瑠美ちゃんは優しいのです。
結局、アレからみんなで歌うは食べるはで、会議と言う名目は何処かへ飛んでしまった。
その後、お昼から部活だと言う人達がいたので、そこでお開きとなった。
私はそのまま瑠美ちゃんの家へと向かった。
「面白かったね。瑠美ちゃん。」
本当に楽しかった。その前の事は最悪だったけど、学校とは違うみんなが見れて、思い出すだけで顔がニヤけてしまう。
「まぁ、楽しいかなぁ。現状考えると、そんな事言ってられないけど。なんか、ヘンな結束力があるよね。」
「それそれ!私も思った。それに、瑠美ちゃんって凄いよね。」
「凄い?」
瑠美ちゃんがキョトンと聞き返した。
「だって、ウチのクラスじゃ無いのに、クラスのリーダーだもん。沙樹ちゃんなんて崇拝してるんじゃないかなぁ。」
「……田中はイイや。」
そう言ってそっぽを向く瑠美ちゃん。…?
「なぜに?」
「そこはイイから。」
追求を嫌がる瑠美ちゃん。う゛〜ん、知りたいけど、我慢しましょう。
瑠美ちゃんの家に着き、瑠美パパと瑠美ママにご挨拶。転校するのでしばらくは来れない事を言うと、夏休みや冬休みに纏めて泊まりにいらっしゃいとの有難いお言葉に、目頭がジンとしてしまいました。
ええ!もちろん来させて頂きますとも。ハイ!
瑠美ちゃんの部屋に入って、お気に入りの丸いクッションにダイブする。このクッションとも暫くはお別れです。
「昨日ね、伊澤さんと青木さんに送ってもらったでしょ、その時に言われたんだけど、妥協って恋愛において必要?」
グラスにジュースをそそぐ瑠美ちゃんに向って、唐突に聞いてみた。
「えっ?妥協?う〜〜ん、いるかもね。だって好き合って付き合う事になっても、同じ人間じゃないんだから、思う事も感じる事も違うでしょ。それでも好きって思うなら、ある程度は見て見ぬフリはしないと。夫婦だって同じって聞いた事あるし、必要なんじゃない。」
じゃぁ、私は何に妥協しなくちゃダメだったの?
「かなはさぁ、幼馴染ってとこに妥協しなくちゃいけないかもね。」
「幼馴染で?どうして?」
「橘先輩に告白されて付き合ってたけど、恋人同士がする様な事が何も無かったって言ってたでしょ。じゃぁ、かなは橘先輩に対して恋人らしい言葉や行動をしたって言える?ただそれまでと同じようにしていただけじゃないの?」
瑠美ちゃんに言われて思い当たる節があった。
確かに付き合うってなっても、いきなりそんな雰囲気になれなくて、それまで通り博武と接していた。どうしてイイのか分からず、急に変わるのも恥ずかしくって。
「小学校から一緒なんだもん。関係を突然変えろって言われても、無理があるよね。だから、幼馴染って云う関係は妥協しないと、そこは変えようが無いから。」
幼馴染だと言う事実は変えられないから、付き合っていても、その甘えは仕方が無いって事?
「かなが橘先輩を好きって思ってたのは本当だと思う。でも、ちゃんと恋愛の好きと、幼馴染の好きと分かって付き合ってた?そこ、チョット曖昧なんじゃない?もしかすると橘先輩、そんな、かなの気持ちに気が付いていたんじゃないのかなぁ。」
「私の気持ちが曖昧だった?」
「かなはちゃんと恋してたんだと思うよ。でも、それはとっても不安定で、変えてしまうのを躊躇われたのなら、橘先輩が転校生美少女に気持ちが動くのは仕方がないのかも。」
「だから、泣けない?」
「ショックが強かった…多分考えても見なかった事だったんだよ。少しでも想像した事がある?幼馴染が、橘先輩が離れる事を。」
その言葉が、納得出来てしまった。
大きく頷き、それまで詰めていた息を吐く。
「瑠美ちゃん、私考えて無かった。きっと博武はゆっくりな私を待っていてくれたんだね。でも、タイミング良く加賀さんが転校して来て…。そうだよね、美少女がイイよね。私じゃ物足りーーっ!」
そう言うと瑠美ちゃんが私のほっぺを抓った。
あまり力入ってないけど痛いデス。
「卑屈はダメ。かなは、[かな]だからクラスのみんなが助けてくれるの。私もそう。だから、きっと泣ける時が来る。頭が気持ちに追いつけば、きっと。」
ああっ、私はなんて幸せ者なんだろう。
ジンワリと心に広がる温もりが、心地良かった。
読んで下さって本当に有難うございます。