触手を拡げているようです。
朝まだ早い駅のホーム。
人もまばらで、聞こえるのはスズメの囀りだけ。辺りは閑散としていた。
学校で絡む佐藤くんと何かが違う。ふと思う。
並んで立つ佐藤くんを盗み見てみる。鞄んを肩に掛け、睨見付ける携帯の画面に、人差し指を滑らせている。前髪が目に掛かるぐらい長く、その髪質は柔らかそうで、チョット触って見たいなぁと思ってしまう。… アレ?もしかして佐藤くんはイケメン?さん?
「山田。髪、なんで切った?」
おおっ⁈髪繋がりで考えてた事、一緒だった?
「あんだけ長かったんだ。切るの勇気いったろ。」
携帯から顔を上げる事なく、佐藤くんが聞いてくる。
「……そんな事無かったよ。勢いで切ったから、勇気なんて大袈裟なモノはあの時は湧かなかったよ。切った後も、今まで経験した事のない頭の軽さにフワフワしてたしね。」
「確かに、髪短くして、頭の軽さが際立ってる感じだな。」
ズボンの後ろポケットに携帯を入れると、私の頭をポンポンと叩く。
「ねぇ、それは癖?それとも私の背を更に低くしようとしてる?」
ズバッと聞いてみた。私は後者と見ている。
「えっ?だって高さがちょうどイイし、山田の頭叩きやすい。」
「佐藤くん、私を小学生と勘違いしてない?扱いがお子ちゃまなんだけど。一応私、女子高生なの!」
佐藤くんに向き、腰に手をあて怒ってますのポーズをとる。
すると吹き出すように佐藤くんが笑い出す。
なぜ‼︎どこに笑いの要素が⁈
「そんな事言ってる事がすでにガキなんだよ、山田。」
お腹を抑えて笑う佐藤くんの脛に、怒りの蹴りをお見舞いする!
でも、素早く躱されてしまった。しまった、反射神経を侮ってた。
「それっ‼︎脛攻撃は絶対にダメ!俺バスケ部!足は命だから!」
「失礼な事言うからだよ。あと笑い過ぎと私で遊び過ぎ!」
などと騒いでいると、ホームに電車が滑り込んで来た。
電車の中では2人共、流れる風景を見るだけで、喋る事も無かった。
「今日はバスケ部の朝練にご招待って事で。」
そのまま体育館に連行されました。
体育館内に響く沢山のバッシュの音と、重いボールのバウンドする音。
今、私は体育館の舞台の上で、バスケ部の練習を見ている。ぶら下げた足をブラブラとさせて、右に走ったり、左に走ったりしているのを目で追っていた。
これはコレで詰まらない。体力的にはキツイけど、テニス部の方が良いのかも。
なんて考えてると、後ろから声を掛けられた。
「山田さん…ですよね。」
振り向くと全体的に色素の薄い男の子がニコニコしながら、しゃがんでいた。
「そう…ですが?」
「僕、バスケ部1年の久保 真司って言います。どうぞよろしく。」
ありゃ?何だか礼儀の良い子。
「ハイ。よろしく。」
私も座ったままお辞儀する。
「今日は、拓真先輩と一緒だったんですか?」
……拓真?……誰?
私が首を傾げると、久保くんが目を剥く。
「エッ⁈拓真先輩……佐藤 拓真先輩ですよ。まさかそこから⁈マジかッ‼︎」
自分の額をバシンと叩き天井を仰ぎ見る。
うん?どうした?
「何だか前途多難な感じがする。大丈夫かなぁ。案外ヘタレなのかなぁ。」
だから何が?心の声がダダ漏れですけど、あなたの方が大丈夫?
不審者を見る目で久保くんを見る。
その視線に気が付いて、久保くんが両手を目の前でブンブン振る。危ないよ!久保くん!
「あの!あのっ!山田 佳奈恵さんは、たく…佐藤先輩をどう思います?」
うん?佐藤くんをどう思う?
「ふざけた巨人」
私の言葉に顎が外れそうなぐらい口をパックリ開け、両目を見開く。どうした?大丈夫か?
「……なんか、勝てる気がしない。」
何に勝つ気だ?久保くん。
「じゃぁ、久保くんから見た佐藤くんってどんな感じ?」
逆に聞いて見た。私にしたら、ふざけたヤツなんだけど、他の人が見る佐藤くんはどんなだろうと思って。とくに久保くんは同じバスケ部で、後輩だから、違う目線だと思うしね。
「えっ?え〜〜っ、拓真先輩ですか。う〜〜ん、そうですねェ。とても、面倒見がイイです。どちらかと言えば、世話焼き?僕たち1年を構い倒してます。それに、周りを良く見てくれてます。バスケだって凄いんですよ!すでに声が掛かってますし、それに案外モテるんです。試合なんて他校の女の子の声が凄い凄い。出待ちは当たり前です。」
久保くんはコートを走る佐藤くんを目で追いながら、憧れの眼差しを向けた。
「そんな凄い先輩に、僕も少しでも近付きたいです。」
何だか癪に触る。なんだろう。なんかヤダ。
「そう言えば最近やたらと絡んでくる美少女がいるんです。拓真先輩も手こずってるみたいで。」
美少女?このワードに浮かぶのはーーー
体育館入り口に人影があった。
私が今浮かべた人。隣のクラスの転校生美少女、加賀さんがそこにいた。
読んでいただき本当にありがとうございます。なかなか最後まで辿り着きませんが、よろしくお願いします。




