ちょっとキレてみました。
「琴ちゃん、ゴメンね。待ったでしょう?この人が愚図だからチョット手間取ってね。」
銀ブチ眼鏡男子が加賀さんに駆け寄って行く。
なんだろう、銀ブチ眼鏡男子のお尻から生えた尻尾が凄い勢いで振られているように見える。錯覚?
「私は大丈夫。ゴメンね、羽黒君。佳奈恵ちゃんを連れて来てくれて、ありがとう。」
微笑みを崩さず、可愛らしくペコっと頭を下げる。
羽黒って、君だったんだね。初めまして?だね。
しかし、頭を下げただけなのに、可愛いが付加されるとはさすがヒロイン。
「充って、呼んで欲しいって何度も言ってるのに。琴ちゃんは酷いなぁ、僕の気持ち分かってやってる。」
「ふふっ。羽黒君はステキだよ。でも私では勿体無いから。」
少し伏目がちに加賀さんが言う。
でも、今の加賀さんの言い方、聞きようによっては、自分はあなたには勿体無いって、聞こえる。うわ〜っ!
「そんなこと無い!琴ちゃんに初めて会った時から、君は僕の太陽なんだっ!こんな気持ちになったのは生まれて初めてなんだよ。僕とこの先ずっと一緒にーーー」
「チョット待った!俺だって加賀さんのこと、ずっと一緒にいたいって思うぐらい好きだっ!」
「オレも!加賀さんはオレにとって輝く女神だ!」
「いや!俺の方が加賀さんを思う気持ちは誰よりも深い!」
「オレなんて、海よりもイヤ、ブラックホールよりも底が無いぐらいに加賀を思っているんだ!」
沢山の男子達が俺も、オレもと加賀さんにアピールしだす。何ですか?この茶番劇。カオスですか?加賀さん、どんだけ誑かしているんですか?男子なら誰でもいいんですか?私の幼馴染達だけじゃダメなんですか?
「みんな、ありがとう。琴子すっごく嬉しい!」
やっぱり可笑しい。ヒロインだから可笑しいのか、加賀さんの思考が可笑しいのかどっちだ?頬を赤くしてありがとうなんて、変でしょ?この場面で出る言葉か?
駄目だわっ!埒があかない。
「加賀さん、私に何か用?」
さっさとここから脱出するぞッ!そして、佐藤くんと放課後デートだっ‼︎
私も負けず可愛く首を傾げて聞いてみた。
「 !やだ、怖い……。」
エッ⁈ どうして怯えた目で見られるの ⁈ 可笑しいよね!
「山田 佳奈恵!琴ちゃんになんて事言うんだ!謝れ!」
銀ブチ眼鏡男子も可笑しいよねっ!
「加賀さんに怖い思いをさせるとは、何て意地の悪い女なんだ!」
「加賀さんを泣かせるなんて、悪魔の所業だっ!」
「加賀を苛めるなんて、オレが絶対に許さない!」
ーーーアウェー感はんぱない。コレは何?私、苛めてないよね?聞いただけだよね?
周りからの罵声と敵意の視線に身震いした。
「みんなぁ、ありがとう。」
可笑しいーーヘンだよ。みんな可笑しいよ!
「私、佳奈恵ちゃんから苛められているから、チョット過剰反応しちゃったみたい。心配かけて、ゴメンね。」
私が苛めてるって、まだ言ってるの?それも本当のことのようにーー平気で嘘をついて、加賀さんはいったい何がしたいの?
そう思ったら、心の底から怒りが湧いてきて、目の前がチカチカしだした。
「今日は、佳奈恵ちゃんとお話しをして、ちゃんと私を分かってもらって、お友達になってもらおうと思って。だって、ひろむ君もたいき君もはるき君もゆうと君もお友達なんだから、佳奈恵ちゃんともお友達になれると思って。でしょ?佳奈恵ちゃんが私を苛めるのは、ひろむ君達と私が仲良くなったのがイヤだったんだよね。佳奈恵ちゃんだけの場所を盗られたって思ったんでしょう?それが許せなかったんだよね。でも、私にはそんなつもりは無いのよ?みんな私とお友達になりたいだけなの。だから、佳奈恵ちゃんも私とお友達になれば、今まで通りなんだから!ねっ、私とお友達になろぅ。苛めなんて続けていても良い事無いから。そんな事止めて、ねっ。」
極上の微笑みで私に差し出された左手。
その左手をジッと見つめた。
コレがヒロイン思考?本当にこんな風に思ってるの?だとしたら相当ヤバイでしょう。普通に物事考えられないんだから。妄想が暴走してるよ、この人。お友達?無理でしょ!心が病むわっ!
「オイ!琴ちゃんがこんなにも必死にお前と友達になってやろうと訴えているのに、知らん顔とは良い度胸だな!」
「加賀さんを苛めて、幼馴染達の気引こうとしたのか。自分の性格の悪さを何とかするんだな。」
「加賀さんみたいな子は二人といないから、幼馴染達の気を引くだけ無駄だろう。」
口々に浴びせられる、謂れのない苛め。沢山の人間に取り囲まれて言われるこの状況。
「さっきから聞いてれば、訳分からんことばかり言っちゃってくれてるけど、まず!コレだけはハッキリ言っておくわ!私は加賀さんを苛めたことなんて全くありません。言い掛かりもいいところです。何をもって言ってるんでしょう。幼馴染達の気を引く?ばっかじゃ無いの?あの人達から無実の罪を着せられた時点で、既にこっちから幼馴染の縁を切ってやったわよ。別にあの人達だけが友達でもないし、今のクラスの人達が私を守ってくれたし、私が加賀さんに嫉妬する要素が今現在全く無いの!だからいい加減、加賀さんの妄想に付き合わせないで!すっごく迷惑なの!」
さすがにブチって切れました。加賀さんや銀ブチ眼鏡男子、その周りの男子達が目が点になってます。まさかの私の反撃にビックリしたのだろう。フフフッ。
「私は加賀さんに助けてもらわなくても、心から心配してくれる人達がいるの。それに私は加賀さんが妄想する悪役じゃないの!加賀さんみたいに周りを振り回すことしないし、振り回して喜ぶ気持ちも分からないし、だいたい、男子達に愛想振りまいて、お姫様気取れないしね。やっぱり加賀さんは最終ハーレム狙いなの?この大所帯で?加賀さん、どうやって収拾付けるの?」
加賀さんの表情がみるみる赤くなり、目が釣り上がる。悔しそうに唇を噛む姿は、美少女には似つかわしくない。どうやら私は、加賀さんを怒らせる事に成功したみたいだ。
いつもより文字が多いですね…
ありがとうございました。




