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逃げる事は悪く無い。

入れようかどうか迷いましたが、入れてしまいました。

「い〜い!何処にも寄らずに真っっっ直ぐ、家に帰るんだよ。」


「うん。分かってるよ、瑠美ちゃん。ゆうくんに見つからないようにでしょ。」


 結局、話の通じない人と絡むのは、時間の無駄と言う結論になり、私はサッサと帰らされることに。


「違う!生徒会メンバーと加賀 琴子!」


 ガシッと掴まれた肩に指が食い込んで痛いです。瑠美ちゃん。


「まぁ、人の目は多い方がいいから、主要道路で行けよ。横道に逸れたら、罠にハマるかもだからなぁ。」


「罠⁈」


 黒井くん!私はただの女子高生デス‼︎罠にハメてどうするんですかっ!


「売るに決まってるだろ。金になるかは分かんないけどぉ。いや、物々交換ならイケるか?」


 佐藤くん‼︎キミ本当に失礼だな!背が190あるからって、言っていい事と悪い事があるんですっ‼︎


 キッと睨むと、またもや頬っぺを摘んで来た!


 完全に遊ばれてるぞ!私‼︎


「大丈夫だってば。私と夕実でちゃんと電車に乗せるから。」


「そうそう。私は降りる駅も一緒だから、駐輪場まで付いて行くわ。」


 今日一緒に帰るのは、ナイスバディな二人組の井澤さんと、青木さん。私と並ぶと大人と子供…。


 同じ高2でこの発育の違い!DNAが関係しているのかっ?そうなのかっ?


 目の前にある4つのメロンを睨む私…解せん。


「頼むよ佐知、夕実。なんかあったら、直ぐに連絡して。」


 瑠美ちゃん、私のオカンですか?


「夕実、大丈夫だとは思うけど、気を付けてな。」


 おやおや?黒井くん名前呼びですか?


 私がキョトンとなっていると、佐藤くんが大きな体を屈めて、小声で教えてくれました。


「彼奴ら、中学から付き合ってんだ。」


 その言葉に大きく心臓が鳴った。


 ーー違う、私は付き合っていたフリだから、ただの女の子避けだからーー


 バクバクする胸をそっと手で抑えた。


「案外知ってる奴多いと思ってたんだけど…。」


 佐藤くんはそう言うと私の頭をポンポンと叩いた。


「山田は背も小さいけど、視野も狭いのなぁ。」


「……佐藤くん、ヤル気なら受けて立ちますよ!」


 全力で睨みを利かせました。負けません!






 学校を出て、3人でたわいもない話をしながら駅に向かう。


 そう言えば、こんな風に伊澤さんや青木さんと話すの初めてだ。ほら、私と大分属性が違うでしょ。関わる事なかったんだよね。チョット怖い感じもあったしね。


「なんか楽しいねぇ。」


 私がボソッと漏らした言葉を、伊澤さんが拾った。


「何言ってんの、佳奈恵ちゃんの警護でクラス中バタバタなんだよ。」


「…でもみんな楽しそうだし。」


「だね〜。」


 青木さんが私の頭をワシャワシャと撫でた。


 短いからいいけど。


「まぁ、確かに楽しそうだよね。佳奈恵ちゃんで団結した感じだし、学園祭の予行練習って感じ。」


 伊澤さん!私もそう思います。


「佐藤なんて佳奈恵ちゃん構い倒してるよねェ」


 青木さんがニヤリと笑う。何故?


「う〜ん、今までの鬱憤を晴らす?みたいなものかな。自分が余分にデカイから、佳奈恵ちゃんのようなチマチマした生き物が、やたら目に付くみたい。気になって仕方ないって言ってた。」


 チマチマだと⁈佐藤くん!失礼にも程があるぞっ!


「まだ、恋愛未満、友達以上って感じかな。佐藤も自分で気が付いてないみたいだし。」


「はぁ?」


 伊澤さんの言葉にチョットびっくりで、足も止まる。


「周りは気が付いてるんだけど、あまりにも分が悪いからね。」


 青木さんがニッコリと笑った。


「相手が生徒会の副会長様じゃねぇ、太刀打ちできないよねェ。」


 ああっ、そう言う事か。少し、いたたまれなくなる。


「佐藤と比べるのも烏滸がましいって。」


 はははっと笑う青木さん。


「…違うよ。私と博武は、ただの幼馴染で、そう言う関係じゃ…」


「佳奈恵ちゃん。誰かを好きになるのに理屈や屁理屈はいらないの。自分の心の思うまま。分かるでしょ?相手の言葉やチョットした仕草で、心臓が嬉しくて高鳴って、悲しくて締め付けられるの。みんな同じ。ただのって言う関係は無いの。」


 そう言いながら、伊澤さんが私の背中をさすった。


「私だって、たけるの事ちゃんと分かって無いと思うよ。人の気持ちを縛るのは難しいから。何処かで妥協は必要なんだと思うの。でもね、恋愛に錯覚ってあると思う?私は無いって思うの。それすら恋愛だと思う。恋愛事に正解も不正解も無いって、聞いた事あるけど、本当だなって。」


 青木さんが言う妥協って、なんだろう。私にはそれすら分からない。


「私は、博武が優しく笑う顔が好きで、時々憎たらしい事も言う博武も好きで、幼馴染としてなのかどうなのか、分からなくて…博武の事が分からなくって、怖くて知りたく無くて…。」


「こればっかりは、場数を踏んだところで何とかなるものでも無いしね。他の人に簡単にアドバイスなんて、恐れ多いよ。でも、佳奈恵ちゃんは良いの。みんなが手を差し出したと言うことは、神様が今回は逃げなさいって言ってるんだよ。」


「そうだね、大人になればイヤでも逃げれないんだから、

 学生のうちは逃げちゃえ逃げちゃえ!」


 青木さんに促されて、歩き出す。


「私がしてる事はみんなに迷惑じゃ無い?」


「さっきも言ったけど、みんな楽しんでるよ。」


 伊澤さんがふふっと笑いを漏らした。


「私は、こんな後ろ向きな事して良いの?」


「だって、逃げるのは悪い事じゃ無いよ。今逃げる事によって、最悪から免れる事が出来るかもしれないでしょ?だから良いの!」


 青木さんが満面の笑みでサムズアップをしてきた。


「良いの良いの!ちょこまかと逃げちゃえ!」


 後ろの高い位置から低い声が聞こえた。


 3人が同時に振り返ると、ジャージ姿の佐藤くんがニッコリと笑っていた。…エッ?


「佐藤、何故いる?」


 伊澤さんが怪訝な表情になる。


 そうだよね、今、部活中だよねェ。


「いや〜、黒井がランニングがてら警護して来いと。女子だけじゃ心許ないからって。愛されてるねぇ、青木。」


「ふん!大方、佐藤が猛をタラし込んで了承をふんだくったんでしょう。」


 行こっと、青木さんに手を引かれ歩き出す。もう駅は目の前だ。


 改札口で佐藤くんと別れる時、脛に蹴りを入れてみた。小さいなりに、この攻撃は有効だと分かった。


 大きなガタイを縮こめ、痛さに耐える佐藤くんの姿を見て、チョットすっきりした。








ありがとうございました。

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