奇妙な攻撃
「ははぁ。君は僕のことを殺すのかい? 僕を殺しても君は一生罪を背負い続けるだけだよ?」
「殺しはしない。お前がやってきたことを国家に報告し、罪を償って貰う」
「……ぷはははは! お前は馬鹿だなぁ! 俺を牢屋にぶち込んだところで、俺がやってきたことは消えないんだぜ!? 優しすぎるよなぁ!」
アルト伯爵は腹を抱えながら、ゲラゲラと笑う。
「殺さないと後悔するぜ!?」
「しない。これは私だけじゃなく、全員が思っていることだ」
「ケネス! ユウリさん! こっちは終わったよ!」
「私たち側は多少の怪我はありますが、死者は出ていません!」
リリーたちがやってきたのを見て、ユウリさんは深く頷く。
「貴様の仲間は全員無力化した。これからは私の指示に従って動いてもらう」
そう言うと、アルト伯爵は舌打ちをしながら立ち上がる。
「分かったよ。僕の負けだ。舐めてたよ」
ユウリさんは彼の腕に縄を巻き、下手なことができないよう拘束する。ふう……とりあえず何事もなくアルト伯爵との決着がついてよかった。俺は安堵しながら、ユウリさんの隣に立つ。
「帰ったら美味い飯でも食べないか? せっかく勝ったんだからさ」
なんて話をしたのだが、しかしユウリさんの表情は少し曇っていた。
「ケネス。少し違和感があるんだ」
「違和感? 何かあったか?」
尋ねると、ユウリさんは静かに頷く。
「都合が良すぎる気がするんだ。こんなにもあっけなくアルト伯爵との決着がつくなんて、私は想定していなかった」
「それは俺たちがアルト伯爵より上手だったからじゃないのか?」
「確かにそうかもしれないが……もっと何か、何者かによって都合よく――」
「あ、あれ? ユウリさん?」
ユウリさんが何かを言いかけた刹那のことだった。まるで、突然時間が止まってしまったかのようにも思えてしまう。
「お、おい……!」
だが、あながち間違いではなかった。周囲を見てみると、アルト伯爵や仲間の兵士までもが固まってしまっていた。本当に時が止まってしまった……のか?
「ケネス! 一体何事なの!?」
「皆さんの動きが急に止まったのですが!?」
「二人は大丈夫なのか!?」
「私たちは大丈夫です! だけど皆さんが……!」
一体何が起きているんだ。まさか何者かからの攻撃か?
しかし……こんな魔法なんて見たことがない。時を止めるだなんて馬鹿げた魔法を使える人物なんて聞いたことがないし、存在しないと思う。だけど、実際に俺たちは今。時を止めるという奇妙な攻撃を受けている。




