防衛体制は万全でした。
すぐ終わる話だったはずなのに⁈
もう少し、お付き合い下さい。
とうとうやって来ました、月曜日。
瑠美ちゃんに言われたように、ちゃんと6時30分前に駅の入り口におります。でも、肝心の瑠美ちゃんが遅刻です。なんでやねん!
手に持つ携帯には、今からダッシュ‼︎と送られて来ております。まぁ、すぐ来るでしょう。
そう言えば、アレだけ来ていたメールが、日曜日からパッタリと無くなりました。スゴイですねぇ…。
やはりみんな攻略されているんでしょうか?
でも、そう考えた方が、早そうです。
とにかく、接触は避けねば。私の心が可哀想です。
などと考え、携帯から顔を上げると、向こうの方から猛然とこちらに駆けてくる瑠美ちゃんを発見。
その頭にはツノが見えます!お顔が般若です!
逃げようと左右をみて(正面から瑠美ちゃん。後ろは駅改札口。)右側に身体を向けようとした時、両肩が強く掴まれ、近い位置に般若の瑠美ちゃんのお顔が!
「何?そのベリーショート‼︎直毛ロングヘアーは?どうしてそこまで⁈」
う゛ぅっ、肩イタイ…。
「おっ、おはよぉ…瑠美ちゃん。…似合わない?」
瑠美ちゃんはブンブンと頭を振った。
「似合うよ!長い方が見慣れてるから、チョット気付かないかもだけど…切っちゃって良かったの?ずっと伸ばしてたんでしょう?」
頭のツノが引っ込んだと思ったら、瑠美ちゃんの目がウルウルし出した。
「うん、でも髪なんて直ぐ伸びるし、それに一度したかったんだよねぇ、ショート。すっごく軽いんだね。シャンプー、めちゃラクだったよ。いやぁ〜良い事づくめ。」
そう言うと瑠美ちゃんは暫し空を見上げた。
「そう…だね。エコだね。」
そして私に向けた表情は優しいものだった。
お互い顔を見合わせ、ふふっと漏らすと駅の改札口の中に入って行った。
学校に着いて、瑠美ちゃんの所属するテニス部にそのまま引っ張られ、制服でランニングさせられ、コートの外で声を張り上げさせられた。教室に戻る頃には既に1日分の体力が消耗されていた。
コレが10日も続くのかぁ…雨が降っても、体育館で走り込むんだろうなぁ。私、名ばかりのイラスト部なんですが…。
元気な瑠美ちゃんに引きずられ、教室に着いたのは始まる5分前。
その後、先生方の言葉は私の頭上を駆け抜け、気が付けばお昼時間。
へっ?と思っている間に私の前と後ろを、同じクラスの男子、黒井くんと佐藤くんに挟まれていた。
「お昼は理解準備室で食べる事になってるから。それと、黒井と佐藤はこのクラスの中で1番背が高くてガタイがいいから、これから移動するときはこの2人にディフェンダーやってもらう。」
「よろしくな。山田。」
バスケ部次期部長と言われる黒井くんが、力任せに頭をグリグリしてくる。う゛っっ、無い身長が更に縮むぅ⁉︎
「なぁ〜〜んかよく分かんないけど、面白そうだから、よろしく。山田。」
同じくバスケ部の佐藤くんが、屈みこんでへラリと笑う。
「後、トイレの時は常に女子5名が付いて行く事になってるし、他からの面会は一切謝絶で先生もそこに入るから。一応門番は剣道部の後藤とか、柔道部の早川と栗田と相田。それと新聞部の沙樹。スゴイでしょう。」
クラスを巻き込んで何をやってるんですか?と、言うよりも、いつの間に話し合いが行われていたんですかっ?えっ?瑠美ちゃんドヤ顔⁈
「帰る時は、帰宅部の人が駅まで一緒に行く事になっているから、大丈夫よ。」
学園祭でも無いのに、なんなの?この結束力!
それを束ねる瑠美ちゃんは、魔王様ですか?
今更ながら、瑠美ちゃんの偉大さを認識致しました。
……でも、クラス違うよね。瑠美ちゃん。
そして、何事も無く過ぎた3日目の水曜日。新聞部の田中 沙樹ちゃんから知らされた情報は、とても不思議なものでした。
ありがとうございました。