23 スキル大量取得
紀元前77年11月。
大貴族マニウスが主催した五日間の興行が終わり、バティアトゥス養成所の一行は、馬車に乗りカプアへの帰路についた。
今回の活躍により、レンの身分の昇格は誰の目から見ても間違いない。
だがレンの扱いはまだ“仮の一流剣闘士”のため、足首には再び鉄枷が付けられた。
剣闘士の階級はオーナーが決めるものであり、現場を任されているオエノマウス教官といえども、勝手に昇格させることはできない。
剣闘士の階級分けは、養成所により異なり、
バティアトゥス養成所では、次のような階級分けがされている。
★一流剣闘士︰エリート
★二流剣闘士︰ベテラン
★三流剣闘士︰平凡
★四流剣闘士︰新人、見習い
現在のレンの正式な階級は三流剣闘士だ。
そのため二流剣闘士への昇格は確実視されており、場合によっては“一流剣闘士”への昇格もあり得る。
カプアへの帰路の初日、夕暮れ前に宿泊施設に到着し、レンは馬車から降りる。
剣闘士たちが泊まる宿は、一般の旅人が使う宿屋ではなく、街道沿いの“公的宿営地”と決められている。
ここは本来、軍や護送隊のために造られた施設で、外壁は高く、夜間は施錠され、剣闘士が逃亡できない構造になっていた。
レンはまだ“仮の一流”だが、宿営地では下級剣闘士たちとは別の、上級者用の区画に入れられた。
扉は鉄格子で施錠されるが、寝床も食事も明らかに良い。
(ふう、食った食った。
やっと一人になれたし、そろそろスキルの取得をするか)
今回の試合でレンが得た褒賞金は 2200デナリウス。そのうち、レンの取り分は 700デナリウスだった。
もし700デナリウスを全て奉納すれば、7万ポイントになる。
そのためレンは、ほくほく顔でステータス画面を開いた。
■名前: レン
■年齢: 16歳
紀元前92年9月産まれ
■出身地:ガリア
■家族なし 孤児
■容姿:黒髪黒目の美形。戦闘適性の高い体格。
■所持金 銀貨708枚
■称号:ガリアの新星(全ステータス補正+10)
★レベル: 47(+20上昇)
(最大レベル999)
★HP(体力): 429 / 429
(+52上昇)
★SP: 158/ 158
(+20上昇)
★MP: 1/172
(+21上昇)
(おっ、レベルが20も上がってるな。これで体力は平均的な剣闘士を超えたぞ)
■【能力値】(平均的な剣闘士400)
★筋力: 304
(+33上昇)
★敏捷: 419
(+33上昇)
★耐久: 251
(+33上昇)
(敏捷も平均を超えた。スキルでブーストすれば、平均の2倍。まず俺に勝てる奴はいないだろうな)
■【スキル】(最大レベル100)
非発動型
★二刀流術 Lv.5(攻撃力&防御力+50%)
(+3上昇)
★短刀術 Lv.11
★盾術 Lv.5
★言語理解(ラテン語/ガリア語)
★魔力枯渇耐性Lv.82。
発動型(必要MP 10)
★筋力強化 Lv.10
★反応速度強化 Lv.10
★集中力強化 Lv.10
★敵攻撃の先読み Lv.62
★ポイント残高2000
(やっぱり、試合では武器スキルのレベル以外は伸びないな……。
でも、確実に強くなってる。よし、次はHELPだ)
《ポーン――はい、サポートセンターAIです。何か御用ですか?》
(なあAI、ポイントと金が入ったから新しいスキルを取得したいんだけど。おすすめのスキルを教えて)
《分かりました。現在のおすすめのスキルを表示します》
(さすがAI、反応が早いな)
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■常時発動型
★回復術 Lv.1(全ての回復速度がレベル1につき10%早くなる)取得ポイント5000
★痛覚軽減 Lv.1(レベル1につき痛みが1%軽減)取得ポイント5000
★毒抵抗 Lv.1(レベル1に毒への抵抗力10%上昇)取得ポイント5000
★性病抵抗 Lv.1(レベル1に性病への抵抗力10%上昇)取得ポイント5000
★剣術 Lv.1(レベル1につき攻撃力と防御力が10%上昇)取得ポイント1000
★格闘術 Lv.1(レベル1につき攻撃力と防御力が10%上昇)取得ポイント1000
★弓術 Lv.1(レベル1につき攻撃力と防御力が10%上昇)取得ポイント1000
★話術Lv.1(レベル1につき交渉力10%上昇)取得ポイント5000
■発動型
★耐久力強化 Lv.1
(気功でダメージをカット。レベル1につき0.5%)取得ポイント1000
★SP強化 Lv.1
(レベル1につき10%アップ)取得ポイント1000
★地獄耳強化 Lv.1
(レベル1につき聴力10%アップ)取得ポイント1000
★隠密強化 Lv.1
(レベル1につき気づかれにくさ10%アップ)取得ポイント1000
★跳力強化Lv.1
(レベル1につき跳力10%アップ)取得ポイント1000
ーーーーーーー
(いやいやいや!! めちゃくちゃ種類が増えてるじゃねえか!
確か、前回で殆どのスキルを取得した筈だよな!?)
《いいえ。前回は予算に合わせたお勧めスキルを表示しただけです。今回は予算も増えたのでピックアップを増やしました》
(……そ、そうか)
レンは顎に手を当てて考える。
(……これは、多すぎて迷うな。
取り敢えず絶対に必要なスキルから取るか。まずは回復術だな。もう長期休養はしたくない)
《そうですね、回復術があれば発動系のスキル訓練もはかどります》
レンは『うんうん、そうだよな』と頷く。
だが常時発動型のスキルは、ポイントでレベル上げしないと、なかなかレベルが上がらないことを思い出した。
(なあ回復術のレベルを上げるのに、どれくらいポイントが必要なんだ?)
《スキルのレベル上昇にかかるポイントを表示します。これは全スキル共通です》
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■Lv.1 → Lv.10 1万ポイント
■Lv.10 → Lv.20 2万ポイント
■Lv.20 → Lv.30 4万ポイント
■Lv.30 → Lv.40 8万ポイント
■Lv.40 → Lv.50 16万ポイント
■Lv50 → Lv.60 32万ポイント
■Lv.60 → Lv.70 64万ポイント
■Lv.70 → Lv.80 128万ポイント
■Lv.80 → Lv.90 256万ポイント
■Lv.90 → Lv.100 512万ポイント
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レンは視界に浮かぶ数字を見て、思わず眉をひそめた。
(これ経験値の表だよな。……高っ。レベル100にするのに512万もいるのかよ)
レンは唸りながら、どうするか考える。
「……それじゃあ、回復術を取得する。レベルは20までアップしてくれ)
《お客様、ポイントが足りていません。まずは払うものを払いましょうや》
(誰がお客様だよ。じゃあ銀貨700枚奉納で)
その瞬間、
トースト通知がレンの視界に流れる。
★ポイント残高が72000になりました
★回復術 Lv.1を取得しました
★回復術 がLv.20になりました
★ポイント残高37000
(処理が早いな!
それじゃあ……次は、何にしようかな……ん、格闘術?)
《格闘術は、ギリシア由来の総合格闘術、パンクラチオンです。
打撃・投げ・関節技を含む、古代の総合格闘術です》
(格闘術は今はいらないな。消去……いや、……そうだ! これだ!!)
《? ……何が“これ”なんですか?》
レンは軽くシャドーのように拳を振りながら応える。
(ドロミコスの野郎だよ。アイツが俺みたいに怪我した時、一発食らわせてやるんだよ!! 俺も、一発はやり返す権利があるだろ!!)
《……そうですね? では、格闘術を取得しますか》
レンは眉を顰め、うなる。
(ん~。ギリシアの格闘術とか知らないし、カンフーとかは無いの?)
《ありますよ。カンフー、空手、太極拳など、主要な武術は一通り揃っています》
(おお、すげぇ。それじゃあ、カンフー取得で、レベルは10にしてくれ)
《了解しました》
トースト通知が流れる。
★カンフー Lv.1を取得しました
★カンフー がLv.10になりました
★ポイント残高26000
(結構ポイント一気に減ったな。
あとは、そうだな……発動系は全部取得で頼む)
《了解です》
★耐久力強化 Lv.1を取得
★SP強化 Lv.1を取得
★地獄耳強化 Lv.1を取得
★隠密強化 Lv.1を取得
★跳力強化 Lv.1を取得
★ポイント残高21000
(んん、いい感じにスキルが増えた。
残りは……ええと、毒抵抗がレベル10と、話術がレベル10で頼む)
《へいへい、お客さん。ポイントが足りてませんぜ》
レンが呆れ顔で、目を細める。
(いや、誰だよお前)
《AIですが、何か?》
(……まあいい、じゃあ……毒抵抗はレベル5、話術もレベル5で頼む)
《了解です》
★毒抵抗レベル1を取得
★毒抵抗レベルが5になりました
★話術レベル1を取得
★話術レベルが5になりました
★ポイント残高6000
(取り敢えずはここまでにしておこう。それじゃあ今回、取得したスキルをみせてくれ)
《了解です》
■常時発動型
★回復術 Lv.20
★カンフー Lv.10
★毒抵抗 Lv.5
★話術 Lv.5
■発動型
★耐久力強化 Lv.1
★SP強化 Lv.1
★地獄耳強化 Lv.1
★隠密強化 Lv.1
★跳力強化Lv.1
レンは取得した新スキルを満足そうに眺めた。
(よしよし、これだけあれば一流剣闘士にも余裕で勝てるんじゃねえか?
もしかしたらスター剣闘士のセウテスにだって勝てちゃうかもな。ぐへへ)
《う~ん、それは無理ですね。セウテスの平均能力は、推定で3000を超える化け物です。人類が到達できる限界、その最高峰にいる男ですよ……》
(え、そんなに!!)
《はい、それにレンさん。彼には数値だけでは測れない“実践経験”と“天性の直感”があります。
レンさんが、どれだけ数字で上回っても、あの男は一瞬の判断で命を奪えるタイプなのです》
(マジか……)
レンはセウテスの想像以上の強さに身震いする。
《はい。なので当分は戦うことはお勧めしません》
「わ、分かった……」
レンは100%勝てるようになるまで、セウテスには関わらないでおこうと心に決めた。




