ミアのお仕事_5
「これは火魔法の初歩も初歩。簡単な魔法じゃ。」
ワイズが指を振ると燃えていた火がフッと消える。
どういう仕掛けなのか不思議な気持ちになる。
「さ、タロ殿もやってみるのじゃ。」
促された俺は、先ほどのように人差し指を立て、
指先をじっと見つめながら念じてみる。
しかし、1分ほど力を込めて念じてみても、
いっこうに火は立たない。
反対の手で指を立てているほうの手首をつかみ、
「ぐぬぬぬ…」と指先の神経を研ぎ澄ませてみる。
が、悲しいほど火が立ちそうな様子ではない。
室内はシンと静まり返っている。ワイズとミアは目を合わせる。
「タロさん。全然でないじゃん。」
ミアの一言で集中が途切れてしまう。
「だめだ!」
目の玉が飛び出そうになるほど、息を止めて念じていた俺は、
息を切らしながらソファに勢いよくもたれる。
「タロ殿。イメージじゃ。指先から火が立ち上るイメージじゃ。」
ワイズはお手本のように、もう一度指先から火を出してみる。
もう一度人差し指を立て、念じてみる。
イメージ。火が立ち上るイメージ。ライターのように発火するイメージ…
ふたたび1分程時間がたったころ、
「タロさん。目ん玉飛び出そうだよ。」
ミアのツッコミで集中力が切れてしまった。
「なぜ!?出る気配がしない!」
俺は訳がわからず頭を抱える。
「ふ~む。」
ワイズは腕を組み何やら深く考えている。
理由が知りたい俺はすがるような気持ちでワイズを見る。
虚空を見つめていたワイズの視線が、徐々に俺の視線と重なる。
「想像力が乏しいのかのぉ。」
「そ、想像力?」
思わぬ一言にポカンとしてしまった。
「いわゆるイメージ力じゃな。
頭の中で物事を映像化して想像する力が欠如しておるかもしれぬ。」
ワイズは苦笑しながら説明してくれる。
「タロ殿は、莫大な魔力が潜在する身体ではあるが、
その魔法をイメージする能力が皆無なんじゃろ。」
「タロさん。すげえよ。宝の持ち腐れじゃん。」
ミアは驚いた表情で感心している。
「ミア。俺は今、心底絶望しているんだ…」
俺は頭を抱えながら、魔法が使えない現実にぶち当たっている。
世界一の魔力があるのに、魔法を使う能力がない。
神様、俺のイメージする能力までは面倒見切れなかったのかな。
確かに、美術の成績はいつも5段階評価の1だったな…
「まあタロ殿。気を落とさんでもよい。
イメージ力さえ鍛えれば、使えるようになるじゃろう。」
ワイズは陽気に笑いながら励ましてくれる。
「そうだよタロさん。
誰だって苦手なものは一つぐらいあるもんだよ。ぷぷぷっ。」
ミアも俺の背中を叩いて鼓舞してくれる。
小馬鹿にするようにくすくす笑っているが今は怒る気になれない。
俺が魔法を使えるようになる日はくるのだろうか。




