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窓を開けてというジェスチャーをされたので、仕方なく立ち上がって窓を開ける。
「ありがとう、エイミー嬢」
ふわっとオースティン王子が笑う。
「すまないが、少し窓から離れてくれないか?」
「窓からですか?」
言われた通り、窓から離れると、オースティン王子は窓に手をかけ、ひょいと図書室へ入ってきた。
「オースティン王子!」
護衛の方たちが騒ぎ出す。
そりゃそうよね。王子様ともあろう方が、こんな風に図書室に入るんだもの。なんだか親近感が湧いてしまう。
「やはり、笑ってる方がかわいい」
顔を覗き込まれはっとした。
「失礼しました!」
慌てて頭を下げる。
なんて失礼なことをしてしまったのか。
これでは、ランドルフ様に迷惑をかけてしまう。
「顔を上げて」
恐る恐る顔を上げると、また、オースティン王子はふわりと笑う。
「普通ならこんなことしたらはしたいって怒られるんだから気にしないで」
それから、護衛の方たちも失礼しますと言いながら、窓から図書室へ入ってきた。
「ハーブを育てたいの?」
オースティン王子の視線の先は、私が先ほどまで読んでいた本だった。よりによって、季節に応じた手入れの仕方のページだ。
「えぇ、まぁ。ハーブティを飲みますので、少し興味があるんです」
嘘は言っていない。
ランドルフ様がハーブティーをうちで買われるときに、エイミー様も飲まれると言っていたから。
「だったら、いいところがある。一緒に行かないかい?」
「でも、何か用事があったのでは……」
これ以上、不用意にオースティン王子に関わるべきではない。
「大丈夫。エイミー嬢の部屋に行く予定だったから」
オースティン王子はまたいつものように眩しく笑うのだった。
……あまり、関わりたくないのに。