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5.キャンディーとガム

 すみれと約束はしたものの、バスの運転士さんに、

どうやって告白すればいいのだろう・・・。

そういえば、バスの運転士さんに、

飴やミカンを渡して、バスを降りていくおばちゃんを、

時々見かけていた。「あれだ!」

私は、職場のデスクに、キャンディーを常備している。

まるで、大阪のおばちゃんみたいだが、

喉が痛い時や疲れた時に、ちょっと舐めると

ホッとする。しかし、それ以上に、

分からない事を教えてもらったり、仕事を手伝って

もらったりした時の、お礼として渡していた。

また、みんながちょっと休憩している時などに

配っていた。

会社での大切なコミュニケーションツールとして、

使っていたのだ。

そのキャンディーを、バスの運転士さんに、

渡すことに決めた。

決戦は、次の通勤ローテーションの日。


 その日は、やってきた。

小春日和のポカポカとした日だ。

私は、嫌いな人があまりいない、桃のキャンディーを

用意していた。

バスが来た。彼の運転だ。間違いない。

そのバスに乗り込んだ。

いつものように左回りで、職場に向かう。

ずっとドキドキしていた。

やっぱり「やめようか。」とも思ったが、

すみれとの約束があるので、頑張ろうと決めた。

バス停に着くと、人が降り始めた。

私は、桃のキャンディーの袋の中から、

個包装された1粒をつかむと、その最後尾に並んだ。

バスに残っているのは、2・3人だ。そして、

「よかったら、どうぞ。」

彼にキャンディーを差し出した。

彼は、少しびっくりしているようだったが、

「ありがとうございます。」

と、受け取ってくれた。「やった!」

それから私は、いつものように、

「ありがとうございました。」

と言ってバスを降りた。作戦成功!

私は、すみれに報告した。

「すみれも頑張るんだよ。」


 それからまた、2週間が経った。

彼の運転するバスに乗る。

この間の反応が何もなくても、運転士さんに、

プレゼントを渡すおばちゃんと、私は一緒なのだと

思えば、何も気にする事はない。

いつものバス停に着く。最後尾から降りる。

すると、運転士の彼が、

「これ、この間のお礼。」

と言って、ガムを差し出した。

キシリトール配合のガム14粒入りだった。

しかも、私の好きな味。

どうして私の好きなガムが、分かったのだろう。

私は、キャンディーの袋の中から、1粒あげただけ

なのに、14粒入り1パックが、差し出されている。

びっくりしたが、

「ありがとうございます。」

と受け取って、バスを降りた。

朝の光がまぶしかった。

どうやって会社まで歩いて行ったのか、覚えていない。

会社に着いた私は、嬉しくて嬉しくて、

同期の女性社員に、先々週と今週の事を話した。

「それ、絶対向こうも気があるよ。」

と応援してくれたので、

「幸せのお裾分け♡」

とガムを配った。もちろんすみれにもあげた。

だから私は、1粒しか食べられなかったが、

心が温かい気持ちで、いっぱいになった。


続きは、3月2日(月曜日)に投稿する予定です。

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