佐藤くんは超スペックでした。
バカップル……続いてごめんなさい。
あの後ーーしばらく解放されず、キツイ態勢を強いられたため、強めに頭を叩かせて頂きました。
最近、テニス部の朝練に出てたから、明日筋肉痛を起こすことは無いと思うけど…。まったくぅ。
私と佐藤くんは海をほとんど見ることなく( ただ、バカップルを披露しただけ……。) ショッピングモールに戻って、お昼を食べて、ブラブラとお店を見て回った。
もちろん、見て回ってる間は手を繋いだ状態だった……ああっ!恥ずかしい!
ゲームセンターにも寄って、対戦ゲームで遊んだんだけど……実に大人気ない!私があまり得意では無いと言うと、何故かガンガン攻められて、佐藤くんの圧倒的勝利。本人は跳び上がって喜んでいたが、加減されず、やり方もイマイチ分かっていない私相手ではそれは勝つよっ!
そう怒ったら、お詫びのしるしにと、大きなクレーンゲームで、真っ白なウサギの縫いぐるみを取ってくれた。それも、ワンコイン (500円) で。佐藤くんがこんなスペックを持っていたとは……。恐るベシ!
ウサギの縫いぐるみは、私がひと抱えできるぐらいの大きさで、フサフサのフニフニでとっても可愛くて、店員の人が大きな袋を用意してくれたけど、私はそのまま持って帰ることに。
もう!嬉しくて!嬉しくて!嬉しくて!
「佐藤くん!ありがとう!」
はち切れんばかりの笑顔で、感謝の意を伝えた。
すると!佐藤くんが、縫いぐるみごと抱き締めてきたっ‼︎ だからっ!公衆の面前での羞恥プレイはイヤだってばぁぁぁっ!
私と佐藤くんの間にある縫いぐるみの分だけ手が届かないから、叩いて訴えることができない!
周りの生暖かい視線がっ!背中に突き刺さるぅーーーッ!
解放された後、酸素不足で肩で息をしてしまいました。
アッ!ちゃんと、佐藤くんには腹パンをお見舞いしておきました。ハイ。
何度か恥ずかしい思いをさせられたんだけど、16時を過ぎたので、帰りの電車に乗るため、私と佐藤くんは駅に向かった
私も佐藤くんも行きと同じで、電車の中で喋ることは無かった。ただ、流れる景色をお互い見つめていた。
駅に着いて、佐藤くんがマンションまで送ってくれることに。
いつもよりゆっくりと進む。少しでも佐藤くんといられる時間が続くように。
佐藤くんも私と同じ気持ちなのか、歩調はゆっくりだ。
「佐藤くん、今日はありがとう。恥ずかしったけど、楽しかった。とっても素敵な思い出になったよ。」
「俺もーー佳奈恵と一緒にいられて、スッゲー楽しかった。だから、またデートしよ?佳奈恵がコッチに戻ってきた時に。俺……、佳奈恵と一緒にいたいんだ。」
緊張で強張った顔をして佐藤くんが言った。とても真剣な声で。
「でもーーー私、明日ーー」
「分かってる。だから…遠距離恋愛してくれないかな?」
「遠距離?」
「そう。俺、佳奈恵がイイって、今日本当に思ったんだ。このまま……他の奴にとられるなんて、考えただけで胸糞悪くなるんだ!」
「でも、私の行く学校は女子校だよ?」
そう、百合の園です。それはそれで、ちょっとドキドキ?
「知ってる。でも、友達の紹介っていう荒技があるんだ。それを知らぬ間にやられて、もしも相手が佳奈恵に興味を持ったら?もうね、悪い事ばかりが頭をよぎって…電車からずっとモンモンしてんだ…。」
う〜ん。いつもと違う佐藤くんが新鮮だ。あ、また頭をガリガリと…。
「だから!山田 佳奈恵さん!俺と遠距離恋愛、して下さい!お願いします!」
身長190の佐藤くんがピシッと背を伸ばし、脚に付く勢いで頭を下げた⁈
いやぁぁぁぁっ‼︎ ココ!道端だから!今日何度目の羞恥プレイなのーーーッ‼︎
あうあうしていると、佐藤くんが首だけ上げて私を見てくる。それも、不安げに眉を下げて。
「ーーーーだめ、か?」
ああっ!もう!だめなワケないじゃない!全力で頭を振って否定した。
すると、身体にバネが仕込んであるのか?と、思うぐらいの勢いで上体を跳ね上げ、へにゃっと力無く笑う佐藤くん。
「良かったぁぁぁっ……。これでダメなんて言われたら、これからの人生、真っ黒だよ。」
そんな大袈裟なーーー。
私は、抱えたウサギの縫いぐるみで顔を隠して、佐藤くんに向かって右手をだした。
「うっっ………。あの、ヨロシク、オネガイシマス。」
キャァーッ!キャァーッ!恥ずかしい!道端でこんなこと有り⁈ 最初っから最後まで、ムードもヘッタクレも無いじゃなのォォォォッ‼︎
なんて、心の中で絶叫していると、佐藤くんに右手を掴まれて、コレも今日何度目かの抱き込みにあってしまいました!
「……嫌だって言われても、無理だから。」
「でも、先のことは分からないでしょ?」
人間は、大人になれば考えが変わる。今の気持ちのままなんて難しいと思う。
「変わらない。少なくとも俺は、佳奈恵がいてくれるなら大丈夫だと思える。何で?なんて聞くなよ、自分でも分かんないんだから。ただ本当にそう思えるんだ。」
「佐藤くんには……私が必要?」
「絶っっ対に必要!」
即答されて、縫いぐるみで塞いだ顔に締まりが無くなる。
「だから…ちゃんと俺の所に戻って来い。」
そう言うと佐藤くんは、間にいたウサギの縫いぐるみを横にずらして、優しい触れるだけのキスをしてくれた。
何とか後ろが見えてきました。
読んで下さって本当に、ありがとうございました。




