会議はカラオケ店で。
どれぐらい経ったのだろう。
耳を塞いで床に蹲っていると、バイブの振動で動く携帯に気が付いた。
素早く携帯を掴み相手を確認する。
「瑠美ちゃん‼︎」
『今、エントランスにいるから開けて!玄関の前に着いたらまた連絡する。』
「分かった!」
エントランスの自動ドアを解錠して、瑠美ちゃんが来るのをモニターを見て待つ。
画面には未だ話し続ける、ゆうくんとたいちゃんが映っている。
怖いと思った瞬間、モニターのスイッチを消してしまった。
と、そこで再び携帯が振動した。
『3階着いたから、扉ノックしたら開けて!』
「分かった!」
携帯を握りしめ、玄関に向かう。すると直ぐに扉がノックされた。
ロックを外し、扉を開けると、昨日見た光景が…。
「こんな所でまた、生徒会の三浦 悠人くんに会えるなんて!」
「まぁ!それに生徒会書記の岩崎先輩もいらっしゃるなんて‼︎まるで夢のよう…。」
「私、先輩のことを密かに思っていましたっ!お願いです。いっしょに写メしてください‼︎」
「先輩の手、素敵ですねェ。ゴツゴツとした男の手って感じで。後生です!その手で私をギュッとして下さい‼︎」
「ヤバイっ!悠人くん昨日と違って私服なんだもん。めっちゃかっこいい!それになんか良い匂いがするゥ…。あっ、鼻血出そう。」
「本当に可愛い過ぎ〜ッ!ねっ!私、美術部なんだけど、三浦くんモデルやらない?ヌードとは言わないから、ねっ!」
「岩崎先輩!先輩のグランドを走る姿にキュンキュンなんです!私も一緒に走って良いですか‼︎」
「とにかく!悠人くん触らせて!私を癒して!」
美希ちゃん率いる警護隊女子8人が、たいちゃんとゆうくんを取り囲んで、後方にあるエレベーターへと徐々に押して行く。エレベーターには柔道部の相田くんが扉を押さえている。
「かな!ごめんねっ!大丈夫?」
瑠美ちゃんに肩を掴まれ、ガクガクと揺すられた。
口を開けてたら確実に舌を噛んでいました。危ない危ない。
「うん、ありがとう。大丈夫だよ。瑠美ちゃん。」
とその時、きゃーきゃーと騒いでいた声が不意に消えた。
瑠美ちゃん越しに見てみると、警護隊女子と共にエレベーターに乗って行ったみたいで、さっきまでの人集りがいなくなっていた。
エレベーター前にいる相田くんと、早川くんが満面の笑顔で両腕を上げ、人差し指を立てて上を指し示していた。
「大変だったな。まさか家にまで押しかけて来るとは、想定外だった。」
学校のジャージ姿で仁王立ちする黒井くん。迫力です。
見上げていると、頭をポンと叩かれた。
「山田、災難だったなぁ。」
佐藤くんが、私の頭に手を乗せ、目線を合わせるように屈んで笑いかけた。
私はウンと小さく返し頷いた。
「よし!かな、このまま出るから、荷物持っといで。」
私は瑠美ちゃんに頷き、部屋の中に駆け込んだ。
マンションを出て連れてこられたのは、駅近くにあるカラオケ店。
カウンター前を通り過ぎ、1番広い部屋に入ると、ソファーにちょこんと座る宮野くん。そして、何やらメモ帳と睨めっこしている沙樹ちゃんがいた。
そう言えば、どうしてクラスのみんながいるの?それにどうしてカラオケ店?
「あっ、お帰りなさぁ〜い!無事に奪還できましたか。林さん達は?」
沙樹ちゃんがメモ帳から顔を上げて、ニッコリと笑う。
「彼奴らに絡ませて、脱出して来たから、もう少し後だろうなぁ。留守番、サンキュウ。」
「そっ、じゃぁもうチョット待とうか。」
そう言うと、手に持つメモ帳に再び視線を落とす。
「取り合えず座ろっか。山田、なんか飲むか?」
佐藤くんに言われて自分がすっごく飲み物を欲している事に気が付く。大きく頷くと、瑠美ちゃんがメニュー表を渡してくれた。
「やっぱり、カルピスか?山田。」
「やっぱり?」
何を言っているんだろう。佐藤くん?
「いや〜、イメージ?」
「……………」
佐藤くんからすると、私はカルピスのイメージ?
お子ちゃま扱いですか‼︎失礼なっ!
そんな事をしていると、美希ちゃん達警護隊女子が戻って来た。
「お疲れ!どうだった。林。」
「みんなで囲って12階までエレベーターで連れてったわ。二人を下ろして、サッサと戻って来たけど、追って来ては無いと思う。」
美希ちゃんはソファーに座りながらニッコリと言う。
「ありがとう。これでみんな揃った?」
「あっ、柔道部の三人がまだ…なんかコンビニ寄って来るって。」
警護隊女子から声があがった。
「あ〜、彼奴らはイイや。じゃぁ、中断した招集会議、始めよっか。」
えっ?ここでやってたの?
ありがとうございます。