弱点
法念と戦いだして、何分が過ぎただろうか。
喉はカラカラで、手足には乳酸が溜まっている。
全身汗だくで、息をするのも苦しい。
対して、法念は涼しい顔で、最初と同じ動きで、
殺人的な一撃を繰り出してくる。
何度蹴っても、何度突いても、効いてないらしい。
「や、やるじゃねえか」
「そろそろ限界だろう。もういい加減、観念したらどうだ?
大人しく解脱の術を受けるなら、許してやろう」
「うっせえよ。俺は今の俺が気に入ってるんだ!」
「愚かな」
法念が右の拳を振りかぶって、襲い掛かってくる。
後に下がろうとした足がもつれ、俺はバランスを崩す。
どこからか、機械的な音が連続でして、法念の右拳をスリッピングして、
左の肘を顔面に当てると、今までとは違って、手応えがあった。
法念の顔が跳ね上がり、法念は顔を押さえて後にさがる。
半眼だった目は、見開かれ、手についた血を驚いてみている。
何が起こったかわからず、俺も放心していると、
カシャカシャと再び音がした。
見ると、本堂の陰から、白髪まじりのおっさんが、俺にカメラを向けて、
シャッターを切っていた。
俺の視線に気付くと、おっさんは、気まずそうな顔をして、カメラを下に向けた。
俺は踏み込み、左の拳を法念の顔に叩き込む。
全く手応えがない。反撃してきた法念の右手を辛くもさける。
「さっきの効いたよな? なんでだ?」
「……。神の気まぐれだろう。さあ、そろそろ終わるとしよう」
法念が左右の拳を振り回してくる。
攻撃が雑だ。
焦ってる? 考えろ。
さっきまで全く攻撃が効いてなかったのに、
突然、鼻血をだした。
何か、ある。絶対なにか。
信望が、カメラを構えたおっさんに何事かいっている。
そうだ。カメラだ!
カメラに違いない!
「待て! そこのおっさん!」
信望がぎょっとした顔になって、男性を押し、向こうにいかせようとする。
俺は、信望に向かって走り、跳び膝蹴りをだす。
信望は地面に這うようにして、膝蹴りをよけた。
「なんでかしらんが、カメラが弱点らしいな」
俺はカメラを持って、何が起こっているのか、戸惑っているおっさんを手招きする。
「おじさま、カメラ貸してくださらない?」
「え? いいけど……」
俺は受け取ったカメラの画像を確認する。
画面には、俺のパンチラのアップが映し出された。
「おっさん、変態か? 女子高生のパンツ写しやがって。
まあ、いいや。おかげで、助かった」
俺はネックストラップを右腕に巻き付け、シャッターを切りながら、
法念へと近付く。
法念の目は、普通に開かれている。
「ははは。どうやら、カメラが弱点らしいな。
このシャッター音か?
俺に弱点さらしたら、お前、お終いだよ」
爪先を鳩尾に蹴りこむと、法念は苦しそうに、体を曲げながら、
右手を振ってくる。
俺はスウェーバックで避け、左のロングフックを顎に、
右の猿臂を鼻面に叩き込む。
法念は盛大に鼻血を吹き出しながら、
よろけながら下がった。
法念は、ぶつぶつと何事かつぶやく。
また、集中したいってか。
させないけどね。
前蹴りを鳩尾にいれ、前かがみになったところで、
右の猿臂を側頭部に入れる。
法念の耳が切れ、痛そうに左手でかばった上に、
ミドルキックを叩き込む。
法念は地面を転がり、俺の方に右手を向けて、
参ったの合図をする。
「何だ。もうお終いか。神の助けがなけりゃ、
まともに……」
不意に横から、水をかけられた。
驚いて振り向くと、桶をもった信望が笑っていた。
「小娘が思い知ったか! 法念、カメラは使えん。もう一度、神を宿せ!」
急いで確認するが、カメラは、
どのボタンを押しても反応しない。




