嬉しくて、恥ずかしくて、心臓が保ちません!
ごめんなさい……バカップル全開です。
私はさっきからモンモンと考えています。自分では難しい顔をしていると思うんだけど、私を見つめる佐藤くんは何故かニコニコ上機嫌だ。
目の前にはタイルを敷き詰めたテラスと、枕木で作られた砂浜へと降りるための階段。海原の景色を邪魔しないように配置された椰子の木。夜にはほんのりとした明かりでライトアップされて、チョットしたデートスポットになっているこの場所。カップルもチラホラ見える。
そんな、シチュエーションバッチリなこの場所では無く、まるであたり屋のような!突発の事故のようなタイミングで、私のファーストキスは奪われてしまったのです‼︎ もっと!もっとこうーーーあるでしょう!自然に!美しく!ムーディなっ!後世に残るような場面が!
と、ふと思い出す、加賀さんと博武の映画のワンシーンのようなキス……。
ーーー違う!全然違う!違い過ぎる!
コレは、私と佐藤くんだから?私がヒロインじゃ無いから?佐藤君と加賀さんなら世界が味方するの?ーーー納得できなぁーーい!
「何さっきから百面相な訳?」
佐藤君が私の頬を突いてくる。ふん!絶対に教えてやんない!
プイっと顔を背けると、頭を鷲掴みされて強引に前に向けられた。首!痛いんですけど!ギロっと佐藤くんを睨んでやった。
「ほら、せっかく来たんだから、海を堪能して。」
誰のせいでこうなんだっ!誰の!
「佐藤君は、モテるわりには、女ゴコロが分かってないんだね!」
「ーーーオンナゴコロ?」
キョトンと私を見つめたかと思えば、盛大に吹き出して笑い出した、佐藤くん!なんでダァ!
「ちょっ!なんで笑うのよ!」
「佳奈恵が【オンナゴコロ】なんて言うから…。」
涙目になりながら笑うことなのか〜〜っっ!
「それのどこに笑いの要素が含まれてるのよ!」
失礼なっ‼︎
「だってさぁ、まだまだお子ちゃまの佳奈恵が、オンナゴコロだなんて……ぷっっ!笑えるだろう!」
ーーーーおおおおこちゃまぁ⁈
「酷い!お子ちゃまは酷い!そりゃ、身長は低いし、発達途上だし!顔もどちらかと言えば童顔だしぃーーー」
「でも、ちゃんと17歳で、可愛いんだからいいだろ?佳奈恵はそのままの佳奈恵でいいんだ。急いで大人になっても、俺、困るし……。で、オンナゴコロとは?何でそう思った?」
目尻に溜まった涙を拭きながら佐藤君が言う。
「オンナゴコロだから教えない!」
「強情だなぁ。オンナゴコロ言わないならーーー」
そう言いながら、佐藤くんの顔が、私の顔に近づいて来た。思わず顔を後ろに引こうとしたけど、佐藤くんの手が側頭部を押さえて、引くに引けなくなってしまった
「ーーまた、キスしちゃうからな。」
ダァーーーーーッ‼︎ 私の耳に唇を付けて喋るなんてっっ⁈
咄嗟に佐藤くんとの距離を取って、真っ赤になって熱を持った耳を手で塞いだ!
「‼︎ ‼︎ ‼︎ 佐藤くん‼︎ わっ!わっ!わたっ!しっ!」
恥ずかしくて、涙が出てくるじゃないの!もう!
「ごめん、ごめん。あんまり可愛いからつい……からかっちゃうんだよなぁ。軍曹にもよく怒られるんだ。」
真っ赤な顔で威嚇する私に、佐藤くんは小さく笑いを漏らした。
「もうしないから、ここにおいで。」
自分の隣を指し示すけど、今日の佐藤くんはいつもにも増して、厳重注意人物なんだから!うっかり信じてはいけないんです!
私が大きく頭を振ると、バツが悪そうな顔で、佐藤くんが頭をガリガリ搔きむしった。…いい加減、血が出るんじゃない?
「ーー参ったなぁ。」
息を吐きながら、ボソッと言う佐藤くん。顔が苦笑いだ。
「ホント、ごめん。俺、佳奈恵といると嬉しくて、楽しくて、どうしても構い倒しちゃうんだ。自分で分かってんだけど、どうも……一緒だと思うと、セーブが効かなくて。」
そっ⁈ それっっ…わぁ、うれ、しい?かもだけど。でも!
「恥ずかしくって!私、どうしたらいいか分かんないよっ!そんなふうに思ってもらえるのは、うっっ、うれ…嬉しいけど!でも!困っちゃうの!」
言ってるそばから恥ずかしいわっ‼︎
睨みつけていると、佐藤くんが顔を両手で押さえて、その場にヘナヘナとしゃがみ込んでしまった!ふぇっっ⁈
びっくりして、慌てて佐藤くんに駆け寄って、同じように横にしゃがみ込んで、顔を覗き込もうとした途端ーー
「さとーーーッ!」
そのまま佐藤くんに、抱き込まれてしまったっっ‼︎ やァ〜めェ〜てェ〜〜〜‼︎
「〜〜〜〜〜〜っっ!俺、今日一日だけで、何度心臓止められるんだかぁ…。いっそ、止めてくれ……。」
ふぇ〜〜〜〜ん‼︎ だから無理なんだってばっっっ!私の方が死んじゃうヨォーーーッ‼︎
ありがとうございます。




