第0話 凛音
東京湾に浮かぶ実験都市、巧原市『世界で活躍する女性を育むの街』をコンセプトに建設された、150キロm2の人工の島。
緑が濃くなる5月の始まり、1人の少女がこの島を訪れた。少女の名前は久尾凛音。三つ編みにした赤茶の髪が、朝日を浴びてキラキラと輝いている。
今日から新しい学校生活が始まる。
新品のセーラー服に身を包んだ彼女はご機嫌だった。通学路のアスファルトの道をスキップしながら進んでいく。
街の中心部に位置する『巧原女学院』までは、アパートからの大通りを行けば一本道だ。海の景色は楽しめないが、かすかに香る潮の匂いが新しい街に来たことを教えてくれる。
スマホの時刻は午前7時。
早すぎたかなと思ったが、初日から遅刻ではカッコがつかない。もしもの備えは大切だ。
本土と距離があるせいか電波がずっと圏外なのを除けば、ここはとても過ごし易くて快適だ。
朝起きれば口うるさい両親の代わりに、窓から見える海がおはようを言ってくれる。今朝のような天気のいい日は房総半島まで見渡せた。
本土では見たこともない無人の周回バスに、海の中を歩いてるような海遊回廊。ショッピングモールにオシャレなカフェなんかも充実してるらしく、凛音の胸は高まりっぱなしだ。
10分ほど歩くと歩道橋の向こうに校舎が見えて来た。
信号を待つ間、伸びをしながら凛音は素直な気持ちを声に出す。
「ん〜! 今日から本格的な新生活! なんだか良いことありそう」
ドガアアアアァン!!
突如、背中を爆発の振動が震わせた。凛音は振り返る間も無く交差点へと押し出されると、爆煙の中へと埋もれてしまった。
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