですか?」


見るとテントの入り口にイオが立っていた。彼女の手には、夕食の大麦のお粥と少しの干し肉を乗せた盆があった。


「いや、何でもない。なんか虫がいたんだ」


「そうですか。お食事をお持ちしましたが、すぐに召し上がりになられますか?」


「ありがとう、イオ。一緒に食べよう」

「はい」


イオは小動物のような愛らしい笑みを浮かべ、レンの隣に静かに腰掛けた。

だが、その黒い瞳の奥には、わずかに不安の色が滲んでいる。


「旦那様、明日はセウテス様と戦われるのですよね……」


イオがデスマッチと聞いた時から、密かに神々に祈りを捧げていることをレンは知っていた。


「……怖がらせてごめんな。でもこれが最後だから」


イオは首を振った。


「怖くなどありません。私は、旦那様が必ず勝って戻ってこられると信じております」


レンはイオの華奢な肩を引き寄せた。


「カプアで約束しただろ。俺が解放されて、お前が正式に俺のものになったら――俺の子供を産んでくれって。

その約束、必ず果たしてみせるから」


イオの頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。

長い睫毛が嬉し涙で細かく震え、彼女はレンの胸にそっと体を預けた。


「はい……! 旦那様。私はどこまでも旦那様についていきます」


胸元から伝わってくるイオの小さな身体の温もりと、健気な決意。

レンは必ず生きて帰ると、心に誓った。



ーーーーー

翌日の午後三時。


闘技場にあるバルコニーの特別席には、六人同盟のうち、四人が集まっていた。

クラッスス、クラウディア、マニウス、そしてカエサルである。


ポンペイウスは現在、ヒスパニア(スペイン)のセルトリウスの反乱鎮圧に遠征しており、しかもちょうどラウロンの戦いでセルトリウスに敗れ、大苦戦をしている最中だった。


マニウスがカエサルに声をかける。


「カエサル。先日はガイスに、裁判を逃げられたらしいな。こんな所に来ている暇があるのか?」


カエサルは紀元前77年にスッラ派の大物ドルベッラの裁判に敗訴したあと、めげずに再びスッラ派の大物ガイスを汚職で訴え『第二の裁判』を起こしていた。

だがガイスは職権を利用して裁判を回避したため、カエサルはまたしても裁判に敗北していた。


カエサルが笑顔で応える。


「大丈夫か、だと? マニウス、心配してくれるのはありがたいが、的外れだ。逃げ回っているのは私の方ではなく、裁判を恐れて護民官の衣の後ろに隠れたガイスの方さ」


「ほう、その威勢がどこまで続くかみてみよう」


マニウスの言葉通り、カエサルの状況はとても悪かった。


カエサルはスッラ派の大物を告発した二度の裁判に負けたため、彼自身も身の危険を感じていた。そのため心の中ではすでに、弁論術の留学という口実で、ギリシャのロドス島(トルコの沿岸近く)に向かう決意を固めていた。


そして、この数ヶ月後、カエサルは春の訪れとともにロドス島へ旅立ち、史実通りキリキア海賊の船に襲われ、拉致されることになる。


「叔父様、わたくしたちは同盟しているのですよ。カエサルを敵視しても意味が無いわ」


「これは敵視ではなく、単に男同士の挨拶のような会話だ。そうだろカエサル?」


マニウスの言葉にカエサルは皮肉の笑みを浮かべた。


「その通りだ、クラウディア。ところで――」


カエサルの視線はクラウディアのお腹へと注がれる。


「子供が出来たから、結婚したそうじゃないか。どうして、私を結婚式に呼んでくれなかったんだい? もしかして相手の男は、どこの馬の骨とも知れないような男なのか?」


カエサルが冗談っぽく言ったのに対し、クラウディアは笑って応えた。


「ええ、その通りよ。一応はパトリキ(貴族)の三男だけど、貴方に会わせる必要のない、賭けと女が好きなだけのダメな男よ。今後もご紹介するつもりはないから、どうぞお忘れになって」


「そ、そうか……。それは……手厳しいね」


あまりに潔く自分の夫を「ダメ男」と言い切ったクラウディアの態度に、マニウスは顔をしかめ、さしものカエサルも面食らったように苦笑いするしかなかった。


その時、バルコニーの入り口から、重厚な足音が近づいてきた。

一同が視線を向けると、今回の興行の最高責任者であり、大観衆を金の力で集めた大富豪マルクス・リキニウス・クラッススが、笑みを浮かべながら歩み寄ってくるところだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。