第1話 またまた異世界転生はお仕事です
異世界転生はお仕事です。の続編です。
新しい物語なので前作を読んでいなくても楽しめるように書いています。
週1程度の更新を目指して、執筆していきます。
[毎週日曜21:00頃更新予定]
「君たちには、異世界に転生して魔王を倒してきてほしい」
初夏とは言えないほどの猛暑が続き、仕事が手につかないある日、佳織は突然部長に呼び出され、会議室に向かった。ドアを開けるとそこには佳織の上司である広報部長の中原、開発部の矢向、副社長の鹿島田、そして年配の上品な婦人がすでにいた。佳織が中原の隣に着席すると副社長の鹿島田はおもむろに口を開いた。
中原がうんざりしたように言った。
「またですか。鹿島田さん」
「そちらのご婦人は?」
「こちらはわが社の株主でもある『宿川原電子工業』の会長夫人の宿川原桜子さんだ。宿川原会長は病気で入院しているが、今、わが社の異世界転生サービスで人生最期の冒険をしている」
異世界転生サービス:ITSは佳織たちの勤めるゲーム会社ニューキャッスル社の新サービスだ。顧客の望む世界を作り、自由に冒険できるバーチャル空間を提供している。
ただ、カスタマイズ費やサーバー運営費で莫大な費用がかかるため、一部の「大金持ち」だけが顧客となっている。
「宿川原です。あなた方が、私の願いを聞いてくれると鹿島田さんに聞いて、お願いに上がりました」
佳織たちは詳しく話を聞く。
「主人は今、魔王として多くの仲間を従え、世界征服の途中です。この設定は主人の性格を考えると納得できます」
「その主人の仲間に一人の女性がいます。主人はその子に私たちの亡くなった娘の名前『杏』と名付けてかわいがっているのです。」
「私は、残りの人生が少ない主人が幸せならそれでもいいと思ったのですが、本当の娘の杏のことを忘れて死んでいくのは、杏がかわいそうで……」
桜子は目がしらをハンカチで押さえながら懇願した。
「どうか主人が娘の杏を思い出してくれるように目をさまさせてやってください」
鹿島田が言った。
「宿川原会長夫妻は、我々に味方してくれる数少ない『お得意様』だ。頼んだぞ」
鹿島田と桜子が退席した後、中原が言った。
「難題だね」
佳織が同意して言った。
「ただ宿川原さんを倒せばOKというわけにはいきませんよね」
「向こうの杏さんを倒してもお客様を怒らせるだけですもんね」
矢向が提案する。
「とりあえず、情報を収集するために宿川原会長のいる世界に行ってみませんか」
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