52 緊急!ワームルスからの報せ
もうすぐゼンゼロのギャルがくる……ディスク厳選しなきゃ
ライからのお願いを受けた後懐かしんだライの為に彼方に止まって翌日、俺達はクルーデンへと戻って来た。
しかし、何やらクルーデンの様子が騒がしく慌ただしい……そう言えば何時も出迎えてくれるハワードさんも来なかったな。
「何か会ったのかな?」
「マヒトくん、取り敢えずギルドに行こう」
「そうねぇ、戻ってきた朝からこの慌ただしさは普通じゃないわねぇ」
ライとユキの言葉に頷き、俺達はそのままギルドへと向かった。
ギルドへと入るとピリついた雰囲気の冒険者達が集まっていた。
「クソ! うちの国は何をとち狂ってるんだ!?」
「ソウ……落ち着けって、家族は大丈夫なのか?」
「ああ、俺に会うためにワームルスまで来ていたらしいからあっちで保護されてるらしい」
何やら荒れている龍人族の人が何人か見える。
周りを見ながらカウンターへと進むと、此方に気付いたアイナさんが声を掛けてきた。
「マヒトくん! 戻って来てのね、直ぐにギルドマスターの所へ領主様も来てるから」
「エリック領主が……ただ事じゃ無さそうだな」
「シュシュ?」
周りの空気が気になって出てきたくま吉を撫でて落ち着かせながらドリトンさん達の元へと移動する。
ドリトンさんの執務室に入るとエリック領主とドリトンさんが険しい表情で向かい合っていた……ロニーさんとアイザックさんも居るところから嫌な予感が加速する。
「来たかマヒト……少しまずい事になった」
「マザー殿は世界樹に帰って、オリヒメさんが王都へと戻った矢先にとはな」
ドリトンさんとエリック領主は各々が苦々しげに言葉を発した。
俺は二人に促されるまま来客用のソファに腰をおろした。
「先ずは現状の説明が先だな……ドラゴニア帝国は現在二つの派閥に分かたれている」
「一つは現帝王セイリュウ、もう一つがその弟のゴウリュウの派閥だな」
成る程現状ドラゴニア帝国は内戦状態に有るらしい。
エリック領主は深くため息を付きながら更に報告を続けていく。
「しかし、ゴウリュウは魔人族の力を借りてセイリュウを捕縛しその娘であるツバキ姫を手中に納めようとしたらしい」
「だが、それが思うように行かず痺れを切らしたゴウリュウがワームルスへの進攻を宣言しやがったみたいだ」
「ふーん単細胞な奴みたいだねそのゴウリュウとか言う奴はさ」
ライの言葉にユキとヨミも頷く。
「それにぃ、魔人族何かと手を組むなんてぇ浅はかだわぁ」
「まごうことなき愚か者ですわね」
魔人族の悪辣加減は虫界隈でも有名らしい、そんな奴等と組んだゴウリュウに二人は冷ややかな反応をする。
クロガネも魔人族の被害に遭った一人として露骨に顔をしかめている。
「この情報をくれたのはローレンス何だが……」
「家の馬鹿息子が申し訳ない事をしたと先に謝っておく」
困り顔のドリトンさんとエリック領主から話を聞くと、どうやらローレンスさん達はセイリュウ帝王一家を助ける為にドラゴニア帝国へと向かったらしい……正義も優衣を連れて。
しかし、俺としては「やっぱり」と言う具合だ正義達の性格からしてそんな話を聞いて無視出来る筈もない。
「まあ、薄々そうなるだろうと思ってた……あの四人なら上手くやるさ」
「そう言ってもらえると助かる……実際、ドラゴニア帝国のリソースを分散出来るのは有難い」
「俺達は冒険者ギルドは国の戦いに介入はできないがぁ、エリック達はそうはいかないからな……」
正義達は現在ドラゴニア帝国に入るためにサカエからグリンデル商会の手を借りて移動しているらしい。
グリンデル商会と言えばくま吉の糸を買ってくれた人の商会だった筈だ。
「エリック領主様!! ワームルスより伝令が入っておられます!」
「一体どうしたんだ!」
突然動き出した事態に更に火急の知らせが入ってくる。
走り込んで来たのはクルーデンの衛兵の一人の様でアイザックさんが声を掛ける。
衛兵は呼吸を整えると部屋全体に聞こえるように報告をする。
「ドラゴニア帝国よりワームルス城へと竜騎兵と歩兵の混合軍が進軍を開始し、国境付近が越えられるのも時間の問題であるようです!」
「早速動きやがったか!!」
「国境近隣の町や村への避難呼び掛けをどうなっている?」
エリック領主の冷静な問い掛けに衛兵は頷き報告を続ける。
「エリオット陛下が迅速に働きかけ近隣の避難は大方終えているそうです……ワームルス城ではドラゴニア帝国を迎え撃つ為に隊列を組んでいる模様です」
「分かった……ロニー、アイザック! 直ぐに準備を我々も馳せ参じるぞ! ドリトン、クルーデンは任せたぞ」
「「「は!」」」
エリック領主の言葉に三人は敬礼で応える。
そんなエリック領主に俺は声を掛ける。
「エリック領主、俺達も行くよ……エリオット王は既に俺が王で有ることに気付いている筈だ、良い機会だから教えておこうと思ってね」
「ああ、エリオット王も喜ぶだろう……是非虫の王にも同行願いたい」
エリック領主はかしこまって俺にそう声を掛ける、近くに居た衛兵は「え? え?」と戸惑った声をあげている……何かごめんね?
そんな衛兵を横目にライに視線を向ける。
「すまんライ、頼み事の件は少し後になりそうだ」
「ううん、構わないよ……それに小賢しい奴の事だこの問題が解決して油断したところに行動を起こす筈だよ」
「ああ、成る程ねそこを逃さず叩く訳だね」
俺の言葉にライはふっと笑って見せる……おお、怖い怖い。
とにかく話しは纏まった……知らない間に居なくなったシノブ以外はエリック領主と共に移動を開始するのだった。
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クルーデンより程近い森の中にシノブはその場所で複数の存在と会っていた。
その存在達は一人を覗いて全て既にシノブと眷属の義を済ませている。
「シノブ様……我等ミラージュ、準備は完了しております」
「……僥倖」
シノブは部下で有る虫……ミミクリーグラスホッパーの声に満足そうに頷く。
ミミクリーグラスホッパー、あらゆる存在に擬態し潜むバッタ達で有り戦闘能力が低いが生存能力が高く諜報向きの虫達である。
ミラージュはシノブが極秘に集めたバッタ達の諜報部隊であった。
「貴様も……志願たからには……役に立ってもらう」
シノブの言葉に反応したのは一人の男だった、その男はかつて真人が会った事の有る人物だ。
「問題ありません……かつては刃を向けましたが今はかの方を信奉する一人です……」
その男はルーデンス・スレイル、かつて真人達を襲撃したワームルス冒険者ギルドの冒険者だった男だ。
彼の持つスキルは“カモフラージュ”周りの意識を外させて姿を惑わす力、敵意有る者存在を知らせる魔道具に敗れたが現在はその対策も万全であった……今の彼には自信の敵意を操る術すら体得している。
シノブはルーデンスの言葉に頷き、再びミミクリーグラスホッパー達へと視線を向ける。
「今……我等が王は……他国とは言え戦地へと赴く……」
シノブは全員に聞こえるようにそれでいて厳かに言葉を紡ぐ。
「我等の役目は……王の晴れ舞台を陰より支える事である……敵国へ潜み、蝕み、全てを暴き出してみせよ!」
「……は! 我等ミラージュ王の為に!」
「ルーデンス・スレイル……王が為に必ずや……」
シノブの言葉と共にミラージュ達、ルーデンス共に暗闇の中へと溶けるように姿を消していく。
シノブはそれを見送り、主である真人の元へと帰っていくのだった。
しかし、実は部隊を極秘で集めて居たのはシノブだけでは無いのだが……それはまた別の話である。
次回! 短い閑話挟みます




