尋問は必要でした。
まずイイですか?
怖い、怖いです!瑠美ちゃん!頭にツノが見えるようです!佐藤くんは軍曹と言っておりましたが、私には般若にしか見えません!すっっごくここから逃げたいです!しかし、扉側の席には瑠美ちゃんの信者ーー沙樹ちゃんがメモ片手に私をジッと見つめています。脱出は無理っぽいのです!
「一言一句漏らさず、きっちりハッキリ全て吐きなさい。」
あーーーん‼︎ お弁当食べながらは無理っっ!
と、言う事でお話させていただきました。ええっ、余す事なく、今朝起こった事全て包み隠さずマルッと!
話終わった頃にはグッタリです。…お弁当…。
「転校生美少女も頑張るねェ。」
沙樹ちゃんが楽しそうに言います。
そうだよね。他人事だよね!
「佐藤くんが幼馴染ねぇ。3歳でしょ?憶えて無い方が普通でしょ。ヤッパリ乙女ゲームなのかなぁ。でも、山田 佳奈恵くんが転生者じゃないし、前の学校では失敗してるから、全て転校生美少女の思い込み?」
「確かに見た目は極上だから、可愛らしく擦り寄ればほぼ陥落するでしょう。実際、アイドル顔負けの我が生徒会メンバーは全員落ちてるし。」
腕組んで、椅子を傾けバランスを取りながら座る瑠美ちゃん。危ないから、良い子はマネをしてはいけません。
「結局、美少女の思うがまま。振り回されたのは、かな一人だけ。」
「そうそう、補足情報!サッカー部と陸上部が転校生美少女の毒牙にかかって陥落。今、テニス部を狙いに言ってるって聞いてるけど、知ってます?」
沙樹ちゃん、楽しそう。瑠美ちゃんといるから?
「ーーいや、初めて聞いた。ありがとう、釘刺しとく。」
瑠美ちゃん!眉間に縦ジワ出来てる!
沙樹ちゃん!キャとか言って頬染めないっ!
私!お弁当!食べてイイですかっっ‼︎
「ところで、かな…。」
「何?瑠美ちゃん。」
えっ⁈何故突然笑顔なんですか?瑠美ちゃん!
「かなはさぁ、佐藤をどう思う?」
うん?最近同じフレーズを聞かれたような…。
「…ふざけた巨人…かな?」
だって何時もふざけて、私をからかって、身長を縮めようとしてくる。
「佐藤はどうして、かな、から目が離せないって言ったと思う?」
コレは、誘導尋問ですか?怖いんですがぁっ‼︎
「私が、ヤツより小さくて、頼りないと思われてるから…?」
「佐藤くんは、山田 佳奈恵くんに対して庇護欲が生まれたのだよ。それはとても早い段階で、形を変えた。そして気が付いたんだよ。佐藤くんは。」
「こんなギワじゃなく、もっと前に気が付いてくれていれば、ここまでにはならなかった。」
瑠美ちゃんが机越しに、私に近づく。
「かなは、佐藤と一緒にいて何も感じなかった?」
佐藤くんと…一緒にいて、何かを感じた?私。
「山田 佳奈恵くんは、佐藤くんといる時はとても良い顔をしていたよ。側から見てると、親猫に戯れる子ネコって言う構図かな。楽しそうだったよ。ガヤも見てて、微笑ましかったからね。」
沙樹ちゃんの言葉に、ボッと効果音付きで顔から火が吹くのが分かった!いやぁーッ!どうして、どうして⁈
「おおっ、素直な反応。」
沙樹ちゃんが手にしたメモに記入する。何を⁈
頬を両手で押さえて、顔に集まった熱を隠そうと足掻いてみる。無理だったけど!
「ううううううっっ。だっ、だってェ〜。さささっ佐藤ォくぅん、わっ、私であっ、遊ぶんだもん!子供扱い、スグするしッ!」
恥ずかしい!何?拷問ですか?
「かなは、佐藤がそうしてくるのはイヤだった?」
「……最初は、このヤロッて思ったけど、だんだんそれが楽しくて…なんだか嬉しくて…」
私!何言ってるんだろう!
「佐藤が構って来るのが、嬉しかった?じゃ、佐藤が警護から外れた時は、どう思った?」
「うっ、これって、言わなきゃダメなの?ハズっっ、恥ずか、しいんですけどお。」
ああっモウ!穴を掘って逃げ出したい‼︎
「ダメ。これは必要な事だから、ちゃんと答えて。」
瑠美ちゃんがニヤリと笑った!
最後の日にこんな目に遭うなんて!
「うううっっ。ちょっと、寂しいかもって…思った。」
「ちょっと?」
「……加賀さんが、佐藤くんに会いに来てたから、もしかして、佐藤くんも幼馴染達みたいに…って思って、もうお喋りできないのかなって思って、イヤだなぁ、寂しいなぁって。」
「イヤだった?2人の姿を見た時。」
ああっ、ヤダ。今朝の光景が思い出される。
「イヤだった……。一緒にいるのを見たく無かった。加賀さんが、佐藤くんを呼ぶのも聞きたく無かった。佐藤くんが、加賀さんを見てるのも!だって、胸が痛くて、涙がーーー」
私の目から涙が流れ出す。
「なっ、泣きっ、泣きたく無かったの!2人の前では、見せたく無かったのっ!ううううううっっ‼︎ 」
博武の時には出なかった涙が、堰を切ったように溢れ出した。
「……山田 佳奈恵くん。それが恋だよ。好きって言う思いだよ。」
沙樹ちゃんが優しく私を抱きしめてくれた。
ありがとうございました。




