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裏銀河の冒険者  作者: 大星雲進次郎
星団の配達人
18/28

01-418 集合アカリ探検隊

 ダイヤモンドタウンの長老の罠にはまり、次元鉱石の坑道に潜む謎の生物討伐の依頼を受けざるを得なかったアカリ。

 とりあえずハイペリオン号に戻り、エレナとベアトリクスを連れて翌日坑道前で集合となった。

 探検に行くというアカリの話にエレナは特に取り乱しもせず、「気をつけてよ」と言うだけだった。VIP待遇で留守番が効いたのだろう。ベアトリクスと異なり、エレナは坑道まで付いていくとは言わない。自分が荒事向けでないことは分かっているのだ。待っている間はVIP待遇されるし。


 坑道の入り口はコロニー内にあった。

 集会所のあった第一世代のコロニー跡と隣接して地下への入り口がある。舗装されていて大きな運搬車が通るのだろう、バギー二台分以上の幅がある道路だ。この道がコロニー入口の巨大な門に続いているという。

 アカリ達はその道を歩いていた。

 アカリ、ベアトリクス、案内人、デジレと後の三人の順。デジレは先頭を歩くアカリを厳しい目で見ている。ジャス?何とか君の敵討ちを狙っているのか?何とか君はデジレの夫である。

 鉱山の操業が停止して誰もいない地下へと続く道路。その先には鉱石を加工する工場があった。ある程度の次元結晶を含む石だけをここで分別する。くず鉱石は再び地下に戻されて、次元結晶が膠着する種となる。これを百年以上繰り返しているのだ。

 謎の生き物は最近くず鉱石の投棄が始まったエリアにいるという。発見された頃は動き回っていたらしいのだが、最近は動いていない。未知のもの故、いつどのように動き出すかわからず安全のため操業できないでいるのだ。だいたい、何処から来たのかもわからない。入口のカメラ画像からいつ侵入したのか割り出そうとビデオを確認していたらいつのまにか二年分巻き戻していたらしい。

 そして、繰り返すが道路である。鉱石を積んだ車が走る頑丈で舗装された道路だ。入口から一段地下の分別場まで結構歩いた。

「ミスター……案内係の人」

「どうしましたか」

「どうして僕らは歩いているのですか?」

 案内係の人は進まなければたどり着けないじゃない?当たり前じゃない?とか思ってそうな顔だ。

「こんなに立派な道路があるんだから、車でしょう?普通」

 鉱山だからすぐに悪路になるのだと思っていたから、徒歩も仕方ないとアカリは考えていた。いざ入ってみればずっと奥まで道路があって、交差点には行き先標識まで整備されている。当たり前だ。重い鉱石を車両以外で運ぶはずがない。この先も道が整備されているはずだった。

 案内人は不思議そうに首を傾げるばかり。何故だかベアトリクスも追従して首を傾げているのが腹が立つ。

「戦士よ。この星が極寒の分、心はホットでなければならない。温かい都会に住み、燃える冒険心も温くなったか?」

「アカリ君、車で行きたいなんて言わないで。私もかばいきれない。せめてトロッコを要求してくれたら良かったのに」

 案内人の蔑んだような視線、ベアトリクスの悲しい顔。後の3人もアカリの発言に困惑しているようだ。

「トロッコ!女戦士、あなたは素晴らしい!是非お名前を聞かせてくれ」

「私はベアトリクス……。ベータ星のベアトリクスよ!」

 デジレを除く五人が盛り上がる中、デジレがアカリの側に寄ってきた。

「アカリ隊長、放っておいて行きましょう。その先にエレベーターがあるわ。地下30メートルだから、それが早い」

 と囁くと、奇声を発する連中をおいてアカリをエレベーターに引っ張り込んだ。


 車両ごと重量物を昇降させる広いエレベーターは、30メートルの地底までゆっくり降りていく。

 深く降りるにつれて坑内の温度が若干上がっていくようだ。主星からの熱には恵まれなかった惑星だが、まだ完全には冷め切ってはいないのだ。案内人が先ほど言った戯れ言が何故か思い出された。

「っていうか、デジレさん近い」

 広いエレベーター。考え事をしていたアカリの真後ろにいつの間にかデジレが近づいていた。 

「あ、ごめんなさい。つい」

 謝るが離れる様子はない。背中に感じる視線は明らかに何かを狙っているのだが、殺気は感じられない。

「ジャスパー君には悪いことをした」

 旦那さんなんだろ?もしかしたらデジレはアカリへの復讐を考えているのかも知れない。そう考えてアカリはとりあえず謝っておいた。

「構わないわ。バカをやったのは彼だし。昨夜たっぷり慰めてあげたから、あなたが謝ることはない」

「そうなんだ」

 何とも生々しい事だ。彼女は若干紅潮して妖しく微笑む、妖艶とはこういうものか。

 アカリは思い出した。この人、痴女だったと。

 突然、臀部がゾワリとする。尻を撫でられた!

「な、何を!?」

「あ、ごめんつい」

 さっきからの位置取りはこれを狙っていたのか。

「アカリ隊長って、良いお尻してるから」

 再びデジレの手が伸びる。警戒を感じさせない自然な運び。触れられる直前で何とか回避する。

「触りたくなるでしょ?あなたも良いお尻見たら」

「ならない!」

 そういう時はちゃんと自制する。これを言うとややこしくなるので堪えたが。

「別にこれ以上どうこうする気はないから。触らせて、ね」

「イ・ヤ・だ!」

 アカリはデジレから大きく距離をとる。その行動は読まれていたのか、デジレは音もなく距離を詰めてくる。何とか君より速い。

 ふわりとした感覚。ちょうどエレベーターが最下層に到着したようだ。

「チッ」

 デジレの舌打ちが聞こえた。密室を狙ってエレベーターにアカリを連れ込んだのだ、真正の痴女だった!

 とにかく距離を取らねば。アカリは全力で坑道の奥に逃げ込んだ。追い詰められているのかも知れないが、逃げ場所はそちらしかない。

 また追いかけっこだ。しかし今度は警備隊からの干渉はない。倒すしかないか?


 数分走ると不意に周囲が寒くなった。

 何かの気配を感じてアカリが立ち止まると、追いかけてきたデジレも異常を感じて追跡を中止する。

「アカリ隊長、寒くなってない?」

「この先に、何かいる」

 耳を澄ますと、道の奥のほうから音が聞こえた。

 2人は何べく音を立てないように、薄暗い坑道を慎重に先に進む。標識が現れた。

「第七処分場……」

「件の怪物が住み着いたと長老が言っていた所よ」「いや、聞いていないけど」

「言い忘れよ。よくあるの」

 道路が行き着く先は広大な空間になっていて、何かの光源があるのか青白い光が漏れている。そして。

「ドラゴン……?」

 青白い光を背景に浮かび上がるその姿。デジレは思わず物語の中の怪物の名前を口にした。

 巨大な爬虫類のような身体、そこから延びる長い尾。背中には蝙蝠の羽根を巨大にした翼が生える。頭はくず鉱石を投棄した穴に突っ込まれていて見えないが、長い首の先には鋭い歯が生えた頭があるのは簡単に想像できた。

「食べているのか?」

 恐らく咀嚼音なのだろう。先ほどから聞こえる何かをすりつぶす音は、このドラコンが次元鉱石のクズ石を食べている音なのだ。

 これは倒せない。アカリは素早く戦力差を分析した。

 アカリの武器はフェーザー銃だ。最大出力十秒照射で大きな岩塊も溶かすことができる。

 デジレがなにを持ってきているかは聞いていないが、アカリより強力な武器は無いはずだ。後続の連中も同じだろう。

 このドラゴンにフェーザー光線を十秒間も照射し続けられるだろうか。当てた瞬間に気付かれて、あの太い足で潰される。

「専門家にお願いしてください、だな」

 この世界にドラゴン退治の専門家がいるとは思えないが。

「あ、アカリ君!いたいた!」

 全てを終わらせる終焉の女神、ではなくベアトリクスの声だ。こちらに駆けてくる。

 ドラゴンにも気付かれた。穴から頭を出し、音の出所を探す視線とアカリの目が合った。

「うっわなにあれ、ドラゴンじゃん!」

 ベアトリクスの声は、悪いが、最近で一番バカみたいに聞こえた。万事休す。クロノ神もノシャブケミング神も、助けは間に合わないだろう。

 ドラゴンは視線を一度クズ石の穴に向けると肩を落とし、一声吠えた。

 ドラゴンの体が透けて消えていく。視線は穴から逸らさずに。とても名残惜しそうだった。

 

「どういうことなのかしら?」

 ドラゴンが完全に消えてから誰かが呟いた。ベアトリクスだ。今回も彼女が功労者ということになるのだろうか。

「推測でしかないけど……」

 次元鉱石を食べるドラゴン。恐らく空間転移ができる。鉱山にひょっこり現れて食事をしていた。見つかって逃げた。

「ということなんだろうけど」

 それにしても最も結晶度の高い鉱石はいくらでもあるだろうに、わざわざクズ石を食べるなんて。結晶と岩石の間が栄養豊富なんですよ、野菜の皮みたいに。とかあるのだろうか。

 バカなことを考えたとドラゴンがいた辺りをもう一度見返すと、綺麗に結晶化した次元鉱石をみつけた。

 クリスタルの中に雪が降り続けているような不思議な結晶。

 幾つかあったので、拳大の一つを貰って残りはデジレに渡した。ドラゴンの排泄物、などという考えは頭の隅に追いやって。


 帰り道で特筆すべきことがあるとしたら、あの痴女がベアトリクスの胸を揉んで頭を叩かれていたとか、「冒険好き」達が平然とエレベーターに乗っていたこととか。長老がアカリ達を送り出したことを忘れていたとか。どれもオチとしては若干弱い。

 VIP待遇で留守番していたエレナ。この星は名産があるわけでもなく、裕福でもない。思い描いた「VIP」とはほど遠い接待を受けたようで、怒り出したいけど怒るに怒れない、珍しい表情をしていた。


「ハイペリオン、軌道離脱シーケンス開始だ」

『了解。メインエンジン噴射』

 搭載艇を収納すると、アカリはすぐに帰路に向けた指示をハイペリオンに出す。

「脱出速度を超えたら恒星間航行へ移行だ。進路はトレジエム」

 閑散とした星系内の宇宙空間。ぶつかる物はなにもないため、すぐに超光速を出すことができる。

「結局何のための里帰りだったんです?」

 何となく乗員乗客全て操縦室に集まっていた。デジレは帰り便にも乗ることになり、結局何しに来たのという疑問が残るわけだ。

「長老の案件を片付けることが一つね。ジャスパーを慰めてあげることがメインかしら。私も結構我慢してたし」

 堂々とこんな話をするあたり、やはり痴女に間違いない。

「エレナ、気をつけて。デジレさんは、エッチな人だよ」

 アカリの言うことについていけずに驚くエレナ。

「大丈夫よエレナさん。あなたが噂と違ってカワイイ人っていうのは分かったけど、あまり私的に何というか、ピンと来ないというか」

「エ?何のこと?」

 ベアトリクスがまだよくわかっていないエレナに丁寧に説明してやると、デジレは「エムロードの狂犬」に噛みつかれ、涙目になるのだ。

 

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