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とある一日_6

バーンズは獣のような速さで間合いを詰め、一閃というべき鋭い一太刀を入れてきたが、

それをさきほど借りたお玉で受け止める。

「なっ!」

まさか受け止められると思わなかったのか目を見開き驚くバーンズ。

だが直後には豪快な薙ぎ払いを繰り出してきたので、バックステップで躱す。

横切りからの斜めの袈裟斬りをお玉で受け止めると同時に、俺はバーンズの腕を掴み取る。

「よっこいっしょ!」

そのまま一本背負の要領で、バーンズを地面に叩き投げた。

なにが起こったのか理解してないのか、ぽかんとした表情で大の字で寝転がっている。

俺はバーンズの腕を離し、お店の大将のほうに振り返り笑顔を向ける。

「すみません!お玉に少し傷がいきました!」

大将も驚きの表情で

「あ、あぁ・・・どうってことねえけどよ・・・」と応えると、

コットンも「すごい・・・」と感嘆を漏らしている。

「いったい何が起こったんだ・・・」

バーンズはまだ状況を理解してないようで、目をぱちくりとさせたまま呟いた。


俺は大将のもとに歩き、お玉を手渡す。

「お玉ありがとうございました。」

「すげえな兄ちゃん!!あの騎士の兄ちゃんの剣も速すぎて見えなかったが、

お前さんが投げ飛ばすところなんざ、何がどうなったか意味がわからねえぜ!」

大将は興奮しながら、感想を伝えると、

「でたらめだ!!!」

バーンズは体を起こし、剣をこちらに向け大きな声で叫ぶ。

「少年!いったい何をしたんだ!!なんだ今のは!!訳わからんぞ!!」

よっぽど悔しかったのか、バーンズは思いついた疑問をそのままぶつけてきた。


こちらの世界では”柔道”のような格闘術は存在しないのか。

見よう見まねで背負い投げをしてみたが、案外簡単にできてしまった。

身体能力の高さからくるものだろうか、神様には感謝しないと。


「タロさん大丈夫?」

コットンが心配そうに駆け寄ってきた。

「なんとか。しかしすごい剣撃だったよ・・・」

「いや、お玉で捌いてたのは何処の誰よ。」

たしかに王国でも三本の指にはいるほどの騎士団に所属している

しかも、副団長を投げ倒すとは驚きのことだろう。

周りの見物客も驚愕の顔をしてる。


立ち上がったバーンズはこちらに近づき

「少年、名はなんといったかな?」

と訊いてきた。

「・・・タロです。」

「タロか。覚えておこう。」

そう呟くとバーンズは剣を鞘に納め、身を翻し歩き出す。

「コットンさん。またお店に伺います!

今日は無様なところをお見せしたが、次はそうはいきません!」

バーンズはマントをはためかせながらその場を後にする。


俺はその背中を見つめながら

「コットン、またお店に来るって。」

「やめて。聞かなかったことにしてるの。」

コットンはため息をついた。


魚の買い出しはこれからなのに、

なにか今日一日が終わってしまったような気分だ。

俺とコットンは少し疲弊を感じながら、市場へと歩いていった。

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